産経 加藤達也前ソウル支局長無罪「日米韓の反応」と「韓国の歪み」
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加藤達也前ソウル支局長の主な発言(無罪判決後)
2015.12.17 ソウル外信記者クラブ
加藤氏「公人中の公人である大統領に関する記事が気に入らないとして起訴する構図。この在り方は近代的な民主主義国家の姿としてどうなのだろうか。いまいちど考えてもらいたいと思う。今回の判決については受け入れがたい判断が示された部分も含んでいる。しかしながら、韓国の検察においてはこの無罪という結果を率直に受け入れ、控訴することなく、今後私をこのまま自由の身にすべきではないかと考えている」
--無罪判決を予想していたか
加藤氏「事前に弁護士を含めて検討会を何度か開いたが、無罪という判決については、主任弁護士がもっとも可能性が小さいだろうという認識を示していた」
--検察の取り調べを受ける中で、理解できなかったことは
加藤氏「この容疑者は有罪、絶対許さないという構図を固めて、供述を組み立てて有罪にするという強い意志、この意志を持った取り調べだということが非常に強く印象に残っている」
産経新聞 熊坂隆光社長が声明「控訴を慎むよう求める」
ソウル中央地方裁判所は朴槿恵(パク・クネ)・韓国大統領に対する名誉毀損に問われていた産経新聞の加藤達也前ソウル支局長に無罪判決を言い渡した。本件を韓国が憲法で保障する「言論の自由の保護内」と判断した裁判所に敬意を表する。
加藤前支局長が昨年8月、大統領に対する名誉毀損で告発、在宅起訴されて以来、日本新聞協会はじめソウル外信記者クラブ、日本外国特派員協会、「国境なき記者団」などの多数の内外報道機関、団体、さらに国連、日本政府、日韓関係者が強く懸念を表明し、さまざまな機会を通じて、解決に向けて力を尽くしていただいた。公判過程では弁護側証人として日米のジャーナリスト、研究者が証言に立つことをためらわなかった。こうした支援の結果が今回の無罪判決につながったものであり、心から感謝申し上げる。
本裁判が長きにわたり、日韓両国間の大きな外交問題となっていたことは、われわれの決して望むところではなく、誠に遺憾である。
民主主義を掲げる国家である以上、多様な意見を許容したうえでの、健全な議論をためらってはならない。言論の自由、報道の自由、表現の自由はその根幹であるがゆえに保障されねばならない。
産経新聞のウェブサイトに掲載された加藤前支局長の当該コラムに大統領を誹謗中傷する意図は毛頭なく、セウォル号沈没という国家的災難時の国家元首の行動をめぐる報道・論評は公益にかなうものである。
こうした弁護側の主張、産経新聞社の考えを、民主主義、言論の自由の観点から、冷静に判断した裁判所の意思を尊重し、韓国検察当局には、控訴を慎むよう求める。
日本のテレビ各局の反応
NHK
無罪判決が判明した午後5時頃、テロップを表示して速報。
7時にはトップニュースで7分近くにわたって詳報。
9時の「ニュースウオッチ9」では、河野憲治キャスターが「報道に携わる者からすると、そもそも起訴自体が報道の自由を制限し、取材活動を脅かす。無罪は大いに評価できる」とコメントした。
フジテレビ・日本テレビは生中継
フジのインターネット24時間ニュース専門局「ホウドウキョク」では、1時間以上にわたる会見を全編、生中継した。
テレビ朝日「報道ステーション」
古舘伊知郎キャスターは番組冒頭、「記事を書いただけで起訴された。起訴から判決に至るまで、政治色一色」と述べ、10分以上にわたって詳報。
TBS系「NEWS23」
アンカーを務める岸井成格氏が「判決は司法としては異例中の異例。最終的には外交問題として政治決着させた」と述べた。
韓国主要紙の反応
韓国各紙は18日付の朝刊で、ソウル中央地裁が無罪判決を下したことを一斉に報じた。
東亜日報・朝鮮日報・京郷新聞
1面で「1審無罪」の記事を掲載。
東亜日報は社説で「検察の起訴にはやはり無理があった」とする一方、「言論の自由が無制限ではないという裁判所の警告を極右性向の産経新聞も肝に銘じなければならない」として、産経新聞を批判。
東亜日報は「韓日関係に肯定的な影響を及ぼすなら幸い」とも述べている。
ハンギョレ紙
社説で「裁判所が検察の“大統領の顔色うかがい”による無理な起訴に鉄槌を下した」と指摘。「検察の無理な起訴が内外で言論の自由弾圧という激しい批判を招き、韓日関係にも悪影響を及ぼした点を考えれば、いたずらに問題を起こした検察に重い責任を問うのが当然」と検察を非難した。
同社説はさらに、「名誉毀損罪が、当事者が処罰を望まなければ起訴できない「反意思不罰罪」であることを考慮すると、意思に反すると表明しなかった朴大統領にも相当の責任がある」とした。
「韓日関係の大きな悪材料が除去されたことは幸い」と述べた。
朝鮮日報
加藤達也前ソウル支局長が引用したのは『朝鮮日報』の記事。その『朝鮮日報』がどのような反応かと言えば以下の通り。
崔源奎(チェ・ウォンギュ)氏の記事
記者がスクープ報道で名をはせたケースは多いが、虚偽の報道で有名になるのはあまり見たことがない。そうした事例として例に挙げるべきなのが産経新聞の加藤達也前ソウル支局長だ。
