【中国国防白書】「海上での軍事闘争への準備」中国の軍事戦略、大きな変更点など
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中国政府は26日、「中国の軍事戦略」と題した国防白書を公表した。中国による国防白書の公表は2年ぶり。
大きな変更点
「海上での軍事闘争」に重点的に備える方針を表明
周辺の安全保障情勢について、日米や東南アジア諸国が中国と対抗する動きを強めているとし、「外部からの阻害と挑戦が次第に増えている」と主張。今後は「海上での軍事闘争」に重点的に備える方針を表明した。
海軍=近海型から遠海型へ、空軍=領空防護型から攻防兼務型へ
中国の海軍を近海型から遠海型へ、空軍を領空防護型から攻防兼務型へ変更する必要性も指摘した。中国軍は今後、作戦範囲を広げ、先制攻撃することもありうることを示した形だ。
中国の仮想敵を明記
中国の国家安全にとっての「外部からの阻害と挑戦」として、「日本の安保政策の転換」と「地域外の国の南シナ海への介入」を明記した。
地域外の国とは明らかに米国を指している。中国政府の公式文書で中国人民解放軍の仮想敵を具体的に示すことは珍しい。自衛隊や米軍との東シナ海などでの軍事衝突に備え、中国が準備を進めていることがうかがえる。
自国への評価
全般的な国際環境を中国に「有利」と評価しながらも、中国の存立と発展にかかわる「多元的、複雑な脅威」の存在を指摘した。
防護すべき「中国の国益」について
「国家統一」や「領土保全」などに加え、「海外のエネルギー資源」「戦略交通路の安全」などを挙げ、シーレーン(海上輸送路)を含む海外権益の防護に強い関与姿勢を示した。
米国に関して
「南シナ海問題に積極的に介入し、中国に対して高い頻度で海上、空中での接近偵察を続けている」と、名指しを避けながら批判した。
ロシア軍との関係
ロシア軍との提携強化の必要性に言及した。中露両軍は「全面的・多元的・持続可能な制度的枠組みを徐々に構築し、より広い分野、より深いレベルでの発展を推進する」としている。
領域別
伝統的な陸戦重視の姿勢を離れて、「海洋、宇宙空間、サイバー空間、核」の4領域を特に取り上げて、分野別に中国の状況を説明した。
南シナ海
中国など6カ国・地域が領有権を主張する南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島では、中国の支配下にある岩礁で人工島の建設が進展。これを懸念する米国が周辺での偵察活動を活発化させ、中国がいらだちを強めている。
こうした状況を念頭に、白書は中国軍が戦争を抑止するための威嚇能力と実戦能力をともに向上させると表明。中国軍が有事即応力を常に維持するほか、戦争行為にまでは至らない準軍事行動の準備にも取り組む方針を打ち出した。
中国の軍事専門家は
「この白書は、中露が連携して日米同盟と対抗する新冷戦時代の到来を意識したものだ」と指摘している。
脱「韜光養晦」
白書は、習近平国家主席が唱える「軍事闘争の準備」を強く打ち出し、南シナ海での紛争などを念頭に「海上軍事闘争への準備」を初めて明記した。
1978年に鄧小平主導の改革開放が始まって以降、中国は経済発展に専念するため外国との軍事的対立をなるべく避け、外交交渉で解決をはかる「韜光養晦(とうこうようかい、能力を隠して実力を蓄える)」戦略を実施してきた。
しかし近年は海洋権益の拡大を求めて外洋への拡張を推進するようになり、軍事力をバックに領土問題などで強硬姿勢を示す場面も急増した。今回の国防白書は、脱「韜光養晦」の姿勢をさらにはっきりさせた。
アメリカの反応
アメリカ国務省 ラスキ報道部長記者会見(26日)
「中国には軍事力とその目的について、より透明性を持って公表するよう求めていく」と述べ、中国に対し、地域の平和と安定のため、みずからの軍事力の透明性を確保するよう求めてけん制。
南シナ海の南沙(スプラトリー)諸島で、中国が浅瀬の埋め立てを急速に拡大させていることについて、「中国は地域の緊張を高めている。埋め立てによって、現状を変更することはできない」と強調した。
南シナ海を巡り、アメリカは南沙諸島の周辺にアメリカ軍の最新鋭の艦船や哨戒機を派遣するなど偵察活動を強化し、海洋進出を加速させる中国への警戒感をあらわにしている。
参考文献:産経新聞、NHK