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【G20 2016】20か国財務大臣・中央銀行総裁会議声明<全文・仮訳>

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2016.03.01追記
麻生大臣、黒田総裁共同記者会見の概要、[1] ファンダメンタルズとは、[2] パリクラブとは

中国・上海で開かれていた財務相・中央銀行総裁会議(G20)は27日午後、閉幕した。

年初から続く世界的な市場の混乱を回避するため、財政出動を伴う景気対策や構造改革の加速など「すべての政策手段を個別、総合的に用いる」との声明を採択。

しかしながら新たな具体策がよく分からないのだが、1つだけ目を引いたのは「国際金融アーキテクチャー」。これは要するに、中国を含む新興国からの資本流出を食い止める「資本規制」の仕組みらしい。新興国からの外貨持ち出しに上限を設けるなどの手法が考えられるとのこと。

閉幕後の記者会見で、麻生太郎財務大臣は「市場は悲観的になりすぎている。経済のファンダメンタルズ[1]は極めて良好だ」「(世界経済が下振れした場合でも)G20参加国できっちり対処することが確認された」と説明。
また黒田東彦日銀総裁は、今月導入したマイナス金利政策について「十分な理解を得られた。異論や意見はまったくなかった」と述べた。

G20とは

「Group of Twenty」の略で、主要国首脳会議 (G8) に参加する8か国、欧州連合 (EU) 、新興経済国11か国の計20か国・地域からなるグループである。

構成国・地域
アメリカ合衆国、イギリス、フランス、ドイツ、日本、イタリア、カナダ、欧州連合、ロシア、中華人民共和国、インド、ブラジル、メキシコ、南アフリカ、オーストラリア、韓国、インドネシア、サウジアラビア、トルコ、アルゼンチン。

[1] ファンダメンタルズとは

ファンダメンタルズとは、国や企業などの経済状態などを表す指標のことで、「経済の基礎的条件」と訳されます。

国や地域の場合経済成長率、物価上昇率、財政収支などがこれに当たり、企業の場合は、売上高や利益といった業績や資産、負債などの財務状況が挙げられます。

出典:SMBC日興証券株式会社HP
(強調はブログ主)

20か国財務大臣・中央銀行総裁会議声明(仮訳)

2016年2月26-27日 於:中国・上海

1

我々は、主要な世界経済の課題を検討してこれに対処し、杭州サミットの政策アジェンダについて前進するために上海で会合した。

世界経済の回復は続いているが、依然としてばらつきがあり、強固で持続可能かつ均衡ある成長のために我々が期待する水準に達していない。
変動の大きい資本フロー、一次産品価格の大幅な下落、地政学的な緊張の高まり、潜在的な英国のEU離脱及びいくつかの地域における大量かつ増加する難民がもたらすショックなどを背景に、下方リスクと脆弱性が高まっている。
加えて、世界経済の見通しが更に下方修正されるリスクへの懸念が増大している。

これらの課題を認識しつつも、我々は最近の市場の変動の規模は、その根底にある世界経済の現在のファンダメンタルズを反映したものではないと判断している。
多くの先進国では経済活動の緩やかな拡大が続き、主要な新興国の成長は引き続き強いと予想される。

しかしながら、我々は世界経済の成長という共通の目的を実現するため、更なる行動が必要であることに合意する。
我々は、引き続き世界の経済・金融動向を注視する。

2

過去数年間、G20は成長、投資及び金融安定の強化に関し、重要な成果を挙げてきた。我々は、信認を醸成し、回復を維持・強化するための行動をとっている。
これらの目標を達成するため、我々は全ての政策手段‐金融、財政及び構造政策‐を個別にまた総合的に用いる

金融政策は引き続き、中央銀行のマンデートと整合的に、経済活動と物価安定を支えるだろう。
しかしながら、金融政策のみでは、均衡ある成長に繋がらないだろう。我々の財政戦略は成長の下支えを企図しており、強靭性を高め債務残高対GDP 比を持続可能な道筋に乗せることを確保しつつ、経済成長、雇用創出及び信認を強化するため、我々は機動的に財政政策を実施する。

