【日EU首脳協議】「南シナ海」「ウクライナ」で連携、EPA交渉加速
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平成27年5月29日、安倍総理は、総理大臣官邸で欧州連合(EU)のジャン=クロード・ユンカー欧州委員会委員長とドナルド・トゥスク欧州理事会議長と日・EU定期首脳協議等を行った。
南シナ海での岩礁埋め立てへの懸念やウクライナへの支援継続を盛り込んだ共同声明を発表。
第23回日EU定期首脳協議において承認された日本国政府と欧州委員会との間の研究・イノベーションにおける新たな戦略的パートナーシップ
平成27年5月29日
英語版 (English)
安倍晋三内閣総理大臣、ドナルド・トゥスク欧州理事会議長、及びジャン=クロード・ユンカー欧州委員会委員長は、平成27年5月29日、東京にて第23回日EU定期首脳協議を行い、日本国政府と欧州委員会の間の研究・イノベーションにおける新たな戦略的パートナーシップに関する共同ビジョンを承認した。
この戦略的パートナーシップは、日本とEUが同様の課題に直面し、双方の研究の卓越性を促進し、双方の産業界の競争力を向上し、共通のグローバルな社会的課題に効果的に対処するために、両者が研究・イノベーションにおける協力を必要と考えていることに基づいている。
この流れで、研究・イノベーションにおける新たな日EU戦略的パートナーシップは、多様なレベルでの頻繁な協議による戦略的協力の深化を伴い、情報通信技術(ICT)、航空、及び材料科学(希少原料を含む)における協力の継続及び健康/医療研究、環境、エネルギー、及び高エネルギー物理学における協力拡大等の重要な戦略的分野における共同研究活動の促進、研究・イノベーション・プロジェクトの共同ファンディングのためのメカニズムの確立、新たに署名された日本学術振興会と欧州研究評議会の間の協力取決め等の研究者交流を促進するための施策の策定、オープン・サイエンス等の分野における科学技術イノベーション政策に関する緊密な協議と協力、日EU間の研究・イノベーション協力を更に目に見えるようにするための市民参加の促進などのパートナーシップのための共同のビジョンを含む。
これらの施策は、平成27年5月18日にブリュッセルで行われた第3回日EU科学技術協力合同委員会において、桂誠外務省科学技術協力担当大使とロバート=ヤン・スミッツ欧州委員会研究イノベーション総局長の共同議長の下に、議論及び採択された。
第23回日EU定期首脳協議
1.冒頭発言
安倍総理から,両首脳の訪日を歓迎する旨述べるとともに,両首脳と初めて開催する今次日EU定期首脳協議では,基本的価値を共有する日EUが国際社会の平和,安定及び繁栄の実現に重要な役割を果たすことを確認し,日EU経済連携協定(EPA)及び日EU戦略的パートナーシップ協定(SPA)両交渉の進展を一層後押ししたい旨述べました。
これに対し,トゥスク議長から,日本は最も緊密な友人の一人であり,欧州域外で初の首脳協議の相手として日本を選んだのは当然である旨述べました。また,ユンカー委員長より,安倍総理とお会いするのは昨年11月のブリスベンのG20の機会以来2回目であり,訪日は5回目である,日本との間で野心的なFTAに取り組むために議論したい旨述べました。
2.日EU関係
(1)安全保障分野
安倍総理から,先般国会に提出した「平和安全法制」について説明し,EU側首脳から積極的平和主義に基づく日本の取組に対し支持・賛同が表明されました。また,日EU首脳は,ニジェール,マリにおいて治安改善のためのミッションに関する日EU間の具体的連携が進んでいること,ソマリア沖の海賊対処活動について日EU間で共同訓練,裁判協力が行われていることを歓迎するとともに,連携を一層進めていくことで一致しました。
(2)経済分野
日EU・EPAについて,日EU首脳は,スピードと質の両方を重視しつつ,本年中の大筋合意を目指し,交渉を更に加速させていくことで一致しました。
また,安倍総理から,アベノミクスの現状を中心に日本の経済情勢について説明しました。
