日銀が簡単に説明する「5分で読めるマイナス金利」
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日本銀行が、マイナス金利について説明しています。
基礎からよく分からない人でも理解できる非常に易しいものです。少し結論ありきな流れに見えるところもありますが、間違った批判へのアンチテーゼになり得る内容だと思います。
現に、そうした批判の中に明確な間違いがあったことが、以下の説明で分かりました。
不安を煽れば人々は食いつくし商売にもなるんですが、批判のための批判ではなく本当のところが知りたい。
経済の専門家としてメディアに登場するのはどうしても金融系の方が多くなりますが、そうした方は当然マイナス金利に批判的なスタンスである場合が多いと思います。銀行は日銀や国債にカネを寝かせておけば楽に儲けることができた一面があるのではないでしょうか。
マイナス金利。金融関係者から弊害とかの批判が出ているようだが、クソコメントだな。国債や日銀当座預金で運用して儲けているいる金融機関がおかしい。貸出してなんぼだろ。マイナス金利はそうしたぬるま湯体質の金融機関をしばくもの。これに文句をいう金融機関は逝ってよし
— 高橋洋一(嘉悦大) (@YoichiTakahashi) February 3, 2016
わたしたちは誰が何を発言し、その根拠に何があるのかを見極めなければならないと思うのと同時に、専門家の方々には、冷静な分析に基づいた客観的な解説をして欲しいと願っています。
5分で読めるマイナス金利
「日銀がマイナス金利にしたって本当?」
「日銀は、3年前から大規模な金融緩和をやってきました。『量的・質的金融緩和』とか『異次元緩和』と呼ばれています。これをもっと強力にするため、1月にマイナス金利もはじめました。」
「マイナス金利になると、私が銀行に預金しているお金も減ってしまうの?」
「マイナス金利といっても、銀行が日銀に預けているお金の一部をマイナスにするだけ。個人の預金は別の話です。」
「個人の預金金利はマイナスにはならない?」
「ヨーロッパでは日銀よりも大きなマイナス金利にしていますが、個人預金の金利はマイナスにはなっていません。」
「マイナスにはならなくても少しは下がるでしょう?」
「普通預金金利は0.02%だったのが、0.001%になりました。」
「それで消費が悪くなったりしない?」
「100万円預けて1年間の利息が200円だったのが10円になったということです。消費を悪くするほどの規模ではありませんよね。」
「もともと200円しかもらえなかったんだ。それがひどいんじゃない?」
「そのとおりですね。100万円預けた時の利息が1000円未満になったのは1999年。もう15年以上、預金金利はとても低くなっています。でもそれは『デフレ』だったからで・・・」
「デフレって何?」
「物価が毎年のように下がることです。日本は15年間もデフレでした。」
「物価が下がって何が悪いの?」
「デフレで物価が上がらないということは、会社の売上げも増えないので、給料も上がりませんでした。日銀が『異次元緩和』をやってきたこの3年間で、会社はかなり儲かるようになって、春のベースアップ(給料アップ)も復活しました。デフレでなくなれば、給料も毎年上がるようになります。」
「デフレだと金利も低くなるの?」
「デフレや不況のときに金利を上げてしまうと、もっと景気が悪くなって、給料や物価はもっと下がってしまいます。日本ではデフレの間も失業者が大量にでることはありませんでした。何とかやってこれたのは、金利を低くしていたからです。」
「金利を上げた方がみんな利息でお金を使うのに・・・」
「みなさんの家の収入の大部分は給料ですよね。金利を上げて利息収入を増やしても、それで景気が悪くなって、給料が下がったり、職を失っては何もなりません。」
「じゃあどうしたらいいの?」
「デフレから完全に抜け出すしかありません。そのために、今はがまんして金利を低くして、もっと景気を良くして、物価をもう少しだけ上げていくということです。」
「でも異次元の緩和とかマイナス金利までしなくても・・・」
「15年もデフレが続いたので、みんなそれが当たり前になってしまいました。それを変えるには、思い切った手を使わないとだめです。」
「マイナス金利ってそんなに効果あるの?」
「マイナス金利にしたあと、住宅ローンの金利は下がって、10年固定で借りても1%以下になっています。銀行のローンセンターは大忙しだそうです。会社が借りるときの金利も下がっています。みなさんが家を建てようとしたり、会社が工場やお店を建てたりするときは有利になります。」
「そうすると銀行が損しない?大丈夫?」
「たしかに銀行にとっては、預金金利はマイナスにならないのに、貸出金利は下がるので、その分儲けは少なくなります。」
「でも大丈夫です。日本の金融機関は、リーマンショックでも傷ついていないし、とても健全です。去年もたくさん収益を上げています。日銀の預金でもマイナス金利にするのは一部だけにして、あまり銀行が困らないようにしました。」
「本当にそれでデフレから抜け出せるの?」
「みなさん忘れているかもしれませんが、3年前まで物価はマイナスでした。今は、ガソリンのように世界中で下がっているものを除くと、物価は1%以上上がっています。『もうデフレには戻らない』というところまで、あと少しです。この3年間、『異次元緩和』は、たしかに効きました。それをもっと強力にするということです。かならずデフレから抜け出せます。」
「もう1%も物価が上がっているなら、十分でしょう。」
「景気はいい時も悪い時もあるから、ある程度バッファーがないとすぐにデフレになってしまいます。飛行機だって地上ぎりぎりは飛べないでしょう。だから、日本銀行は2%の緩やかな物価上昇を目指しています。この2%というのは、アメリカもヨーロッパも同じで、世界共通です。」
「デフレを脱却すれば預金の利息も増える?」
「デフレから完全に抜け出せば、景気も良くなって、日本経済はもっと元気になります。そうすれば、預金金利も上がります。銀行にとっても、貸出金利を上げても大丈夫になります。これはみんなのためなのです。」
「話を聞くとわかったような気もするけれど、『マイナス金利』と聞いて不安になってしまったんだよね。」
「『マイナス』という言葉の響きも悪かったかもしれません。それと、今、世界中で金融市場が不安定になっていて、『ニューヨークで株価が下がった』とか『中国から資金が逃げてる』とか、心配なニュースが多い。このイメージと重なったのもあるでしょう。」
「でも、日本の会社は、全体でみると、史上最高の収益になっていて、経済は良い方向に向かっています。それに、この政策はとても強力です。いずれ『プラス』の効果がはっきり出てきて、明るくなってくると思います。」
出典:日本銀行