我々はまた、質の高い投資へと支出を重点化することを含め、税制及び公共支出をできるだけ成長に配慮したものにしている。
我々は、強固で持続可能かつ均衡ある成長の実現に向けた努力を支える上で相互補完的なマクロ経済政策と構造政策が果たす役割を再確認する。
構造改革の早急な進展は、中期的に潜在成長力を高め、経済をより革新的、柔軟かつ強靭にする。

潜在的なリスクへの対応力をより高めるべく、我々は引き続き、成長と安定を支えるためにG20諸国が必要に応じとり得る政策オプションにつき追求する。
我々は、為替レートの過度の変動や無秩序な動きは、経済及び金融の安定に対して悪影響を与え得ることを再確認する。
我々は、為替市場に関して緊密に協議する。
我々は、通貨の競争的な切り下げを回避することや競争力のために為替レートを目標とはしないことを含む、我々の以前の為替相場のコミットメントを再確認する。
我々は、あらゆる形態の保護主義に対抗する
我々は、政策に関する不確実性を軽減し、負の波及効果を最小化し、透明性を向上させるために、マクロ経済及び構造問題に関する我々の政策行動を注意深く測定し、明確にコミュニケーションを行う。

3

我々は、経済成長を実現することの重要性、及び、生産性と潜在成長を高めるために構造改革が果たす重要な役割を再確認する。

我々は、2018年までにGDPを追加的に2パーセント引き上げるとの目標を達成するため、2016年において国別の改定成長戦略の実施を優先課題とし、特に重点を置く。

過去の国別のコミットメントに基づき、我々は、G20諸国が改革に取り組む際に参照するものとしての一連の優先課題と原則の策定や、国ごとの状況の多様性を考慮した上で構造改革の進捗及び構造的課題への取組みの妥当性の評価や監視を更に改善するためのインディケーターシステムの作成を含め、構造改革アジェンダを更に強化することにコミットしている。

この強化された構造改革アジェンダは、強固で持続可能かつ均衡のある成長のためのフレームワークの下に設けられている、既存のワーク・ストリームに組み込まれるだろう。
我々の取組みの効率性を高めるため、我々は、投資戦略を成長戦略と統合し、目標達成に向け、引き続きそれらの戦略の適時かつ効果的な実施にコミットする。

我々は、強化された各国間のレビューを含め、統合された戦略を検討し、我々全体の成長目標と我々の統合的な目標である強固で持続可能かつ均衡のある成長にむけた進捗を確保するために、必要に応じて戦略を調整する。
成長のための貿易及び投資の重要性と、それらの最近の弱さを認識しつつ、我々は国際機関の支援を得て、これらの分野における潜在的な政策手段を検討する。
我々は引き続き、更なる包摂性を促進し、過度の世界的な不均衡を縮小させるための行動を取る。

4

我々は、質と量の両面からインフラに焦点を当て、投資アジェンダを前進させるという我々のコミットメントを再確認する。

我々は、国際開発金融機関(MDBs)がアンタルヤで合意された通り、バランスシートを最適化する行動計画を7月までに提示することを期待している。

インフラ開発の促進における国際金融開発機関の独自の役割に鑑み、またインフラ投資と貧困削減を促進するとの国際金融機関のマンデートを考慮して、アディスアベバ行動アジェンダで要請された通り、我々は国際開発金融機関が質の高いプロジェクトに関する量的目標を作成した上で、民間部門の資金調達を触媒として既存及び新規の国際金融開発機関との協力を強化し、複数国・機関の協力的な協調融資による協力モデルを奨励し、プロジェクトの準備に関する作業を支援する共同行動を取ることを奨励する。連結性の強化は、国内インフラによる正の波及効果を最大化し、更なる投資機会を創出するために重要である。

我々は、既存インフラ・プログラムとの連携と相乗効果を強化する国際的なインフラ連結性イニシアティブを発足させる。

我々は、インフラ投資をアセットクラスとして促進し、G20/OECDのコーポレートガバナンスと中小企業ファイナンスの原則の強固な実施を奨励し、国際的な投資家の関与と、資本市場の発展の促進を通じて特にエクイティ・ファイナンスに焦点をあてたインフラ融資手法の多様化に貢献する政策パッケージの立案を支援する。

