【安倍首相】キューバ訪問まとめ 地元紙インタビュー記事、内外記者会見<全文>等
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アメリカ訪問を終えた安倍晋三首相は22日午後(日本時間23日午前)、政府専用機で米ニューヨークからキューバの首都ハバナを訪問しました。
キューバ訪問2日間の流れ、地元紙によるインタビュー記事、安倍首相の内外記者会見、書簡の内容などをまとめています。
キューバ訪問行程
平成28年9月22日(現地時間)
フィデル・ カストロ前キューバ国家評議会議長との会談
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日系人との懇談
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ホセ・マルティ像献花式典
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歓迎式典
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日キューバ首脳会談
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無償資金協力署名式
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ラウル・カストロ国家評議会議長主催夕食会
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平成28年9月23日(現地時間)
内外記者会見
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日系人慰霊堂献花
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ハバナ旧市街視察
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グランマ紙(キューバ)安倍総理大臣インタビュー
「日本は,キューバの経済及び社会発展のために尽力していく」
(2016年9月22日付)
日本とキューバの400年以上に及ぶ交流で,これまで日本の総理がキューバを訪問したことはなかった。
両国の友好関係の象徴でもある支倉常長のキューバ訪問から4世紀以上を経て,日本の安倍総理は,ハバナを訪問し日・キューバ関係の新たな一章を開くという両国政府の意思を確かなものにする。安倍総理のキューバ滞在は,日玖関係にとって間違いなく歴史的な出来事であり,また,経済及び貿易関係を強く後押しするものである。
2006年から短期間ながら総理を務めた安倍晋三自民党総裁は,2012年12月に日の出ずる処の国の政府の手綱を手にした。2014年には再選され,現在3期目を務めている。
ニューヨークの国連総会に出席した安倍総理は,特にキューバとカリブ地域の現状における日・キューバ関係への期待と潜在性について,グランマ紙の記者に話してくれた。
(問)
日本の総理によるキューバ初訪問の意義は何か。
(安倍総理大臣)
日本とキューバには,1614年の慶長遣欧使節団に遡る400年以上の交流の歴史があります。美しい海に囲まれ,音楽,革命の歴史,世界遺産の街並みを有するキューバは日本国民を魅了し続けており,昨年の日本人訪問者数は前年比8割増で1万人を突破するなど,両国の関係はますます盛んになっています。
ラウル・カストロ議長のお招きを受け,日本の現職総理として初めてキューバを訪問できることを大変喜ばしく思います。今回の訪問において,カストロ議長と共に,両国の将来を語り合い,両国の交流の歴史を再び活性化したい,そう期待しています。
キューバ訪問中は,貿易及び投資の促進,開発協力のさらなる充実,観光交流の強化,学術交流の促進,さらにはスポーツ交流といった幅広い事項につき,率直な対話を実現したいと思います。日本として,キューバの経済社会発展に尽力していくことを,カストロ議長にお伝えする考えです。
また,非同盟諸国に大きな影響を持つキューバと,国連安保理改革,核軍縮,アジア情勢等国際社会における諸課題についても意見交換を行いたいと思います。