さらに,安倍総理から,日本産食品等輸入規制につき,科学的根拠に基づく緩和・撤廃を要請したほか,エネルギー協力等の分野でもEUとの間で協力したい旨述べました。
(3)その他の分野別協力
日EU首脳は,海洋,宇宙,サイバー等のグローバルコモンズ,人道支援の分野でも協力を深めることで一致しました。
また,日EU首脳は,科学技術分野で一層の協力を進めることを確認し,新たな戦略的パートナーシップに向けた共同ビジョンの採択,次世代通信ネットワークに関する共同宣言及び日EU間の研究者交流に関する覚書の署名を歓迎しました。
また,安倍総理から,150名の大学生等を本年度中に欧州から招へいし,次世代交流を促進する新たな「日欧MIRAIプログラム」を発表し,EU側首脳から,同プログラムを歓迎する旨の発言がありました。
3.グローバルな課題
日EU首脳は,COP21の成功に向けた取組をはじめとする気候変動問題,水際対策を含む国際テロ対策,ポスト2015年開発アジェンダ等への対応について日EUが協力,連携を進めることでも一致しました。
また,安倍総理より,世界の膨大なインフラ需要に効果的に対応するための「質の高いインフラ投資」推進の重要性についても説明しました。
4.地域情勢
(1)ウクライナ情勢に関し,安倍総理から,ウクライナ和平に向けたEUの取組に敬意を表する,日本もG7の連帯を重視しつつ,情勢の好転に向け努力する,ウクライナが強靱性と持続性を持つ国になるためには大胆で包括的な改革が必要不可欠であり,日本はウクライナの改革努力を後押しするために支援等を着実に実施していくこと等を述べました。
これに対し,EU側首脳より,ウクライナの主権と領土一体性を支持する,ミンスク合意の履行が重要である,日本の支持と支援に感謝するとの発言がなされました。
(2)東アジア情勢に関し,安倍総理から4月の日中首脳会談などの最近の動きや日本の基本的立場について説明しました。
これに対し,EU側首脳より,中国との関係について包括的な説明がなされました。また,北朝鮮に関し,日EU首脳は,引き続き協力することを確認しました。
(3)イラン情勢に関し,安倍総理及び岸田外務大臣から,先般のローザンヌにおける合意を歓迎するとともに最終合意の達成を期待する等を述べ,日EU首脳は,最終合意の形成に向け引き続き緊密に連携することで一致しました。
また,日EU首脳は,ISIL,中東和平及びアフリカについても意見交換を行いました。
出典:外務省
第23回 日 EU 定期首脳協議 共同プレス声明(骨子)
(平成27年5月29日,東京)
日 EU 首脳は,関係を強化し,国際社会の平和,安定と繁栄に更に貢献すべく第23 回日 EU 定期首脳協議を行い,以下の共同声明を発出。
戦略的パートナーシップの更なる発展に向けて
【日 EU 関係】
双方が戦後 70 年間国際社会の平和,安定と繁栄に貢献してきたことを確認し,共通の価値と原則に基づく戦略的パートナーとして,日 EU,地域及び世界レベルで協力。
【SPA】
今後の日EU関係の法的基礎となる日EU戦略的パートナーシップ協定(SPA)交渉の進捗を歓迎し,EPA と並行した交渉の加速化を指示。
【EPA】
高度に包括的かつ野心的な EPA の早期締結の重要性を再確認。望むらくは2015年末までに,すべての主要課題を含む合意に達することを目指し,交渉官に懸隔点解決のための権限を付託。
世界の平和と安全に向けて
【安保協力】
EU 首脳は,日本の「積極的平和主義」の下の取組を歓迎・支持。また,マリ,ニジェールでのCSDP と日本の支援との連携を振り返り,ウクライナとソマリアでの協力可能性を模索。共同セミナー等,協力の着実な進展を歓迎。将来的な日本の CSDP ミッション参加の可能性を含め議論。
【テロ対策】
あらゆる形態のテロを強く非難。リスク軽減と国境安全対策強化を含め,日EU間協力を強化するとともに,国際協力を進める。
【グローバル・コモンズ】
サイバー,宇宙,海洋における法の支配の確保の重要性を共有。第1回日 EU 宇宙政策・サイバー対話の開催を歓迎し,第 2 回対話に期待。ソマリア沖・アデン湾での海賊対処活動のための共同訓練の実施と,海賊に対する裁判協力を歓迎。