5

安定的かつ強靭な国際金融アーキテクチャーは、強固で持続可能かつ均衡ある成長及び金融の安定のための主要な要素である。
我々は、国際通貨システム(IMS)に関するIMFの現状評価も活用し、IMSの円滑な機能及び秩序ある発展を促進することを目指す、国際金融アーキテクチャー作業部会(IFAWG)の作業計画を承認した。

我々は、2010年のIMFクォータ・ガバナンス改革の発効を歓迎する。我々は、新たな計算式を含め、第15次クォータ一般見直しを2017年の年次総会までに完了させるとのタイムテーブルを支持し、強固でクォータを基礎とし、かつ十分な資金基盤を有するIMFへの我々のコミットメントを再確認する。

我々は、世界銀行グループが、合意されたロードマップと時間的枠組みに従って、徐々に衡平な投票権を達成するため、投票権見直しを実施することを支持する。
我々は引き続き、公的債務再編プロセスの秩序及び予見可能性を促進し、債務持続性フレームワークを強化する。
資本フローは国際通貨システムの中心的な構成要素である。世界経済における現下の動向に鑑み、我々は、より適時なリスクの特定を含め資本フローをよりよく監視し、各国の経験を踏まえ、巨額で変動しやすい資本フローから生じる課題に対処する上でとり得る政策手段及び枠組みについて現状評価を行い、適切に検証を行う。

我々は、十分で効果的なグローバルな金融セーフティネット(GFSN)の重要性を強調し、GFSNの構造に関するIMFの分析を4月に議論することを期待する。

我々は、2015年のIMFによる特別引出権(SDR)価値決定手法のレビュー完了を歓迎し、SDRのより広い使用に関する可能性の検討及び現地通貨建て債券市場に関する更なる作業を支持する。

6

我々は、バーゼルIIIやTLAC(グローバルなシステム上重要な銀行の総損失吸収力)の基準を含むこれまでに合意した金融改革の適時、完全かつ整合的な実施に引き続きコミットしている。

この目的のため、我々は、各国当局に対し、実効的なクロスボーダーの破綻処理枠組みや店頭デリバティブ改革の実施におけるものを含むクロスボーダーの協力を強化すること、及びサンクトペテルブルク宣言に則り、正当化されるときには、相互の規制に委ねることを奨励する。

我々は、銀行セクターにおける資本賦課の全体水準を更に大きく引き上げることなくバーゼルIIIの枠組みの一貫性を確保し最大限有効なものとするため、その枠組みの要素の改良に係るバーゼル銀行監督委員会による作業を支持する。

我々は、引き続き、規制改革の実施及び影響を監視し、評価する。これは、新興市場及び途上国に対するものを含む、規制改革のいかなる重大な意図せざる影響への対処を含む。

我々は、グローバルなシステム上重要な保険会社の評価手法の改善のための進行中の作業と、国際保険資本基準の開発における合意されたタイムラインに従った更なる進展を支持する。

我々は、合意されたCPMI-IOSCO(決済・市場インフラ委員会-証券監督者国際機構)の金融市場インフラ(FMIs)のための原則の実施と、金融市場インフラの規制・監視の更なる強化を強く奨励する。

我々は、複数の国・地域にわたってシステミックな中央清算機関(CCPs)のための協調取極めを含む、中央清算機関の強靭性、再建計画及び破綻処理可能性に関する欠陥の特定と対処における更なる進捗を期待する。

我々は、シャドーバンキングや資産運用業、その他の市場型金融に関連するものを含め、金融システムにおいて生じつつあるリスク及びぜい弱性を注意深く監視し続け、必要となれば対処する。