今回の訪問により,両国の友好親善にとって,新たなページを開く機会にしたいと心から期待しています。
(問)
日本とキューバの関係の現状評価及び今後,特に今次ご訪問後の展望は何か。
(安倍総理大臣)
私は,経済,学術,文化,スポーツといった幅広い分野において両国の関係を進展させていきたいと考えています。
経済面において,1970年から85年までは,日本はキューバの第二の貿易相手国でした。その面影は,現在でもキューバ市民に大切に使われている「日野」や「コマツ」の製品などに見ることが出来ます。
その後,両国の経済関係は低迷の時期が続きましたが,先日,両国がキューバの債務救済措置に合意したことを契機に,経済関係拡大の期待が高まっています。日本企業の関心も高く,本年,複数の経済ミッションがキューバを訪問しています。
このような中,本年11月には,東京で経済関係強化のための官民合同会議を開催し,また,ハバナ国際見本市において過去最大級の独立した日本館を出展します。
経済社会構造の現代化を推進するキューバにとって,日本企業は信頼できるパートナーとして大きく貢献できる,私はそう確信しており,官民を挙げてキューバと協力する考えです。また,ビジネス環境の整備等,両国が共に発展していくための経済関係の礎の整備を支援したいと考えます。
キューバは医療制度が充実し,1人あたりの医師数が多く,予防医療に取組むなど,日本にとっても学ぶところが多くあります。今後,医療機材の供与や技術協力等により,医療協力を拡大するなど,開発協力を新たな段階に進めていきたいと考えます。
文化面での交流も盛んです。キューバでは日本のアニメや「おしん」が人気と聞いておりますが,最近の日本をより身近に感じていただくべく,ファッションや食等の分野で明るく頑張る日本の女性の生き方を描いたテレビドラマ(「カーネーション」,「ごちそうさん」)を提供したいと考えます。
スポーツ分野での協力も忘れてはなりません。先日のリオデジャネイロ・オリンピックでは,ボクシング,レスリング,柔道をはじめ多くの種目でキューバ選手が活躍していたことは記憶に新しいですが,いよいよ,2020年の次期オリンピックは東京で開催されます。東京オリンピックにおいて両国選手の活躍を期待しています。特に再び公式種目となる野球では,ぜひキューバ代表と日本代表が決勝で対戦するのを見たいと思います。
出典:外務省
フィデル・カストロ前国家評議会議長との会談
9月22日(木曜日)午後3時(現地時間。日本時間23日午前4時)から約70分間、安倍総理大臣はハバナ市内のフィデル・カストロ前国家評議会議長邸宅において、同前議長と会談を行いました。
1 冒頭発言
冒頭,安倍総理から,フィデル・カストロ前議長にお会いするのは過去にNYでお会いして以来2度目である旨述べ,今次会談の実現について謝意を表明しました。また,先月90歳を迎えたフィデル・カストロ前議長に祝意を伝えました。
2 二国間関係
(1)安倍総理から,日本とキューバとの400年の長い友好の歴史の中で,1995年及び2003年のフィデル・カストロ前議長の訪日により,二国間関係は大きく進展した旨述べました。また,2003年の訪日の際に,フィデル・カストロ前議長が広島を訪問して被爆の実相に触れられて,「人類は,このような経験を,二度と繰り返してはいけない。」と記帳されたことは,日本国民に深い感銘を与え,国際社会への強いメッセージとなった旨改めて感謝の意を表明しました。さらに安倍総理は,フィデル・カストロ前議長の関心が高い,農業・食糧分野に加え,医療,教育などにおいてキューバを支援する旨伝えました。
(2)これに対し,フィデル・カストロ前議長は,今回の安倍総理による,日本の現職総理として初となるキューバ訪問に歓迎の意を表明し,日本には大変敬意を抱いている,日本が様々な分野で努力を重ね,世界に貢献していることに感銘を受けている旨述べました。
3 北朝鮮問題・核兵器廃絶
(1)安倍総理から,北朝鮮が核実験や弾道ミサイル発射を繰り返し強行していることは,国際社会の平和と安定に対する従来とは異なるレベルの脅威にある旨説明し,厳しく対応する必要がある旨を指摘しました。また,拉致問題についても早期解決に向けた理解と協力を求めました。
(2)フィデル・カストロ議長からは,核兵器の恐ろしさについて言及があり,キューバでも広島,長崎の悲劇が広く語られている,両国は核兵器のない世界を実現することにおいて一致している旨述べました。
