南シナ海をめぐるアメリカと中国の応酬、米中冷戦状態

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南シナ海を巡る中国への態度が鮮明になってきたアメリカ。

鳩山政権の頃から日米の関係は明確に悪化し、その後日本では大震災が起き、米国の力は衰えたように見えた。一方、中国は欲望を隠すこともなく各地に手を伸ばし、「太平洋は広い、米中で分けよう」と言い始める。

このままアジアは中国の強い影響下に置かれるのかと不安に感じた。そんななか日本では、アメリカをとるのか、中国をとるのか、という議論が真面目に行われるようになっていた。

それはつい数年前のことだ。

しかし安倍政権によって「日米同盟が大切だ」と繰り返し宣言され、連邦議会上下両院合同会議で安倍首相は「希望の同盟を」と語りかけ演説を成功させた。同時に、日米安全保障協議委員会で「新ガイドライン」が承認され、日米同盟は強固なものとなった。そして、様子は明らかに変わってきた。

ここ最近の流れは、日本にとってもアジア地域にとっても、そして中国にとっても、後の時代にひとつの節目になったと思い起こさせることになるのではないか。

ケリー米国務長官訪中 16、17日

ケリー氏は習近平国家主席との会談において、南シナ海の紛争を平和的に解決することや、国際法を尊重することの必要性を強調

米国務省のラスキー報道部長会見 18日

 ケリー国務長官が17日に北京で行った中国の習近平国家主席との会談で、中国による南シナ海での岩礁の埋め立てに「懸念」を伝え、東南アジア諸国との緊張を緩和するため自制を求めたことを確認。

 「米国はいかなる一方的な領有権決定に反対する。当事者は外交的に国連海洋法条約を含む国際法に従って解決する必要がある」と述べた。

米CNNテレビ、中国が岩礁埋め立てを進める様子を公開 20日

米CNNテレビの取材班を乗せた米軍のP8対潜哨戒機が周辺空域を飛行した際、中国軍機が8回にわたって「即時退去」を要求した映像を公開

周辺海域には中国海軍の多数の艦船が見えたという。中国側が「外国軍機」に対し即時退去を求めるたびに、P8の操縦士らは公海上を飛行していると応じたとしている。近くには米民間機も飛行していた。

スプラトリー(中国名・南沙)諸島のファイアリクロス(同・永暑)礁などの大規模埋め立ての鮮明な映像も公開。管制塔や滑走路、レーダー施設などとする施設を映し出した。米軍搭乗員は「軍の施設のように見える」と話した

ハーフ国務省副報道官の発言

20日のCNNの番組で、米国が大規模埋め立てに反対し、監視していることを中国側に知らせる必要があると述べた。

中国メディアの反応

この流れを受け、22日付の中国官製メディアは米国批判一色となった。共産党の機関紙「人民日報」傘下の「環球時報」は一面トップで「米軍偵察機の火遊び」と題する長文記事を掲載し、「米国防省が南シナ海の緊張をつくった」と一方的な主張を展開した。

ラッセル米国務次官補(東アジア・太平洋担当)会見 21日

中国が南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島で建設している人工島の周辺で、米軍による「警戒・監視活動を継続する」と強調。

人工島の周辺は「国際海・空域であり、航行の自由の権利を行使する」「全ての国が適切に航行の自由という権利を行使できるよう、さらに行動していく」と発言。

米国防総省のウォーレン報道部長 21日

現段階で、米軍の偵察機と艦船を進入させていないとした上で、南シナ海で航行の自由を確保するため、中国が人工島の「領海」と主張する12カイリ(約22キロ)内に米軍の航空機や艦船を進入させるのが「次の段階」となると明言した。

ウォーレン氏は進入の時期について「全く決まっていない」と強調、それまでは12カイリの外側で航空機や艦船の活動を続けていく考えを示した。

ウォーレン氏はまた、中国軍機がP8対潜哨戒機に退去を要求した際に、「『防空識別圏』については言わず、『軍事区域』などと呼んでいた。これは(国際的に)認知されている用語ではない」と説明した。

中国外務省の洪磊(こうらい)報道官会見 22日

南シナ海上空で中国軍機が米軍機に退去警告を行ったことについて

米国側の行動はわが国の安全にとって潜在的な脅威となり、地域の平和と安定に大きな損害を与えた。このような無責任かつ危険な行為に対し強く不満を表明する」と、身勝手な抗議。

米政府が今後、スプラトリー諸島の12カイリ以内に米軍機を進入させる可能性を表明したことについて

言動を慎むよう求める。私たちは関係地域に対する監視を密にし、必要に応じて適切な措置を取る

北京の国際関係学者の発言

「中国も米国も一触即発の状態を避けたいのが本音だが、ここまで来たらどちらも引くに引けなくなった」と指摘。「習近平政権は、ホワイトハウスが最後に、国防省の12カイリ進入計画を認めないことを期待しているはずだ」と分析。

過去の事例

2001年4月、米中両国の軍機が南シナ海上空で衝突し、中国側のパイロットが死亡した際、中国の江沢民政権は米軍の機体を返還するなど穏便に解決した。しかし、中国の国力が増強して国内の民族主義も高揚しているいま、同じような突発事件が起きれば対立が一気にエスカレート化する可能性がある。

米上院のマケイン軍事委員長、環太平洋合同演習への招待撤回を求める書簡 22日

米上院のマケイン軍事委員長(共和党)らは22日までに、中国の南シナ海などでの挑発的な行動が目に余るとして、米海軍が主催する2016年環太平洋合同演習(リムパック)への招待を撤回するよう求める書簡をカーター国防長官に送った。米メディアが伝えた。

21日付の書簡には軍事委の民主党トップ、リード議員も署名南シナ海で岩礁埋め立てを進める中国に対して、米議会が党派を超えて反発を強めていることを示す。リムパックはほぼ隔年で開催され、前回14年に米海軍の招待で中国海軍が初参加した。

書簡は中国が「さまざまな手法の威圧」により東シナ海、南シナ海での管轄権を確立しようとしていると指摘。中国の圧迫にさらされている日本やフィリピンが演習の常連国であることも挙げ、中国に「褒美を与えるのではなく、代償を払わせる選択肢」を検討するよう米政府に求めている

参考文献:産経新聞、共同通信

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