我々は、簡素で透明性が高く比較可能な証券化商品を特定するための基準に関するBCBS(バーゼル銀行監督委員会)とIOSCO(証券監督者国際機構)の作業を歓迎する。

我々は、市場流動性の変化と市場の安定に対する影響を包括的に検証し、必要に応じて政策手段を検討する。

我々は、コルレス銀行サービスの減少に関するFSB(金融安定理事会)の作業計画に示された、国際機関による継続中の作業を歓迎し、必要に応じてこの問題に対する評価と対処における進捗を加速させることを期待する。

我々は、マクロプルーデンスの枠組みと手段に関する経験と潜在的な教訓の調査と我々の7月の会議までの報告のためのFSB、IMF及びBIS(国際決済銀行)により計画されている作業を歓迎する。

我々は、金融包摂のアジェンダの強化に引き続きコミットしている。我々は、金融包摂のためのグローバル・パートナーシップ(GPFI)に対し、G20中小企業行動計画の実施のための枠組みを策定し、デジタル金融包摂に関するハイレベル原則の策定とデータ収集と指標の改善を探求することを求める。

7

G20/OECD税源浸食と利益移転(BEPS)プロジェクトの広範で、一貫した、そして効果的な実施は、公平で現代的な国際課税システムにとって極めて重要である。

我々はBEPSプロジェクトを適時に実施するという我々のコミットメントを再確認し、税の公平性及び公平な競争条件を確保するため、BEPSに関連する問題へのモニタリングと対処を続ける。
一貫したグローバルな取組みを確保するために、我々はOECDより提案されたBEPSプロジェクトのグローバルな実施のための包摂的枠組みを支持し、発展途上国を含む、BEPSプロジェクトの実施にコミットする全ての関係・関心ある非G20諸国・地域に対し、同枠組みへの対等な立場で参加することを奨励する。

我々は、発展途上国がBEPS実施に際し直面する特有の課題が枠組みの下で適切に対処されるべきことを支持する。

我々は要請に基づく情報交換及び自動的情報交換(AEOI)のための基準の実施に引き続きコミットし、全ての金融センター及び国・地域に対して、2017年又は2018年末までの実施を求める。

我々は全ての国に対する多国間税務行政執行共助条約への参加の呼びかけを再確認し、グローバルフォーラムによる進捗報告を期待する。

我々はアジス税イニシアティブ、税務行政診断評価ツール及び国境なき税務調査官を含む、発展途上国が抱える税の問題に関する彼らのニーズに応えるための能力強化を目的とした既存の様々なイニシアティブを歓迎する。
この点に関して、中国は国際税制の企画・研究並びに発展途上国への技術支援のための国際税制研究センターを設立することで貢献する。

我々はまた、IMF、OECD、国連及び世界銀行グループが税プラットフォームを共同で立ち上げるという新たな提案を歓迎するとともに、これらの機関に対し、技術支援プログラムの効果的な実施を確実なものとすることに資するメカニズムと、税プロジェクト及び直接の技術支援に対する各国の資金の貢献方法について提案をすること、そして我々の7月の会合において提案を報告することを求める。

我々は持続的な経済成長を達成するための税制の役割を認識し、7月に開かれるG20税シンポジウムにおいて更にこの問題を探求していく。
我々は不正な資金の流れが我々の経済へ与える重大な悪影響を認識し、このテーマについてG20としての作業を引き続き進める。

8

我々は、断固としてテロ資金供与と闘う決意である。我々は、テロ資金供与の全ての資金源、技術及びチャネルに対処するための取組を強化し、我々の協力と情報交換を強化する。

我々は、全ての国に対し、全ての国・地域におけるFATF基準及び国連安保理決議第2253号に関する規定の速やかな実施を含め、これらの取組に参加することを求める。
我々は、FATFに対し、他の国際機関と協働しつつ、金融システムに残存する抜け穴及び問題を特定し対処するための取組を強化すること、並びにFATF基準が効果的かつ包括的であり、完全に履行されていることを確保することを求める。
我々は、FATFに対し、テロ資金供与の脅威、資金源、資金調達方法及び資金使用を特定、分析、対処する取組を強化することを求める。