出典:外務省
日・キューバ首脳会談
9月22日(木曜日)午後6時20分(現地時間。日本時間23日午前7時20分)から約45分間、及び同7時15分(現地時間。日本時間23日午前8時15分)から80分間、安倍総理大臣は国家評議会にてラウル・カストロ国家評議会議長と日・キューバ首脳会談を行いました。
なお、今回の安倍総理の訪問は日本の総理大臣による初めてのキューバ訪問となりました。
1 全体会合
(1)冒頭発言
ラウル・カストロ議長から,安倍総理のキューバ訪問を歓迎する,1970年代及び80年代,日本はキューバ第2の貿易相手国であり,当時の日本製品は今までも使われている,日本の高い技術力を評価する旨述べました。
安倍総理からは,日本の総理大臣として初めてキューバを訪問し,ラウル・カストロ議長にも初めてお会いすることができ大変嬉しい,今回の訪問を通じて,支倉常長の訪問以来400年続く友好の歴史に,ラウル・カストロ議長と手を携え新たなページを切り開いていきたい旨述べました。
(2)二国間関係
安倍総理は,非同盟運動諸国の雄として国際社会においても影響力を有するキューバとの幅広い分野での二国間及び国際場裡での更なる関係強化と協力を加速するため,今後機会を捉えて外相間で協議させたい旨述べました。
安倍総理は,日本企業はキューバの発展に強い関心を有しており,キューバの経済社会モデルの現代化の信頼できるパートナーになると確信する,両国政府で更なる経済関係の進展を後押しすべきである旨述べました。さらに,安倍総理は,対キューバ海外投資保険の引受を一部再開,11月の第2回官民合同会議の開催及び同会議の政務レベルへの格上げ,「質の高いインフラ投資」への理解促進と日本のインフラ関連企業のキューバ進出を支援するための来年2月の官民インフラ会議の開催を発表するとともに,投資環境整備に向けたラウル・カストロ議長のリーダーシップに期待する旨述べました。
(3)経済協力
安倍総理は,対キューバ債務救済措置の文書署名を歓迎し,着実な返済に向けてラウル・カストロ議長の協力を得たい旨述べました。無償資金協力(医療機材供与)の交換公文の署名に至り喜ばしい,「キューバ・日本医療センター」設立に向けた調査の開始を歓迎し,医療分野で両国の技術の融合を図っていきたい,更なる無償資金協力の実施を通じて,キューバの国際収支改善にも貢献したい旨述べました。また,安倍総理は,医療,食糧,エネルギー,交通等の分野でキューバの発展に貢献し,本格的な経済協力を推進していくため,JICAの事務所を開設することを表明しました。
(4)人的交流
安倍総理は,昨年キューバを訪問した日本人渡航者が1万人を突破したことは喜ばしいと述べ,国民間の交流の強化,キューバの発展を担う人材育成の観点から,今後3年間に100人を超える若いキューバ人を招へいすることを表明しました。また,両国で人気を博す野球の講師派遣,体操選手及びコーチ等の招へい,ハバナ大学と日本の大学との間で協力協定,日本の放送コンテンツの提供を通じ,両国国民の相互理解を深めたい旨述べました。
2 少人数会合
アジア情勢について,安倍総理から日本の立場について説明し,カストロ議長の理解と協力を求めました。
その他,安保理改革等,国際場裡における協力について議論が行われました。
出典:外務省
書簡「キューバに対する無償資金協力」
「主要病院における医療サービス向上のための医療機材整備計画」に関する書簡の交換
- 本23日(現地時間22日),キューバの首都ハバナにおいて,安倍晋三内閣総理大臣及び先方ラウル・カストロ・ルス国家評議会議長(H.E.Mr. Raúl Castro Ruz, President of the Council of State of the Republic of Cuba)による立ち会いの下,我が方渡邉優駐キューバ大使と先方ロドリゴ・マルミエルカ・ディアス外国貿易・外国投資大臣(H.E.Mr. Rodrigo Malmierca Díaz, Minister of Foreign Trade and Foreign Investment of the Republic of Cuba)との間で,12億7,300万円を供与限度額とする無償資金協力「主要病院における医療サービス向上のための医療機材整備計画」に関する書簡の交換が行われました。