【軍縮・不拡散】
核兵器のない世界という共通目標実現のため更なる協力を決意。NPT 体制・多国間枠組の強化にコミット。武器貿易条約の効果的な実施と普遍化を進める。特に緊張状態にある地域につ
き,武器及び汎用品・技術の厳格な輸出管理の確保をコミット。
【地域安全保障環境】
国際法に基づく紛争の平和的解決,公海上での航行及び上空飛行の自由を強調し,武力による威嚇,実力の行使,強制等を含む一方的行動を控えるよう求める。東シナ海・南シナ海の状況を注視し,現状を変更し,緊張を高める一方的行動を懸念。
【北朝鮮】
核・ミサイル開発の継続を懸念。拉致問題を含む人権侵害を終わらせる措置を要請。
【ウクライナ】
全ての当事者に停戦合意の完全履行を求め,ウクライナの改革等へ支援を継続。
【中東】
人道状況・治安の悪化を懸念。地域の安定化に向け主要課題の政治的・平和的解決を支持。
成長,繁栄及び持続可能な開発を進める
【多国間貿易体制】
ドーハ・ラウンド交渉を妥結することにより,WTO 下で多角的貿易体制を強化。
【気候変動】
国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)ですべての締約国に適用される野心的,包括的な合意を採択すべく,双方が役割を果たすことを決意。
【女性】
女性の権利の保護とエンパワーメント,持続可能な平和と開発のための女性の活躍を促進。
【開発・防災】
包括的なポスト 2015 年開発アジェンダに向けた取組,人間の安全保障の推進を含む協力を進める。第3回国連防災世界会議の成功を歓迎。人道支援・災害救援に関する専門家会合を開催。
【科学技術】
「新たな戦略的パートナーシップに向けた共同ビジョン」を日 EU 首脳が承認。日欧研究者の協力強化に資する個別措置の重要性を確認。
【輸入規制】
食品等の輸入制限措置を科学的に見直すことにコミット。
出典:外務省
将来の協力のための相互理解を深める
【人的交流】欧州から 150 名の大学生等を訪日招待する旨発表。活発な議員間交流を歓迎。(了)
共同声明 抜粋
対 中国
「東シナ海・南シナ海の現状を変更し、緊張を高める一方的行動を懸念している」と明記。
対 ロシア
クリミア半島の併合を「決して承認しない」と批判。
対 北朝鮮
「拉致問題を含む人権侵害を終わらせる」ことを求めた。
日・EU EPA
日本とEUの経済連携協定(EPA)については早期締結の重要性を確認し、「2015年末までにすべての主要課題での大筋合意を目指して交渉を加速させていく」とした。
戦後70年
日本とEU双方が戦後70年間、国際社会の平和と安定、繁栄に貢献してきたことを確認し、EU側は、安全保障関連法案の整備を含め安倍総理大臣が掲げる積極的平和主義の取り組みを支持するとしている。
首脳協議後の共同記者発表で首相は「国際社会の平和と安定の実現に向け連携を一層深め、ともに主導的な役割を果たしていきたい」と述べた。
トゥスク大統領は「東アジアの平和と安定に貢献したい」と応じ「EUと日本の間には、友情と共通の価値観がある。われわれは、戦略的なパートナーシップをさらに次のレベルに上げていくことができると信じている」と述べた。
出典:首相官邸
参考文献:産経新聞・NHK
欧州連合(EU)のトゥスク大統領は、26日にも「海上での建設活動は南シナ海における領有権をめぐる問題の解決を困難にする」と懸念を表明していた。
「すべての当事者が、脅しや力の使用を避けなければならない」と述べ、中国の南シナ海での行動をけん制。その上で、南シナ海の問題について、29日(今日)に東京で開く日本とEUの定期首脳協議で議題に挙げることを表明し、日本と共に解決策を見いださなければならないと主張。
一方、中国の交通運輸省は、南シナ海の南沙諸島で灯台の着工式を行った。中国は「灯台の建設は、国際的な責任と義務を履行する重要な措置だ」と強調。この灯台の建設について、アメリカ・ホワイトハウスの報道官は、南シナ海の緊張を一層高めると懸念を表明。
http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg11800.html