【パナマ文書】ピケティらが書簡「タックスヘイブンが不平等を拡大」(全文)
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「パナマ文書」によって世界中で問題となっているタックス・ヘイブン(租税回避地)に関する新たな動き。
フランスの経済学者トマ・ピケティや、ノーベル経済学賞を昨年受賞したアンガス・ディートン米プリンストン大教授ら経済学者355人が署名し、各国政府の指導者に対し公開書簡を発表した。
残念ながら、この355人に日本人は1人も入っていない。
書簡を作成して世界の経済学者に賛同を呼び掛けたのは、貧困に苦しむ人々の支援を続けているオックスファム(本部イギリス)。
イギリスに本部を置く団体が、「世界のタックスヘイブンの三分の一を占めており、サミットの議長国として議論をリードする立場にある」と言って、以下のような書簡を出したわけだ。
なお、この書簡全文を掲載した新聞は「東京新聞」のみ。
タックスヘイブンについて、書簡では・・・
世界全体の富や福祉の増進に何ら寄与せず、経済的な有益性はない | |
一部の富裕層や多国籍企業を利するだけで、不平等を拡大させている | |
先進国だけの問題ではない | |
新たな世界的な合意が必要 |
「世界経済をゆがめている」公開書簡全文
世界の指導者たちへ
私たちはタックスヘイブンが存在する時代を終わらせるべく、ロンドンで今月開かれる腐敗防止サミットで議論されるよう求める。
タックスヘイブンの存在は、世界全体の富や福祉の増進に何ら寄与せず、経済的な有益性もない。一部の富裕層や多国籍企業を利するだけで、不平等を拡大させている。「パナマ文書」などで明らかになったように、タックスヘイブンによる税逃れ行為は各国の国益を損なっている。
貧しい国々は最も大きな影響を受けており、少なくとも毎年千七百億ドル(約十八兆四千八百億円)の税収入を失っている。私たち経済学者の間には、個人や法人の所得に対する課税のあり方について、さまざまな見方がある。だが、現実は活動実態がないペーパー会社などが存在して世界経済をゆがめている。
脱法行為の隠蔽(いんぺい)や、富裕層や多国籍企業が別のルールで行う活動を許すと、経済成長を支える法の秩序も脅かされる恐れがある。タックスヘイブンを覆う秘密のベールをはぐため、新たな世界的な合意が必要だ。各国政府も会社に関する真に有益な情報を公開して、自分の「家」の中をきれいにしなければならない。(自治領を多数抱える)英国は、世界のタックスヘイブンの三分の一を占めており、サミットの議長国として議論をリードする立場にある。
タックスヘイブンを根絶するのは容易ではない。既得権益を守ろうとする抵抗勢力もある。だが、(十八世紀の古典経済学者の)アダム・スミスは言った。「富を持つ者は収入の割合に応じてでなく、その割合以上に公共に貢献すべきだ」と。タックスヘイブンはその言葉とまったく逆で、経済学的な正当性はない。
出典:東京新聞 2016年5月11日
格差拡大の原因の1つになっているタックス・ヘイブンについて、わたしたち市民レベルでも冷静な批判を続けたいと思う。