- この計画は,キューバの主要病院において,がん診療に必要な医療機材を供与し,同国におけるがんの診断及び低侵襲治療の強化を通じた保健医療サービスの質の向上を図るものです。
- キューバの生涯がん罹患リスク等は,中南米地域の平均よりも高い水準にあり,がんは2007年以降,同国の死亡原因の第1位となっています。これに対し,キューバ政府は「国家がん対策戦略」を2013年に策定し,増加するがん患者に対する迅速かつ的確な医療サービスの提供を目指して取り組んでいます。しかし,同国は,外貨不足による財政難の影響で,医療機材の恒常的な不足や老朽化といった課題を抱えています。
- この計画により,キューバの主要病院を対象に,医用画像診断に必要な機材,病理検査機材,身体に負担の少ない治療に必要な機材を整備することで,キューバ全土のがん診療サービスの強化が図られ,もって持続可能な社会・経済開発に寄与することが期待されます。
(参考)キューバ共和国基礎データ
キューバは,面積約11万平方キロメートル(本州の約半分),人口約1,126万人(2014年,世界銀行),1人当たり国民総生産(GDP)6,920米ドル(2014年,国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会)。
出典:外務省
内外記者会見<全文>
安倍総理冒頭発言
大きな獲物をじっと待つ一人の老人が、カリブの海で繰り広げる、あの壮大なドラマを思い浮かべながら、今回、日本の総理大臣として初めて、ここキューバを訪れました。文豪アーネスト・ヘミングウェイが愛した、美しい海に惹かれ、キューバには今、年間一万人を超える観光客が日本から訪れます。そして、この地では、現在も1500人近い日系人の皆さんが活躍しておられます。昨日、お目にかかる機会を得ました。
ホセ・マルティ。「キューバ建国独立の父」の名を冠した、白ユリの花を、キューバの大地に根付かせたのは、85年前、日本から移り住んだ、一人の若者でありました。今もキューバの人々に愛される、この花が象徴するように、日系人の皆さんは、一世紀以上にわたり、持ち前の勤勉さで、幾多の困難も乗り越え、この地で深い信頼を勝ち得てこられました。まさに、日本とキューバの「架け橋」であります。改めて、心から敬意を表したいと思います。
今回、ラウル・カストロ国家評議会議長と会談を行い、経済協力を本格化することで、合意いたしました。キューバの旺盛な成長需要に対し、医療分野を始め日本の質の高いインフラを提供する。官民が一体となって、キューバへの投資を拡大していきます。
キューバは、非同盟諸国に大きな影響力を持つ国でもあります。今後、国際社会の諸課題にも、協力して取り組んでいくことでも、一致いたしました。400年に及ぶ日本とキューバの友好の歴史に、新たなページを開く。そうした訪問になったと考えています。
フィデル・カストロ前議長に、前回、日本にお越しいただいたのは、13年前のことであります。その際、被爆地・広島に足を運んでいただきました。「人類は、このような経験を、二度と繰り返してはいけない。」。あの時の、前議長の言葉は、今も、私たち日本人の胸に深く刻まれています。
4か月前、オバマ大統領も、米国大統領として初めて、広島を訪れました。71年前、原子爆弾がもたらした悲劇、被爆の実相に触れることは、「核兵器のない世界」への大きな力になると信じます。
日本は、唯一の戦争被爆国として、「核兵器のない世界」を目指し、キューバを始め、国際社会と連携して、努力を重ねていく決意であります。
そうした国際社会の願いを踏みにじり、今月、北朝鮮が核実験を強行しました。断じて容認できません。弾道ミサイルの発射を繰り返しており、今までとは異なるレベルの脅威となっています。
この新たな段階の脅威、北朝鮮による明確な挑発に対して、国際社会は一致団結して、これまでにない、断固たる対応をとらなければならない。私は、国連総会の場でそのことを強く訴えました。同時に、拉致問題の即時解決に向けた国際社会の協力を強く訴えました。
既に、日米韓の3か国が連携をして、国際社会への働きかけを強めています。ニューヨークでは、アメリカのオバマ大統領、イギリスのメイ首相と、新たな安保理決議の採択を目指し、緊密に連携していくとの強い意思を確認しました。G7もまた、動いています。日本は、議長国として、リーダーシップを発揮する考えです。