産経新聞は加藤前支局長の記事が事実でないことが明らかになったのにもかかわらず、謝罪はおろか訂正報道すらしていない。
朝日新聞が32年前の慰安婦関連記事について裏付ける証拠がないとして記事を取り消すと、「誤報に対する真摯(しんし)な謝罪がない」と批判したのは産経新聞だ。そう言いながら自分たちの誤報には目をつぶっている。記者にとって誤報は致命的なのにもかかわらず、恥とも思っていない。
言ってることが滅茶苦茶だが、突っ込むのも面倒なので最後の「朝鮮日報」の記事については置いておく。
アメリカ国務省、メディアの反応
米国務省のカービー報道官は17日、「名誉毀損に関して無罪とした判決は承知している」と述べるにとどめた。
国務省は今年6月に発表した2014年版の国別人権報告書で、加藤前支局長の在宅起訴を取り上げ、韓国の人権状況について「厳格な名誉毀損に関する法律が報道の自由を制限している」と指摘していた。
無罪判決を受けて韓国による人権状況の改善に向けた取り組みを尋ねられたカービー氏は「いかなる国の個別の人権状況の詳細にも立ち入らない」としたうえで、「報告書にあることが全てであり、米国として見解や懸念は表明してきた」と述べた。
米政府系メディア「ボイス・オブ・アメリカ」(電子版)
17日、在宅起訴は「韓国で言論の自由が損なわれていることに関し、人権団体からの批判を招いた」と指摘。セウォル号沈没事故後に支持率が低下した朴氏が「自らのイメージを守るために法を悪用した」との政権批判があることを紹介した。
米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)
17日、「朴政権は、望まない報道を沈黙させようとして法的手段を使い、批判されてきた」と指摘。さらに、「記者は、彼らの仕事をすることを通じて犯罪対象になってはならないと固く信じる」とした、国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」幹部のフィル・ロバートソン氏の論評も掲載した。
米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)
17日、「起訴したことは東京とワシントンから非難されてきた」と指摘するとともに、「無罪判決は日韓両国の緊張緩和に資する可能性がある」と論じた。
図らずも韓国の歪みを浮かび上がらせた
今回のことで、いかに韓国がおかしな国かが示されたことはよかったかもしれない。そういう意味で、韓国の歪さを浮かび上がらせた加藤前支局長の果たした役割は大きかった。
今回の裁判で感じたのは、結局のところ、韓国では政府の思惑で裁判を起こすことも、判決に介入することもできるんだなということ。
このことは日本人なら嫌というほど感じてきた事実だが、今回は「報道の自由」という国際的に関心の高いテーマで韓国の異様な対応が報道されたことは大きな出来事だった。
徴用工訴訟のときには、韓国では2012年に最高裁が、1965年の日韓請求権協定では韓国人の個人請求権は消滅していないと判断し、その後、地・高裁が4つの訴訟で企業に賠償支払いを命じる判決を出している。
この時は、韓国の関係者から、韓国の裁判は世論が影響するだの、法曹界には北が入り込んでいるのだから、日本はそれを理解せねばならないだのと言い訳を聞かされてきた。
たとえば元駐日韓国大使館公使のホン・ヒョン氏は言論テレビにおいて「日本は韓国の反日ばかり指摘するが、本当は北朝鮮に翻弄されている事を理解し韓国に協力すべきだし、日本がそうするのは当然のことだ」という話をしていた。
このときにも非常に違和感を感じ、憤慨したのを思い出す。
日本と韓国は「基本的な価値を共有していない」
今回の裁判はどうだ。
李裁判長は、韓国外務省から同法務省宛てに「韓日国交正常化50年」という節目の年に、この裁判が韓日関係改善の障害になっていることや、朴大統領をめぐる噂については既に虚偽と明らかになっている事情などを考慮し、「善処を望む」という要望が提出されたことを明らかにし、3時間の判決文を読み上げるときには加藤氏を起立のままにさせておいたらしい。
弁護人が途中で着席させるよう求めたが、それも拒否されたそうだ。
これはいかにもおかしな話だ。
韓国は建前上、行政、立法、司法の三権分立による政治体制のはず。
これでは三権分立されていないと国際的に宣言したようなものだ。
しかも「噂は虚偽」と言いつつ空白の7時間については、これまで何も明かされていない。安倍首相がこれをやったらどうなっていただろう。
結局、韓国の司法は政府の介入でどうとでもなるのではないのか。というよりも、司法の場が完全に政治の道具になっているのではないのか。
いずれにせよはっきりしたことは、韓国と日本は、同じ価値観を共有していないということだ。
日本政府の対応は正しかった
今年、日本は明確に韓国との距離をとってきたが、この対応は正しかったということだ。
1.施政方針演説「基本的な価値や利益を共有する」という表現を削除
2.外務省ホームページ 韓国と「基本的な価値を共有する」を削除
3.日本の外交青書、韓国と「基本的な価値を共有する」を削除
この件に関しては以下の記事をご覧ください。
出典・参考文献:産経新聞