9

喫緊の環境課題とグリーン資金の動員の重要性を認め、我々はG20グリーン資金スタディグループ(GFSG)を設立した。
我々はGFSGに、グリーン資金の制度及び市場の障壁を明らかにし、またグリーン投資に民間資本を動員するため、金融システムの能力を高めるための選択肢を、各国の経験に基づき構築することを求める。
GFSGは他のG20グループ、その他外部のイニシアティブ、及び民間部門と協力する。我々はGFSGに、7月の会議までに統合報告書を提出することを期待する。

10

我々は、気候変動に係るパリ協定の採択と気候資金に係る先進国及び国際機関によるコミットメント及びその他の国による発表を歓迎し、タイムリーな実施を求める。
先進国の締約国は、気候変動枠組条約に基づく既存の義務の継続において、緩和及び適応に関する開発途上国の締約国を支援する資金を、緑の気候資金を通じ供与される支援を含め、供与する。
他の締約国は、任意に、このような支援を提供すること又は引き続き提供することを奨励される。我々は持続可能な開発のための2030アジェンダの実施へのコミットメントを再確認する。

11

我々は、貧困層への支援の必要性を認識しつつ、中期的に、無駄な消費を助長する非効率な化石燃料補助金を合理化し、及び段階的に廃止するという我々のコミットメントを再確認する。
さらに、我々は全てのG20参加国に、無駄な消費を助長する非効率な化石燃料補助金に対する、自発的な各国間のレビューへの参加を検討するよう奨励する。

麻生大臣、黒田総裁共同記者会見の概要

平成28年2月27日(土曜日)

冒頭発言

麻生大臣

今回のG20では、世界経済について、金融市場の変動と不確実性の高まりに対応して、各国の政策課題への取組をどのように打ち出していくか、といった点を中心に議論を行いました。私からは、コミュニケに沿って、重要な合意内容を御紹介させていただければと思います。

まず、「最近の市場の変動の規模は、その根底にある世界経済の現在のファンダメンタルズを反映したものではないと判断している」との認識で一致しております。「多くの先進国では、経済活動の緩やかな拡大が続き、主要な新興国の成長は引き続き強いと予想される」との認識も盛り込まれました。

その上で、世界経済の強固で持続可能かつ均衡のある成長を実現するため、金融、財政、構造政策の全ての政策手段を、個別にそして総合的に用いることに合意しました。

為替の関係については、「為替市場における過度な変動や無秩序な動きは経済及び金融の安定に対して悪影響を与え得る」と明記されております。これは、為替レートの安定が重要という認識を示したものです。

また、政策に関する不確実性を軽減し、負の波及効果を最小化し、透明性を向上させるために、マクロ経済及び構造問題に関する我々の政策行動を注意深く測定し、明確にコミュニケーションを行うことでも一致しました。

全体を通じて、世界経済を巡る市場の懸念をしっかり受け止めつつも、世界経済のファンダメンタルズは市場の変動が示唆するよりも良好であること、下方リスクが顕在化した場合はG20各国がこれに対処する意思と能力を持ち合わせていることを明確にしよう、というのがG20の共通認識であったと思います。

2日目の討議ですが、本日行われたセッションについては、私の発言内容について御紹介します。

投資とインフラについては、日本が推進している「質の高いインフラ・パートナーシップ」に関連して、「質の高いインフラ投資」の重要性を改めて指摘するとともに、引き続き世界銀行等の国際開発金融機関(MDBs)においても、インフラの質に着目した投資を進めていくことが重要であると申し上げました。

国際金融アーキテクチャについては、資本フローに対処する政策手段と枠組みの活用の有効性について、G20の作業部会で検討することを改めて促しました。

金融規制については、これまでに合意された規制改革の実施が重要であるということを確認しました。私からは、規制に対する市場の懸念を払拭するために、これまでの規制の複合的な影響を評価すべきと主張しました。また、今後、銀行への資本賦課の全体水準を大きく引き上げることは意図していないことを明確化すべきと申し上げ、その旨コミュニケに反映されております。

国際課税については、実施段階に移ったBEPSプロジェクトについて、OECDから報告された合意実施のための枠組みの立上げを歓迎し、同枠組みへ途上国が参加するよう働きかけていくことの重要性について指摘しました。