中国の李克強総理とも、北朝鮮問題に対し、日中で連携して対応していくことで一致しました。ロシアとも外相会談を行い、連携を確認しました。関係国との協力も、一層強化していきます。
国連の安全保障理事会が、この深刻な脅威に対して実効的な措置をとることができるか、世界の平和と安定のため、その役割と責任を果たすことができるかが、今、問われています。非常任理事国として、日本は、安保理の対応を、全力でリードしていく決意であります。
シリア情勢、地域紛争、難民の問題、更には、気候変動や持続可能な開発。国連が立ち向かうべき課題は、山積しています。創立から70年以上を経て、国連に対する期待は、ますます高まっています。加盟国も51から193へと拡大しました。
そうした時代にあって、国連の改革は、待ったなし。とりわけ、安保理改革が、急務であります。54もの国々を擁するアフリカには、一つとして常任理事国がありません。70年前の国際情勢をそのまま残したに過ぎない、安全保障理事会の現在の構成を見直し、世界の様々な課題に立ち向かうため、その機能を強化していくことが必要です。日本は、世界第3位の経済大国として、また、アジア太平洋地域の平和と繁栄に大きな責任を有する国として、その役割を果たす決意であります。
異常気象による災害と闘っている太平洋の島嶼国との首脳会談では、気候変動問題への日本のリーダーシップに大きな期待が寄せられました。パリ協定を早期に批准し、その責任をしっかりと果たしていく考えです。
来週から、いよいよ臨時国会が始まります。今回、世界の経済・文化の中心であるニューヨークで、日本の和食や観光の魅力をアピールしました。「女性が輝く社会」に向けた我が国の強い決意も発信しました。日本には、まだまだ大きな可能性がある。そのことを、改めて実感しました。
世界を代表する投資家や経営者の皆さんに、直接、進化を遂げるアベノミクスについて説明する機会も得ました。日本が構造改革を断行する。そのことへの大きな期待を感じました。
英国のEU離脱、失速する新興国経済。世界経済が様々なリスクに直面する中、補正予算、TPPなどあらゆる政策を総動員して、アベノミクスを一層加速し、デフレからの脱出速度を最大限まで引き上げていく。臨時国会は、「アベノミクス加速国会」であります。これからも、経済最優先。全力で取り組みたいと思います。
質疑応答
(NHK 原記者)
北朝鮮情勢について伺います。総理は、国連安保理の議論を先導していく考えを今も強調されましたが、北朝鮮は従来の国連安保理決議を一顧だにせずミサイル、核開発を推進しています。北朝鮮の態度を変えるためには、具体的にどのような対応が必要だとお考えでしょうか。また、中国の積極的な協力が得られる見通しは立っているのでしょうか。あわせて北朝鮮との対話を今後検討していく余地はないのでしょうか。
(安倍総理)
北朝鮮の今回の核実験は、新たな段階の脅威であります。これに対する対応も、全く異なるものでなければならないと考えています。
北朝鮮に対しては、このまま核・ミサイルの開発を続けていけば、北朝鮮はますます国際社会から孤立をし、その将来を切り開いていくことができない、そのことを判らせなければなりません。北朝鮮への人、モノ、資金の流れを厳しく規制する安保理決議、そして我が国独自の措置を断固としてとっていく必要があります。
中国の役割は非常に重要であります。まさにこの新しい制裁を実行あらしめるために鍵となる、と言ってもいいと思います。
国連総会の機会に、私から直接、李克強総理に対し、北朝鮮問題に関する連携を強く求めました。引き続き、中国に対して、積極的な役割を果たすよう様々なレベルで働きかけていく考えであります。
北朝鮮とは、対話のための対話では意味がないわけでありまして、北朝鮮が真剣に対話に応じるよう、厳しい圧力をかけていく必要があります。「対話と圧力」、「行動対行動」の原則の下、臨んでいく考えであります。
(キューバラジオ・テレビ協会 アカンダ氏)
おはようございます総理。フリオ・アカンダと申します。キューバラジオ・テレビ協会の記者です。今現在、両国間、つまり日本とキューバの間では、たとえばハイレベルな政治対話、貿易関係、協力関係、文化関係、政治関係についてなど良好な環境が醸成されています。最近は、多数の例がありますが、両国間ではどのような新たな分野及び要素で更に関係を深化させることができるとお考えでしょうか。
