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仏学者エマニュエル・トッドの予言「世界と日本はどうなる?」

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前回の記事、『週刊ダイヤモンド 地政学超入門』がなかなか面白かった で、トッドをご紹介したとき、NEWS23のインタビューのほうがより色んな話が聞けて面白かったと書いたんですが、そのとき「テキストにしとけばよかったかな」と思ったもので・・・文字起こししました。

以下、2016年2月1日に放送された内容の全文です。
(見出しや注釈はブログ主が勝手に書いています)

仏学者 E・トッドの “予言” 世界と日本はどうなる?

先進国の全ての社会は危機的状況

エマニュエル・トッド

現在、先進国の全ての社会、アメリカ、ヨーロッパ、日本は危機的状況にあります。

今の傾向として、「テロは中東から、先進国の外から来ているものだ」と考えられがちですが、第一に重要なことはテロの問題は先進国の内部からうまれていると理解することです。

もちろん「イスラム国」は危険ですし警戒するべきですが、むしろ先進国の社会がうまく機能していない。その国内の問題について、分析する必要があります。

シャルリー・エブドのデモには “嘘” がある

岸井成格アンカー

フランス人の多くが、表現の自由・言論の自由という理念の大切さを訴えて、我々はシャルリと一緒にあるということを言っているわけですよね。

エマニュエル・トッド

大規模なデモは、社会的に重要な出来事でしたが、嘘があります。

フランスの理念である「自由」「表現の自由」を守ると訴えていましたが、この事件でフランスの表現の自由は脅かされていません
「シャルリエブド」は非常に質の悪い小さな新聞で、「イスラム嫌い」の風刺画に特化した新聞にすぎないのです。
イスラム教がフランスでは少数派で、しかも社会的にも弱者であると分かっていながら風刺することは “表現の自由の権利” なのでしょうか。

あのデモには嘘の側面があり、“イスラム嫌い” の表れなのです。

先進国の不平等拡大「再階層化」

久保田智子キャスター

不平等というのが大きなひとつのテーマなんだと思うんですね。この不平等というのがどのくらい深刻になってきているのか。

エマニュエル・トッド

不平等の拡大は世界的な問題。先進国共通の問題です。
その原因は「教育の進展」の中にあります

フランス・日本・アメリカで識字率が上がり、人々に平等な初等教育が徹底されました。高等教育を受ける人はほとんどいませんでした。その後各国で、中等・高等教育が急激に広まり、人々は「再階層化」されました。
子供の成功は「教育のレベル」によって決まるようになった。つまり、「不平等」を前提に物事を考えるようになりました

今後20年のEUは分散・分解の歴史となる

久保田智子

今後ヨーロッパはどんなふうになっていくか分かんないですか?

エマニュエル・トッド

ここで私は再び真の預言者になります。
この予言は確信できます。

ヨーロッパの今後20年間は、EUの分散・分解の歴史になるでしょう。

ヨーロッパの歴史で最も暗い時代を思い起こさせる状態

岸井成格

お話を伺っててね、非常に衝撃的な予言なんですよね。ヨーロッパの動向って世界中が本当に今、気にかけているところだと思うんです。
確認しておきたいんですけど、この難民・テロ、それから経済的な格差の問題の中から、イスラム教とキリスト教社会っていう、いわゆる宗教戦争的な側面とか、あるいはハンチントン* 的に言うと、文明の衝突のようなところまでいくっていうことは、今までのお話聞いてるとそれは「ない」と見ていいんでしょうか。

*ハンチントン=アメリカの国際政治学者で『文明の衝突』の著者。
『文明の衝突』では、冷戦が終わった現代世界においては、文明と文明との衝突が対立の主要な軸であると述べた。特に文明と文明が接する断層線での紛争が激化しやすいと指摘。(ブログ主注釈)
エマニュエル・トッド

ヨーロッパは機能しなくなっているが、「ユーロ」は存在している。

私が恐れていることは、こうした状況で、「移民や難民の問題」「イスラムの問題」がヨーロッパの指導者によって利用されるということです。

フランスについて言えば、「移民とイスラム」の問題が本来あるべき政策の「代替物」として使われるのではないかということです。これはハンチントンの言う「文明の衝突」ではなく、西欧社会の麻痺状態です。
自らの政策の失敗に責任をとらない指導者の麻痺状態です。

彼ら(指導者)は本来の問題を直視せず、「イスラム教の問題」とすり替え、逃げているのです。それはもちろん「文明の衝突」ではありませんが、非常に非常に危険です。
このような現象は反ユダヤ主義が高まった時期に見られたものです。
ヨーロッパの歴史における最も暗い時代を思い起こさせます。

先進国が危機から脱する方法

岸井成格

国家が国家の機能を失いつつあって、リーダーが不在という印象が非常に強いんですけどね、その中でこれからの世界・時代のリーダーっていうのはどういうリーダーであるべきだと思われますか。

エマニュエル・トッド

そろそろ結論に入りますが、先進国が危機から脱する出口が見えない状況は、リーダーが凡庸というだけでなく、社会の中間層、中核をなす人々の、自分さえ良ければいいという “エゴイズム” 自己満足の強い “ナルシズム” から生まれています。そこに問題があるのです。

この状況を本当に打開するためには、今更のように聞こえるかもしれませんが「善き人生とはどういうものか」という根本的で倫理的な問題について考えるべきです。
そして各国が、あるべき姿を模索していかなければならないのです。

日本の問題

久保田智子

日本は今後どういうふうな道を進むべきで、現状何か打開する処方箋だとかヒントのようなものっていうのはあるでしょうか。

エマニュエル・トッド

日本の最高の長所は日本の問題点であると言えるでしょう。日本の問題は、完璧を求めることに固執しすぎることだと思います。

日本が出生率を上げるために女性のより自由な地位を認めるためには、不完璧さ、無秩序さを受け入れるということを学ぶべきです。
子供を持つこと、移民を受け入れること、移民の子供を受け入れることは、無秩序をもたらします。私が思うに、日本は最低限の無秩序を受け入れることを学ぶべきだと思います。
馬鹿なことを言っているかもしれませんが。

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