【パナマ文書】宮崎哲弥「タックス・ヘイブンは近代国家の危機、格差拡大の原因」
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宮崎哲弥氏が『ザ・ボイス そこまで言うか』(2016年4月13日放送)で、タックス・ヘイブンについて非常に明快に解説してくれた。
近代国家の原則や租税の機能などの原則論を語っている。
パナマ文書が報道された後、わたしがこれまで聞いたタックス・ヘイブンの解説で、最も聞きたかった話を語ってくれたので思わず嬉しくなった。
格差の拡がりや、資本主義の問題が表出している現在、その根本原因や、そもそもの成り立ちを忘れると議論にならない。
該当箇所を書き起こしたので、ぜひ多くの人に読んでもらいたい。
パナマ文書、日本の報道について
租税国家は近代国家の原則
「合法だし、何が悪いのかよく分からない」みたいなことが言われてますけど、近代国家の原則に立憲主義とか民主主義とかいろいろあるが、租税民主主義・租税国家というのは近代国家の原則なわけです。
租税とは何か
じゃあ租税というのは一体何なのかというと、基本的に、ざっくり言ってしまうと、その人が所得を得る、儲けた土地、それを統治する国家に対して租税を行う。
この原則が崩れてきているというのは非常に危機的な状況で、色んな理由があるんだけど、先進国が財政的に苦境に立たされることが多い。日本なんか最たるものかもしれないけど、これは別にタックス・ヘイブンだけの問題ではないが、タックス・ヘイブンもその大きな問題のひとつであるということを認識して、これをいかに防ぐかということを課題としなければいけない。
「節税でしょ?違法じゃないんでしょ?」という感覚でこの問題を捉えていると、ちょっと違うんじゃないかなと思いますけどね。
そうそう。実は政治哲学的に言うと、リバタリアンという人達は「それでいいじゃん」と言うわけよ。「だって個人が儲けたお金っていうのは、使用・収益・処分をすることは個人の自由でしょ」と。
リバタリアンというのは自由至上主義と言われている人達ですけど、アメリカなんかだと一定の勢力があります。この人たちは基本的に「反税金」だから。
特に「所得税に対する累進課税なんていうのは、奴隷労働と同じだ」みたいなことを言う。私はこの見解には反対ですけどね。
租税の機能
租税にはいくつかの機能があって、原則は先ほど言った通りだが、それと同時に、所得の再分配、格差を調整していく。あまりにも広い格差がつかないようにしていくという機能もありますから、そういう意味では、(タックス・ヘイブンは)それから逃れようとする。
タックス・ヘイブンというのは、地名を見れば分かるように産業のないところで、そこで儲かったわけないじゃん。
だから完全に、これは本来であれば違法であるべき。そういうものです。
タックス・ヘイブンを防ぐ方法はある
どうやって防ぐか。だいたい「防ぐ方法はない」という議論が多いんですけど、若い経済学者、トマ・ピケティの弟子筋に当たるガブリエル・ズックマンという人が『失われた国家の富』という本を書いていて、「タックス・ヘイブンの経済学」という副題がついているんだけど、タックス・ヘイブンにどう対処すべきなのか。
これはさっき言ったように、「近代国家としての危機である」という認識に立って、様々な事例と経済学的な意味と、財政学的な意味とそれに対処する方法が書かれているので、今回は本を紹介するに留め、今度これはまた紹介したいと思う。
パナマ当局、文書流出の法律事務所を強制捜査
タックス・ヘイブンの問題って昔っからあってさ、トム・クルーズが主演した『法律事務所』っていう映画があって、これもケイマンの、アメリカの優秀なハーバード・ロー・スクールを出た学生、これをトム・クルーズが演るんだけど、あるロー・ファームに入るわけ。このロー・ファームは色んな謎があるんだけど、基本的にはどうしてこんなに新人に対しても良い給料が払えるのかということを解き明かしていくうちに、マフィアがケイマンでマネー・ロンダリングをしている事実に突き当たる。それを知ってしまったが故に大変危ない状況に立ち入ってしまう話。
これが1993年、20年以上前の映画。
その時から話題にはなっていたのに、やっとこれ(パナマ文書)で出てきたかという感じ。
タックス・ヘイブンは格差拡大の原因のひとつ
これは、ガブリエル・ズックマンやその師匠のトマ・ピケティも、ずーっと問題にしていること。
これ(タックス・ヘイブン)が世界の格差拡大の原因のひとつだと言っても過言ではない。
消費税は本当に必要なのか、議論を
仮に日本で、そういうことが大々的に行われていて、税収が減っているとするならば、その税収が流出している国家の富、その流出を塞げば、消費税なんて本当に必要なんですか?っていう議論だって、まぁ「完全に必要じゃない」とは言えないだろうけれども、消費税のような大衆課税じゃない方法があるんじゃないんですか?っていうことを、なぜ民進党が言わないんですかねぇ。
格差是正なんでしょう?ねぇ、朝日新聞さん。
なんで「予定通り消費税は上げるべきだ」というような、原真人の愚論を載せるんでしょうね!
わたしは、原則論から解説してくれた宮崎氏に感謝したい。
宮崎氏やガブリエル・ズックマンやトマ・ピケティも提示するタックス・ヘイブンの問題を、より多くの人が知り、考えることが大切ではないかと思う。
格差については、フランスの歴史人口学者・家族人類学者、エマニュエル・トッドも語っているので、よかったら下のリンク記事もご覧いただきたい。
今回は本の紹介のみで内容については触れられなかった「タックス・ヘイブンにどう対処すべきなのか」の解説も、次回以降の放送で楽しみにしている。