日露首脳会談「平和条約、新たなプローチで具体的に進める道筋が見えた」
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平成28年9月2日(現地時間)、安倍総理は、第2回東方経済フォーラム出席等のためロシア連邦のウラジオストクを訪問しました。
総理は、極東連邦大学でロシア連邦のウラジーミル・ウラジーミロヴィチ・プーチン大統領と会談を行いました。
以下、公開されているものをご紹介します。
日本人にとって最も気になるのは北方領土問題だと思いますが、どうやら表向きには北方領土問題に敢えて触れず、経済交流を活発化させながら、新たなアプローチで話し合われていくという流れのようです。
だから、この記事を読んでも物足りなさを感じるかもしれません。
プーチンが、「北方領土と経済協力は別だ、取引はしない」と語ったり、領土支配を強化させたりしていますので、「経済協力だけさせられて終わるんじゃないか」と不安に思う人も多いかと思います。
このことについて専門家の方々は、口を揃えて「水面下では話し合われているはずだ」「当然領土問題と経済協力はセットだ」と言います。外交においてはなかなか不安が拭えない日本ですが、これまでの経緯を見ていると当然、話し合われていることでしょう(と思います。普通に考えて、ですけど)。
また、今回の経済協力に関して、藤原正彦氏が「中露の分断を図っているのだろう」と語っていました。分断と言うと強い言葉に聞こえますが、それはずっと世界で行われる綱引きなわけで、わたしも同意です。当然そのような計算もあるでしょう。両国の経済的発展は言うまでもないことですが。
最も難しい領土問題ですし、相手はプーチン。わたしたち国民のほうもしびれを切らさず、粘り強く見守る覚悟が必要なようです。たとえば話し合われた後、とりあえず2島しか返ってこないかもしれない。でもここで国民が騒いで世論がそっちに流れるとマイナスになる(とわたしは思う)。安倍プーチンの時代にこの問題が進まなければ、また様々な条件が整うまで何十年も動かない話だと思います。だから、色々なことを想定しつつ、賢明な判断ができるように心構えを持つ必要があると思っています。
この記事の最後に「北方領土問題 ‘動きにつながる道’ を探す」を追記しました。
これは首脳会談の3日後の発言で、プーチン大統領も北方領土問題を動かす意志があることを改めて明言しています。
これまでのおさらい
第2回東方経済フォーラムの際の日露首脳会談
9月2日,ロシアのウラジオストクを訪問した安倍総理大臣は,プーチン大統領との間で,約3時間10分にわたり日露首脳会談を行いました。会談は,現地時間午後6時20分から約2時間5分の首脳会談(両首脳二人による55分間の会談を含む),その後約1時間5分のワーキングディナーという形式で行われました。
1 日露関係全般(政治対話・要人往来)
(1)プーチン大統領の訪日について,12月15日に同大統領を山口県に招待し,首脳会談を行うことで合意しました。両首脳は,同訪問に向け平和条約締結交渉を含む政治分野や経済分野などで準備を進めていくことで一致しました。
(2)また,11月にペルーのリマで行われるアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会合の際に,再び首脳会談を行うことで一致しました。
(3)安倍総理からは,前回の首脳会談以降の日露関係進展に向けた肯定的な流れの中で,総理自らが直接指示を出し,プーチン大統領の訪日に向けた準備を進めさせていることを説明しました。
2 平和条約締結問題
安倍総理から,平和条約締結問題については,ソチでの会談を踏まえ,我々首脳同士でしっかりフォローしたい旨述べました。
その後,両首脳二人の間で,時間をかけて,真剣な中にも打ち解けた雰囲気の中で,「新しいアプローチ」に基づく交渉を具体的に進めていく道筋が見えてくるような議論が行われました。
3 安全保障分野
(1)安倍総理から,7月に外務省間で日露安保協議が開催され,信頼醸成に役立つ有意義な協議が行われた,様々なレベルで議論を続けていきたい,谷内国家安全保障局長とパトルシェフ安全保障会議書記との間のチャネルでも意見交換を続けたい旨述べました。
(2)また,防衛当局間の交流も継続している旨を指摘したほか,海上保安庁と国境警備局の間の協力について,先月,ウラジオストク沖合にて,日本から巡視船「えちご」が参加して,中国や韓国なども交えて海上保安機関の多国間訓練が成功裏に行われたことは意義深い旨述べました。
4 経済分野・個別案件
(1)経済分野
ア 安倍総理から,ソチでの首脳会談において提示した8項目(注)の「協力プラン」の具体化に向けた動きを紹介しました。この関連で,トルトネフ副首相及びウリュカエフ経済発展大臣の訪日や朝田経団連日ロ経済委員長の訪露等,両国ハイレベルの交流が進んでいることを紹介しました。また,「協力プラン」の具体化に責任をもつ大臣として,世耕ロシア経済分野協力担当大臣を指名し,同大臣の下に全ての関係省庁を総理官邸が直轄する体制としたことを説明しました。