質疑応答

今回、あらゆる措置をとるということを示されたわけなのですけれども、これを受けて、日本政府としてはどういう政策をとっていくのか考えをお聞かせください。

麻生大臣

安倍内閣においては、機動的な財政政策を含む「三本の矢」による経済成長と財政健全化を同時に進めているのは御存じのとおりです。これはもともとどちらかという話だったのですが、我々は両方やるということを申し上げており、これは一見、二律背反するような政策に見えますが、そういったところを我々としては同時に進めてきたことによって、これまで御存じのように景気は回復し、税収は伸び、そして国債の新規発行は10兆円くらい減っています。実際、そういったことをやってきています。

2016年度においても、過去最大規模の当初予算、96.7兆円を予定していますけれども、2016年度予算を国会で審議中ですから、まずはこれをきっちり上げないといけないわけです。2015年度補正予算を迅速かつ着実に実施するとともに、現在審議中である2016年度の予算を早期成立することが景気対策に一番だと、まずはこれだと思っております。

総裁は日銀のマイナス金利政策を説明したと思いますが、それについての懸念を示す国もあるようで、先ほどのオランダの財務大臣とユーログループの議長を務めるダイゼルブルームのコメントでは、「正直に言うと、日本についての議論はあった。1つの国が通貨安政策を始めると他国が追随し、通貨安競争に突入するリスクはとても大きい」といっています。総裁はどのように説明され、それがどのように受け止められたと思いますか。この政策が通貨安競争をもたらす可能性があると発言した国はあるのでしょうか。

黒田総裁

まず、G20では、従来から「通貨の競争的な切り下げを回避し、あらゆる形態の保護主義に対抗する」との考え方が共有されており、この点は、今回のコミュニケにおいても明確に示されています。日本銀行の「量的・質的金融緩和」は、従来から2%の「物価安定の目標」の早期実現を目的としたものでありまして、そのために必要があれば追加的な政策対応を行うという考え方は、これまでのG20において十分に理解されていると思います。

今回のG20では、私から「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」について、あくまでも「物価安定の目標」の早期実現のために、「量的・質的金融緩和」を強化し、実質金利を一段と低下させることを狙ったものであること、そして、既に国債のイールドカーブは大幅に低下しており、金融機関の貸出金利も低下するなど、金利面では政策効果は現れていること、などの説明をしました。こうした説明に対しては、参加国の十分な理解が得られたものと考えています。

債務の国と債権の国が集まっているパリクラブ[2]に中国と韓国を含める可能性があるという話があるのですが、それについてどう思いますか。その事実確認と大臣の意見をお願いします。

麻生大臣

中国と韓国がパリクラブにという話は、入るという意思なりが示されるのは大いに歓迎すべきことなのだと思います。債権国の会議ですから良いことだと思いますが、だからと言って条件を引き下げるのではなくて、今の条件のままというのが基本的なところだと思います。

[2] パリクラブとは

主要債権国会議とも呼ばれ、フランス財務省で月に一回開催される、主要な債権国が債務国との二国間のリスケジュールの協議を行う非公式会合

OECD加盟のうち、下記の19ヶ国及びロシアが恒久メンバー。

アジア 日本
米州 米国、カナダ
欧州 フランス、ドイツ、オーストリア、ベルギー、デンマーク、スペイン、フィンランド、
アイルランド、イタリア、スイス、ノルウェー、オランダ、英国、スウェーデン
豪州 オーストラリア
中東 イスラエル

また、対象となる債務国に対し公的債権を有している債権国が参加することは可能であり、韓国、ブラジル、トルコ、サウジアラビア、南アフリカ等が対象債務国によって、恒久メンバーと債務国の了解を得て随時パリクラブ会合に出席している。

この他にも、IMF、世界銀行、地域開発銀行、UNCTAD、OECD等がオブザーバーとして参加。

参考文献:独立行政法人日本貿易保険HP

今回のG20はかなり世界的にも注目が集まっていたと思うのですが、今回の会議の全般的な成果を大臣はどう考えるのかということと、構造改革の表現が少し、一歩前進したようなところがあると思うのですけれども、指標を含めて監視を続けていくとありますが、この実効性についてはどういうふうにお考えでしょうか。

