宮家邦彦氏が説明「高校生でも分かる新安保法制」 | 政治備忘録

宮家邦彦氏が説明「高校生でも分かる新安保法制」

Share

20150716 衆院本会議で安全保障関連法案が与党などの賛成多数で可決。拍手する安倍晋三首相と閣僚ら 産経

宮家邦彦氏なら、朝鮮戦争どころかベトナム戦争すら知らない高校生に「安保法制がなぜ今必要か」をどう説明するか が書かれている。

まず、前提の説明から。

各国の安保法制は通常「ネガリスト」、すなわち「やってはいけないことを列挙し、それ以外は適宜やるべし」という構造になっている。ところが、日本では「ポジリスト」、つまり「やれることだけ列挙し、それ以外は禁止する」作りだ。よりシームレスにしようとすればこの「ポジリスト」を一層拡大する必要がある

国会答弁が難しくなるのも当然なのだが、これでは高校生は理解できない。お父さんが娘に分かりやすく説明するにはどうするのか。

例えば、法案の必要性に関する筆者の説明はこうだ。冷戦時代の安定期は終わり、過去20年間に東アジアの国際情勢は激変した。1945年以来日本は初めて物理的圧力すら感じ始めた。戦争を起こさせないためには抑止力の強化がどうしても必要だ、云々(うんぬん)。

「日曜討論」ならこれでよい。だが、この説明は高校生には分からない。彼らは朝鮮戦争どころかベトナム戦争すら知らないのだ。筆者なら高校生の娘にこう説明する。

安保法制は、なぜ今必要か

ある日突然誰かが君に嫌がらせを始めるとしよう。君には身に覚えのない話だが、相手はストーカーまがい。当然お父さんが、場合によってはお巡りさんが、物理的力を使ってでも君を守る。君に手を出すことが損だと相手に理解させる必要があるからだ。では、なぜ今かって?

それは君が傷付いてからではもう手遅れだからだ。国際関係も同じ。悲しいことだが、世界には今も抑止が困難な悪意が存在する。その悪意からの攻撃を回避するには一定の備えと実力が不可欠。今までは空想的平和主義でも良かったが、これからはより現実的な平和主義が必要だ。

集団的自衛権の是非

次は集団的自衛権限定行使の是非に関する筆者の説明である。
集団的自衛権は国連憲章上加盟国の権利であり、日本国憲法の枠内でも最小限の行使は可能だ。同盟国をも守る意思を示すことで同盟の絆が強まり、抑止力も高まる、云々。
これに対し、高校生の娘への説明はこうだ。

もしあのストーカーが君だけでなく、君の親友にも嫌がらせを始めたらどうする? お父さんなら可能な限り彼女も守ろうとするだろう。相手は親友の次に君の所にやって来る可能性が高いからだ。

違憲論争に対して

新安保法制議論をややこしくしているのが違憲論争である。政府与党は最高裁のいわゆる砂川判決を根拠に新法制は合憲と主張するのだが、これも高校生には分からない。ではどう説明すべきか。

学校で勉強したと思うけれど、日本は三権分立の民主国家だ。立法府が作る法律を行政府は執行するが、それが憲法や法律に反するか否かの最終判断は最高裁の仕事だ。例えば、米国最高裁は最近同性婚を合憲と判断した。でも、この判断は従来の男女婚という論理の延長上にはない。民主国家でこんな判断変更が認められるのは最高裁だけ。憲法学者や官僚にすぎない内閣法制局長官にそんな権限はないのだ。

自衛隊のリスクが高まるという議論

国会では自衛隊員のリスクが高まるとの議論もあった。
自衛隊はリスクを取るプロフェッショナルであり、そのために必要な訓練を行い、装備と情報を持って仕事をする専門集団だが、筆者なら高校生の娘にこう説明するだろう。

巨大火災が発生したら、消防隊員に「これまでより危険だから、出動するな」と言うか。逆だろう? 火事が拡大した今こそ消火が必要であり、そのためプロは日頃から実力を養っておくべきではないのか。

出典:産経【宮家邦彦のWorld Watch】 2015.7.23


安保法制は複雑で簡単に説明・理解できるものではない部分もあるが、こうして読んでみると、その周辺の議論・・・例えば違憲論争や、自衛隊のリスクを繰り返し取り上げる議員の質問、また、そればかりを取り上げるマスコミの報道がいかに意味のないことかが分かる。

特に、自衛隊の家族に対し「リスクが高まるがどう思うか?」というような質問を繰り返し報道するのは、非常に悪質ではないだろうか。


参考以下の記事も安保法制について説明したものです。

【安保法制】新法制で何が変わるのか?「切れ目のない安全保障」とは? わかりやすく解説
新法制で「 切れ目をどうふさぐのか 」「 何がどう変わるのか 」について、わかりやすく解説します。
Other Entry

Share

Follow

宮家邦彦氏が説明「高校生でも分かる新安保法制」
この記事をお届けした「政治備忘録」の最新情報を、いいね してチェックしてね!
トップへ戻る