イ 両首脳を始め日露の会談出席者の間で議論が行われ,中小企業交流の拡大,エネルギー協力,極東の産業振興・輸出基地化を始め,今後協力の具体化に向けた議論を深めていくこととなりました。
(注)(1)健康寿命の伸長,(2)快適・清潔で住みやすく,活動しやすい都市作り,(3)中小企業交流・協力の抜本的拡大,(4)エネルギー,(5)ロシアの産業多様化・生産性向上,(6)極東の産業振興・輸出基地化,(7)先端技術協力,(8)人的交流の抜本的拡大
(2)漁業
安倍総理から,漁業は日露双方が豊かな海から利益を得てきた伝統的な協力分野であり,自分としても重視している,既存の枠組みの下で,持続的な操業ができるよう注意を払ってほしい旨述べました。
これに対して,プーチン大統領から,流し網漁の禁止は日本に向けられた措置ではなく,環境保護のためのものである,それ以外の分野で日本の漁業者がロシアの水域で操業できるよう協力していきたい旨発言がありました。
5 国際情勢
(1)北朝鮮
安倍総理から,8月に北朝鮮が発射したSLBMは,従来とは質的に異なる新たな脅威である,北朝鮮の挑発行動は安保理決議の明白な違反であり,安保理で厳しい対応をとる必要がある,さらに,拉致問題の早期解決に全力を尽くす決意は不変であると強調し,諸懸案の解決に向けて,ロシアと引き続き協力していきたいと述べました。
これに対し,プーチン大統領から,北朝鮮が核問題を合法化しようとしていることは認められない,問題解決のためには六者協議を再開することが重要である旨述べました。
さらに,安倍総理からは,会議のための会議に意味はなく,具体的な成果が出るような協議でなければならない旨指摘しました。
(2)シリア情勢
安倍総理から,アレッポ等の人道状況の悪化を強く懸念している,米露の主導により敵対行為が停止され,人道状況が改善し,政治プロセス進展につながることを期待している,更なる人道アクセスの改善に向けたロシアの役割にも期待している,日本としても,シリア及び周辺国に人道・復興面で支援を行っていく旨述べました。
(3)ウクライナ情勢
安倍総理から,最近のロシア・ウクライナ間の緊張の増大に懸念を示し,日本はウクライナ情勢の安定に向けたノルマンディー・フォーマットの役割を評価しているとして,全ての当事者がミンスク合意の履行に向けた努力を継続することの必要性を強調しました。
出典:外務省・首相官邸
安倍首相、会談後の発言
総理は、会談後、次のように述べました。
プーチン大統領とは、日露関係だけではなく、北朝鮮問題、あるいはシリア、ウクライナ問題といった国際社会が直面する諸課題について、ゆっくりと時間をかけて議論を行いました。
特に、平和条約については、2人だけでかなり突っ込んだ議論を行うことができたと思います。新しいアプローチに基づく交渉を今後具体的に進めていく。その道筋が見えてきた、その手応えを強く感じ取ることができた会談だったと思います。
70年以上にわたって平和条約が締結されていない、この異常な状況を打開するためには、首脳同士の信頼関係のもとに解決策を見出していくしか道はないと思います。
そこで、11月に開催されるペルーのAPECにおいて、首脳会談を行う約束をいたしました。その上で、12月15日に山口県にお迎えをして首脳会談を行う合意をいたしました。私の地元である長門市において、ゆっくりと静かな雰囲気の中で、平和条約を加速させていく。そういう会談にしていきたいと思っています。
出典:首相官邸
安倍首相の会談後の様子は、自信に溢れているように見え、話し合いはスムースに進んでいるのではないかと感じました。
この3日後、G20首脳会議が開かれた中国・杭州で記者会見し、北方領土について触れているので以下ご紹介します。
プーチン露大統領「北方領土問題 ‘動きにつながる道’ を探す」
日露首脳会談の3日後、プーチン大統領が北方領土問題について触れている。
ロシアのプーチン大統領は5日、G20首脳会議が開かれた中国・杭州で記者会見し、北方領土問題について、「譲れぬ一線」ではなく「動きにつながる道」を探すべきだと述べた。双方に歩み寄りが必要との認識を示したとみられている。
プーチン氏は平和条約締結後に色丹、歯舞の2島を引き渡すとした日ソ共同宣言(1956年)に言及。同宣言を重視する考えをにじませつつ、引き渡しの「条件」やその後の「主権」は宣言に記されていないとの自説を語った。安倍晋三首相による8項目の経済協力提案は高く評価し、平和条約締結に向けた環境づくりが重要だと訴えた。
プーチン氏はまた、南シナ海での中国の主権主張を退けた仲裁裁判所の裁定について、これを受け入れないとした中国の立場を「支持する」と発言。ただ、第三国は介入すべきでないとの立場も強調した。
出典:産経ニュース 2016.9.6 01:28
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