【G7・伊勢志摩サミット】伊勢志摩首脳宣言(骨子)
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三重県志摩市の賢島で、26日に開幕したG7「伊勢志摩サミット」は、27日の閉幕に先だって、討議の成果などを盛り込んだ「G7伊勢志摩首脳宣言」を発表しました。以下、その骨子です。
G7伊勢志摩首脳宣言(骨子)
1 前文
2016年5月26日及び27日に伊勢志摩でG7首脳会合を開催。世界的な成長は,低成長のリスクが残る中,依然として緩やかであり,かつ,潜在成長力を下回っている。
暴力的過激主義,テロ攻撃その他の課題は,既存のルールに基づく国際秩序並びに全人類に共通する価値及び原則への深刻な脅威。G7は,国際的な取組を主導する特別な責任を有する。
また,自由,民主主義,法の支配及び人権の尊重を含む共通の価値及び原則によって導かれるグループとして引き続き結束。世界の平和,安全及び繁栄を確保するための主要な課題の解決に向けた道筋を我々の行動を通じて明示。
2 G7伊勢志摩経済イニシアティブ
強固で,持続可能な,かつ,均衡ある成長に貢献するため,世界経済,移民及び難民,貿易,インフラ,保健,女性,サイバー,腐敗対策,気候,エネルギーの分野でのコミットメントを発展。
3 世界経済
(1)世界経済
<世界経済の状況>
世界経済の回復は継続しているが,成長は引き続き緩やかでばらつきがある。また,前回の会合以降,世界経済の見通しに対する下方リスクが高まってきている。
我々は,新たな危機に陥ることを回避するため,経済の強靭性を強化してきているところ,この目的のため適時に全ての政策対応を行うことにより現在の経済状況に対応するための努力を強化することにコミット。
<政策的対応>
各国の状況に配慮しつつ,強固で,持続可能な,かつ,均衡ある成長経路を迅速に達成するため,我々の経済政策による対応を協力して強化すること及びより強力な,かつ,均衡ある政策の組合せを用いることにコミット。
債務を持続可能な道筋に乗せていくための取組を継続しつつ,世界的な需要を強化し,供給側の制約に対処するため,全ての政策手段-金融,財政及び構造政策-を個別にまた総合的に用いることにコミット。
3本の矢のアプローチ,すなわち相互補完的な財政,金融及び構造政策の重要な役割を再確認。
財政戦略を機動的に実施し,及び構造政策を果断に進めることに関し,G7が協力して取組を強化することの重要性について合意。
過剰な生産能力は,世界的な影響を有する構造的な課題。
為替レートの過度な変動や無秩序な動きは経済及び金融の安定に対し悪影響を与え得る。
(2)金融規制改革
G20金融セクター改革の課題の適時,完全かつ整合的な実施を支持。
(3)税と透明性
BEPSパッケージの着実な,一貫性のある足並みのそろった実施は極めて重要。全ての関連・関心のある国・地域がBEPSパッケージ実施にコミットし,新たな包摂的な枠組みに参加することを奨励する。
実質的所有者情報の透明性の改善は,腐敗,脱税,テロ資金供与及び資金洗浄防止のために極めて重要。透明性に関する国際基準の全ての国・地域による実施を求める。
(4)貿易
貿易及び投資は,成長,繁栄,持続可能な開発達成の主要な原動力。あらゆる形態の保護主義と闘うとのコミットメントを再確認。
過剰生産能力が経済,貿易及び労働者に与える負の影響を認識。市場機能の向上及び調整を通じてこの問題に迅速に対応することにコミット。
環境物品に関する協定(EGA)の本年9月のG20杭州サミットまでの妥結を目指す。
各TPP署名国に対し,国内手続を完了することを奨励。2016年のできる限り早期に日EU・EPAの大筋合意に達することに向けた,日本とEUの強固なコミットメントを歓迎。
(5)質の高いインフラ
質の高いインフラ投資の推進のため,「質の高いインフラ投資の推進のためのG7伊勢志摩原則」に沿ったインフラ投資を実施するよう努力。ステークホルダーにも同原則に沿った投資及び支援を奨励。
(6)保健
「国際保健のためのG7伊勢志摩ビジョン」に基づき行動することにコミット。公衆衛生上の緊急事態への対応強化のための国際保健の枠組み強化。
強固な保健システム及び危機へのより良い備えを有したUHC達成に向けた取組を促進。
このため途上国の保健システム強化支援や母子保健からアクティブ・エイジング(活動的な高齢化)までライフ・コースを通じた保健サービスを確保。
薬剤耐性(AMR)への対応強化。企業にインセンティブを与える取組等を提唱。