(安倍総理)
私は日本の総理大臣として初めて妻とともに、この美しいキューバを訪問することできて大変嬉しく思っています。この訪問を契機として、日本とキューバの関係を力強く発展させていきたい。そう考えています。
キューバが経済や社会の現代化を進め、そして米国との関係を改善していく中で、世界中が今キューバに注目をしています。日本は官民を挙げてキューバの発展に貢献していきます。医療、農業そして教育などから始まり、本格的な経済協力の推進のため、JICAの事務所を開設することといたしました。
日本企業はキューバの発展にとって信頼できるパートナーとなります。キューバの投資環境の改善と相まって、ラウル議長と手を携えて、日本企業の進出、そして新しい投資を促進していきたいと考えています。
両国の関係は、経済分野だけにはとどまりません。観光分野では、近年、日本人渡航者が急増し、本年は、2万人に迫る勢いとなりました。今回、私の貴国訪問が日本に広く報道されれば、さらに国民の関心も高まり、多くの日本人がこの美しいキューバを訪れることになると、私はそう確信しています。
人的交流分野では、日本の早稲田大学及び東京外国語大学とキューバのハバナ大学の間で協力協定が署名されました。これは、今後の留学生や教員の交流の基盤となるものであり、大変喜ばしく思っております。
スポーツ分野においては、両国とも野球が国民的なスポーツとして大変な人気があります。2020年の東京オリンピックでは、野球が再び公式種目として採用されます。是非キューバ代表と日本の代表が決勝戦で金メダルを争うことになることを期待したいと思っています。日本でもプロ野球選手として巨人のメンドーサ選手や千葉ロッテマリーンズのデスパイネ選手が活躍をしていることは日本人の多くが知っています。
こうした様々な分野での協力を再び拡大をしていこう、昨日もラウル・カストロ議長と、お話をいたしました。二人でしっかりと手をあわせて様々な分野で日本とキューバの関係を発展させていきたいと思います。
(朝日新聞 石松記者)
帰国直後に始まる臨時国会についてお尋ねします。先ほど総理もアベノミクス加速国会と位置付けられていましたが、TPPに関して、ニューヨークで会談されたヒラリー・クリントン氏を始め、米国内でTPP反対論が強まっています。国の内外でTPPの理解を広め、最終的にTPP発効に至るまでにどのような働きかけを総理として考えているのでしょうか。
臨時国会では、憲法改正を本格的に議論させるということをかつてから総理はおっしゃっていますが、自民党内の憲法改正を担当する幹部を入れ替えた狙いと、蓮舫新代表が民進党の代表に就かれましたが、新たに民進党に対しどのように協議入りを呼びかけていくのでしょうか。(安倍総理)
TPPによって、「世界の4割経済圏」が生まれます。21世紀のルールによる自由で公正な経済圏であります。このTPPによって、技術のある、例えば中小企業、そして農家にとっても大きなチャンスになります。中小企業にとっては、しっかりとしたルールによって守られますから、自分の技術が盗まれてしまうのではないか、あるいは中小企業ですから、新たな例えば税制等、様々な法令の変化によって損害を被るのではないか、という心配がこれまでずっとありましたが、中小企業がまさにこの新たなルールによってしっかりと守られている中において、自分の強みを生かして海外に飛躍していくことが、中小企業、小規模事業者にも可能になったと言ってもいいのだろうと思います。そして、日本の農家は今まで真面目にコツコツと美味しくて安全なものを作ってきました。そうした付加価値が評価される市場が開かれることになります。
「自由化は、大企業や富裕層のみを豊かにする」、こうした誤解があります。そうした誤解を我々はしっかりと解いていく。そしてそれは国際的な規模において解いていく必要があります。グローバル経済は、一部の強者と多数の弱者をつくっていく、そういうことにはならないんだということを、しっかりとした対策を打っていけば、そうしたことにはならないんだということを説明していく必要はあると思います。
