エマニュエル・トッド「世界の今と次に起きること」
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2016年11月25日放送の『報道ステーション』で、エマニュエル・トッドが「世界の今と次に起きること」について語った。
全文書き起こし。
(見出しはブログ主が勝手に書いています。)
トッドのインタビューは、以下の記事でもご紹介しています。今年2月のものなので少し古いですが、まだまだ参考になる点もあります。
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エマニュエル・トッド「世界の今と次に起きること」
下品で不快な選挙でしたが、争われた論点は非常に根本的なものばかりでした。
支配階級の人々はトランプを認めず、何が起きているのかを知ろうともしませんでした。
もし現実を直視していれば、トランプ現象を予測できていたでしょう。
教育格差の怒り
つきつけられた現実とは、教育格差の怒りと指摘します。大卒ではない白人の7割近くがトランプ氏に投票していたからです。
大卒の人たちは「自分はエリートだ」と思い込んでいます。
教育ピラミッドの頂点にいるのは、高い給料に恵まれ、自由に労働市場へアクセスをし、グローバル化された経済システムによって利益を貪ってきた人たちです。
その一方で彼らは、聞き心地のいい価値観をアピールしながら、自由貿易を利用し、労働者の給料を下げ、庶民の生活をないがしろにし続けてきました。
今のシステムは教育弱者にとってあまりにも不寛容です。
ポピュリズムの一言で一掃したら民主主義ではない
いま各国のメディアは、世界がポピュリズム化するということを危惧しています。
しかしトッドさんは、トランプ氏に投票した人たちの決断をポピュリズムの一言で片づけるのは違うと話します。
「あれはポピュリズムだ」という人が増えている時は注意が必要です。
弱者の反乱のことを支配階級はポピュリズムと決めつけたがりますが、より良い生活を求めている大多数の庶民層のことをポピュリズムの一言で一掃したら、それはもう民主主義とは言えません。
アメリカは今もなお民主主義を貫いています。
ポピュリストと名指しされた人間が大統領になり、“階級の壁” を崩壊させ、次の段階に進もうとしているのは、「アメリカはアメリカであり続けている」ということなのです。
産業革命より重要な移行期
今の潮流をトッドさんは、「産業革命より重要な移行期」と位置付けています。
虐げられてきた教育弱者による一種の革命が起きていると考えているからです。
わたしたちが生きている時代は将来、「階級間の闘争が激化した時代だった」と分析されるかもしれません。
マルクス主義的な意味での「経済的な階級間」ではなく、「教育的な階級間」の闘争という意味です。
高等教育を受けていない庶民は今、「我々の価値観は普遍だ」などと主張するエリートに対して、怒りを爆発させ、過激なまでに否定しながら、グローバリゼーションに異を唱えています。
アメリカやイギリスで、ボリス・ジョンソンやトランプのような、おかしな髪形をしている支配階級の白人が思いついたのは、庶民にすりより、怒りの受け皿になり、声を代弁するという手法でしたが、これから他の国でもトランプみたいに新自由主義の時代が終わりを迎えていることに気づく指導者は出てくるでしょう。
ただ、世界の経済システムが大きく狂う時、たとえば1929年に大恐慌が起きた時はアメリカでルーズベルトが登場し、ニューディール政策を始めました。
その一方で、ドイツではヒトラーとナチスが誕生しています。
今後、世界の支配階級はトランプ現象をどう解釈してどういう道を選ぶのかが問われることになります。