麻生大臣

先ほど申し上げましたように、日本として主張し、こだわったところのほとんどは最終的にコミュニケに取り入れられておりますので、少なくとも最初に申し上げましたように、今回のG20において、市場が悲観的になりすぎているということに関して、その必要はなく、実際の経済のファンダメンタルズは極めて良好であり、新興国も同様というところです。

もし何かあった時は対応する、G20みんなでやる、きっちりやるということが確認されたということがコミュニケに盛り込まれたということは良いことだと思っております。構造改革の実効性については、主に中国の方からの話がよく出てきていましたけれども、きちんと実行していくと明確に態度で出てきたように見受けましたし、そういった意味では、構造改革というものにきちんと取り組んでいくということなのだと思います。

構造改革をやるにあたっては、急激にやるとまたマイナスの面が出てくる可能性がありますので、こういったものはゆっくり確実に構造改革をしていく、GDPの伸びにこだわるより、国内の消費の比率が高くなってきています。この消費がGDPに占める率は、最近間違いなく中国は高くなってきていますから。そういったものは引き続き、そういった方向で消費主導になっていくというのは歓迎すべきものだと思っていますし、事実そういった方向で動かそうという意思があるのは確かであるというふうに見受けられました。

マイナス金利政策について、参加国の理解が十分に得られたとおっしゃっていましたが、特に異論や意見はなかったのでしょうか。総裁が参加国の理解を得られたと思われた根拠はなんでしょうか。

黒田総裁

異論や意見は全くありませんでした

根拠は、先ほど申し上げた説明に対して、反論や意見がなかったことです。そもそも全体の議論が、コミュニケにも出ていますように、経済のファンダメンタルズはしっかりしているけれども、市場がかなり不安定な動きをしていました。そういうものに対して政策当局としてしっかりとしたコミュニケーションを行い、必要に応じて、金融政策、財政政策、構造改革を、個別あるいは総合的に援用していくという姿勢をきっちりと示したということで、そういう方向での議論が中心だったと思います。

その意味でコミュニケが全体の議論とその方向や結論を正確に示していると思いました。

今日のコミュニケで為替レートについて、2つ再確認するという文言が並んでいます。私は今朝、早起きをしました。麻生大臣も会議よりずっと早くに起きられて御出発され、その後シャングリラホテルでは主要国の面々の方々も早起きされたのを知りました。映像で再確認しました。これは何を示すのかと思い、普段ですと財務大臣にG7があったのですか、とお尋ねした場合は、いつもあったとも無いとも言えない、というお答えが来るのは分かっております。

ただ、今年日本はG7の議長国ですので、こうした為替レートの変動に対して、G7の議長がG20の開催期間中にG7としてメッセージを出すことは適当か適当でないかという御判断は、議長国に委ねられていることもあるかと思います。その面から、今回議長国として、麻生大臣はどのような判断があったのでしょうか。

麻生大臣

今回のような各国の政策当局者が集まるというような国際会議の場では、時間の許す限り多くの人達と意見交換を行うように努めているので、そうした中で映像が捉えられたものと思います。意見交換は食事の機会とか、パーティーや休憩の際の立ち話とかいろいろ例がいっぱいありますので、また内容も非常に様々ですから、そういった意味でひとつひとつにコメントするのは適切でないとそう思っております。

出典:財務省

「Gゼロ」後の世界―主導国なき時代の勝者はだれか

アメリカ主導の体制が終わったいま、次に訪れるのは、米中のG2体制か、第二の冷戦の勃発か。そのとき日本は―。気鋭の政治学者が、ポストGゼロ時代の展開を予測する。

イアン・ブレマー 『自由市場の終焉』をはじめ、本書のほかに7冊の著作があり、いずれも高く評価されている。また政府首脳 (民主・共和両党の大統領候補者、ロシアのキリエンコ元首相、安倍晋三元首相など) にも助言を行ってきた。

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