東アジアサミットの際にオーストラリアのターンブル首相やニュージーランドの首相ともお話をしました。また、マレーシアの首相、あるいはシンガポールのリー首相としっかりと我々がTPPの批准を進めていこうということについて一致をしたところでありますが、国際競争に立ち向かうための対策を示しながら、またそうしたことを丁寧に説明しながら、若い人たちが、そしてたくさんの人たちが未来に希望を見出していくことができるんだ、そういう理解を得ていきたい、ともに未来を切り拓いていきたいと考えています。
そして昨年11月に、全12か国の首脳がTPPの早期発効を目指すことを確認しました。オバマ大統領は、本年中の議会通過に向けて尽力しています。また一昨日ニューヨークで会談したバイデン副大統領ともTPPの早期発効に向け、日米双方が努力を続けていくことで一致しました。日本の国会の承認が得られれば、TPPの早期発効の弾みとなりますし、臨時国会でTPPの承認が得られ、関連法案が成立するよう、全力で取り組んでいきたいと考えています。
また、民進党は新しい執行部が発足しました。「対案を出していく」ということを蓮舫代表も述べられておられる。ただ反対するのではなくて、対案を示しながら、議論を深めていく、それが建設的な議論に繋がっていくことを期待しています。
憲法について党と相談しながら新しい体制ができたところでありますが、憲法改正は自民党の党是であります。他方、憲法改正は国会が発議をし、最終的には国民投票で決まります。まさに国民が決めます。それが一般の法律とは違い、一般の法律であれば衆議院・参議院でそれぞれ可決されれば成立しますが、憲法の場合は、まさに国会が発議をし、決めるのは国民の皆様です。その意味において国民的な議論を深めて行く必要があるだろうと思います。それぞれの自民党の担当者の皆さんにはその努力を深めてもらいたいと期待しています。そのために必要な体制にしていきたいと考えております。
(グランマ紙 イラムシー記者)
米国のキューバに対する経済封鎖は日キューバ関係にどのような影響があるでしょうか。
(安倍総理)
日本とキューバとの経済関係は、かつては債務問題により自ずと制約に直面していた時期もありました。今回の債務軽減措置によって、そのような時代は終わりを告げることになります。
キューバには、交通やエネルギー分野を始め膨大なインフラ需要が存在しています。教育水準が高い、そして、治安も良好です。北米とヨーロッパを繋ぐハブとなり得る位置にあります。このように、キューバは、日本にとって非常に魅力的な投資先でもあります。
米国の対キューバ経済制裁が緩和されるとともに、キューバ側による投資環境の整備の努力と相まって、日本企業との貿易や投資もますます促進されていくと期待しています。
動画リンク
http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg14225.html
出典:首相官邸
まとめ(評価)
(1)日本の総理大臣として初のキューバ訪問
日本の総理大臣として初のキューバ訪問であり,ラウル・カストロ国家評議会議長との初の首脳会談を行い,400年以上に及ぶ両国の友好の歴史に新たなページを開く訪問となりました。
首脳会談では,外相間での協議等を通じ,幅広い分野での更なる関係強化や二国間・国際場裡における協力を加速化し,様々な分野でパートナーシップを強化していくことを確認しました。
(2)経済関係の強化
昨年の米国とキューバの外交関係の再開を受けて,日本の民間企業によるキューバ市場に対する注目が高まっています。キューバ政府は経済社会モデルの現代化において外資導入を推進しており,また,日本からの投資にも期待が高まっています。
今次首脳会談では,キューバの発展に向けて日本の投資が重要な役割を果たすとの見解で一致しました。投資を含む経済関係の強化に向け,両国の官民をあげた取組みが進められます。
(3)経済協力の本格化
キューバには交通やエネルギー分野をはじめ膨大なインフラ需要が存在することから,経済協力を本格的に推進していくため,JICA別ウィンドウで開く事務所を開設することとしました。
(4)非同盟運動諸国の雄として存在感を示し続けるキューバとの関係強化
全世界で100か国以上が参加する非同盟運動諸国の中で,途上国のリーダー的存在として,その立場を代弁して存在感を示すキューバと首脳レベルの信頼関係を構築し,国際社会の諸課題についての日本の貢献や立場をカストロ議長に直接伝えることができました。
出典:外務省