(7)女性
質の高い教育や訓練等を通じた女性の能力開花を支援。そのための「G7行動指針」を採択。「女性の理系キャリア促進のためのG7イニシアティブ(WINDS)」を立ち上げ。
女性に対するあらゆる形態の暴力への対応強化にコミット。国連決議に基づく「国別行動計画」の策定を支援するとともに平和・安全保障分野における女性の活躍を推進。
(8)サイバー
開かれた,相互運用可能な,信頼できる,かつ,安全なサイバー空間を支持。「サイバーに関するG7の原則と行動」に合意。サイバー空間の安全及び安定促進のためG7作業部会を立ち上げ。
(9)腐敗対策
腐敗と戦う集団的及び個別的行動は,経済成長,持続可能な開発並びに平和及び安全の維持にとり決定的に重要。「腐敗と戦うためのG7の行動」に合意。
4 政治外交
(1)テロ・暴力的過激主義
テロ対策に関し,国際社会において主導的役割を発揮。寛容の精神や対話を促進する。
テロ対策における各国の能力構築を支援。「G7テロ・暴力的過激主義対策行動計画」に合意。
(2)難民
難民の人道上の影響及びその根本原因に対処することが最優先事項。影響を受けた地域の社会経済発展を後押し。難民ホスト国を支援。移民の密入国や人身取引等との闘いを継続。
(3)中東
ジュネーブ合意に基づくシリアの政権移行を呼びかけ。安定・復興への支援にコミット。
イラクの改革と国民和解を支援。G7は,36億ドル以上の二国間の支援及び他の金融支援を結集。ISILから解放された地域の安定化支援を呼びかけ。イランの核合意の履行を歓迎。イランに対し,地域における建設的な役割を呼びかけ。アフガニスタン,リビア及びイエメン等の平和と安定に向けた取組等にコミット。
(4)北朝鮮
北朝鮮による1月の核実験及び弾道ミサイル技術を用いた発射を最も強い表現で非難。
北朝鮮に対し,安保理決議及び六者会合共同声明を遵守し,今後核実験,発射その他の挑発行動を行わないことを要求。拉致問題を含む国際社会の懸念に直ちに対応するよう強く求める。
(5)ウクライナ・ロシア
ロシアのクリミア併合を非難。ミンスク合意の完全な履行を強く支持。露のミンスク合意履行と対露制裁は明確に関連。露との対話の重要性を認識。ウクライナの改革を支
持。
(6)海洋安全保障
国際法に基づいて主張を行うこと,力や威圧を用いないこと,紛争解決には,仲裁手続を含む司法手続によるものを含む平和的手段を追求すべきことの重要性を再確認。東シナ海・南シナ海の状況を懸念し,「海洋安全保障に関するG7外相声明」を支持。
(7)軍縮・不拡散
核兵器のない世界に向けた環境を醸成するとのコミットメントを再確認。「広島宣言」を支持。
(8)国連安保理改革
国連を強化し,より効果的・効率的にすることの重要性・必要性を再確認し,安保理改革を含む国連改革の重要性に留意。
5 気候変動・エネルギー・環境
(1)気候変動
G7は,引き続き,指導的な役割を担い,パリ協定の2016年中の発効という目標に向けて取り組みつつ,可能な限り早期の協定の締結に必要な措置をとることにコミット。全ての締約国に,同様の対応を求める。
主要排出国を含む全ての国によるパリ協定の,効果的な,かつ,透明性のある実施のための詳細ルールについて合意するため建設的に関与することを奨励。官民双方からより多くの気候基金を提供し,動員するための努力を継続するとともに,G7以外の国にも資金の提供を奨励。
(2)エネルギー
質の高いインフラ及び上流開発への投資持続を奨励。クリーンでエネルギー効率の高い製品,設備等への投資にコミット。透明性及び柔軟性がある,良く機能する天然ガス市場を強化する取組を継続。
福島原発の廃炉及び汚染水対策に関する着実な進展を歓迎。原子力の利用に関し,安全性,セキュリティ及び不拡散において世界最高レベルの水準を確保し,知見や経験を共有することを求める。
(3)資源効率・3R
「富山物質循環フレームワーク」を支持。海洋ゴミ対処のコミットメントを再確認。
6 開発
2030アジェンダの採択は,貧困削減及び持続可能な開発へのアプローチにおける新時代の幕開け。2030アジェンダの実施を,人間中心の,かつ,地球に配慮した形で,国内的及び国際的に進めることにコミット。
アフリカにおける課題に対処することが,SDGsの実現のための中心となることを確認。
初のアフリカ開催となるTICADⅥが,世界の理念をアフリカのための行動に移す重要な節目となることを確認。
7 結語
イタリア議長の下,2017年に会合することを楽しみにしている。
(了)
出典:外務省、首相官邸