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【北方領土問題・プーチン来日】プーチン2島返還道筋に言及、日露共同記者会見<全文>

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安倍総理は12月16日、総理大臣官邸でプーチン大統領と首脳会談等を行いました。

この記事の始めの更新では「日本にもメリットはある!」と書いたのですが、強がって自分の気持ちに嘘ついてました。ごめんなさい。
まだ頭も心も整理できませんので、自分の意見は削除して事実だけをご紹介します。

いま夜中の1時過ぎ。明日のために寝なくちゃと思うけど、眠れそうにない・・・。

意見を言う前に、まず自分の豆腐メンタル鍛えなきゃ。

日露首脳共同記者会見ポイント

共同経済活動

北方四島の「共同経済活動」実現に向けた協議を開始する。
合意や実施に関し、両国の立場を害するものではない。
プーチンが記者の質問に対し「北方領土での協力が今後の平和条約交渉を促進する。平和条約が最も大切」と発言し、2島返還の道筋にも言及。

元島民の自由往来

人道上、追加的な一時通過点の設置や手続きの簡素化を含む策を迅速に検討。

ざっくりとした1日の流れ

儀じょう隊による儀じょうに続き、

会談(ワーキングランチ)を行い、

総理大臣公邸で文書交換式及び共同記者会見を行いました。

続いて、都内で開催された日露ビジネス対話に出席しスピーチを行った後、

講道館を訪問しました。

画像出典:首相官邸

日露共同記者会見

安倍総理冒頭発言<全文>

プーチン大統領、ウラジーミル。ようこそ、日本へ。日本国民を代表して君を歓迎したいと思います。

私が2013年にモスクワを訪れたとき、できるだけ頻繁に会談を重ねようと君と約束をしました。それから今回の訪日が実現するまで3年間かかりましたが、私のふるさとにお招きをし、落ちついた環境の下でたっぷり時間をかけて話し合うことができ、待ち続けたかいがあったと思っています。

私たちの話合いの進展を70年以上もの長きにわたり待ち続けている人たちがいます。かつて択捉島、国後島、色丹島、そして歯舞諸島に住んでいた元島民の皆さんです。その代表の方々から今週、直接お話を伺う機会を得ました。

元島民の皆さんの平均年齢は既に81歳を超えています。「もう時間がない」。そう語る元島民の皆さんの痛切な思いが胸に突き刺さりました。

島では、終戦直後、つらい出来事もありましたが、日本人とロシアの人々は言葉の壁を越え、共に助け合い、友情を育み、共に暮らしていたそうです。離れ離れになってからも、様々な制約の中で元島民の皆さんと島に住むロシアの人々が交流を深めてきた事実も伺いました。

「最初は恨んでいたが、今は一緒に住むことができると思っている」。

そう語り、北方四島を日本人とロシア人の「友好と共存の島」にしたいという元島民の皆さんの訴えに、私は強く胸を打たれました。
相当高年齢になられた元島民の皆さんが、自由に墓参りをし、かつてのふるさとを訪れることができるようにしてほしい。この切実な願いをかなえるため、今回の首脳会談では、人道上の理由に立脚して、あり得べき案を迅速に検討することで合意しました。

そして、戦後71年を経てもなお、日本とロシアの間には平和条約がない。この異常な状態に私たちの世代で、私たちの手で終止符を打たなければならない。その強い決意を、私とウラジーミルは確認し、そのことを声明の中に明記しました。

領土問題について、私はこれまでの日本の立場の正しさを確信しています。ウラジーミルもロシアの立場の正しさを確信しているに違いないと思います。
しかし、互いにそれぞれの正義を何度主張し合っても、このままではこの問題を解決することはできません。次の世代の若者たちに日本とロシアの新たな時代を切り拓くため、共に努力を積み重ねなければなりません。

過去にばかりとらわれるのではなく、日本人とロシア人が共存し、互いにウィン・ウィンの関係を築くことができる。北方四島の未来像を描き、その中から解決策を探し出すという未来志向の発想が必要です。

この「新たなアプローチ」に基づき、今回、四島において共同経済活動を行うための「特別な制度」について、交渉を開始することで合意しました。
この共同経済活動は、日露両国の平和条約問題に関する立場を害さないという共通認識の下に進められるものであり、この「特別な制度」は、日露両国の間にのみ創設されるものです。

これは平和条約の締結に向けた重要な一歩であります。この認識でもウラジーミルと私は完全に一致しました。
そして、私たちは平和条約問題を解決をする。その真摯な決意を長門の地で示すことができました。
過去70年以上にわたり解決できなかった平和条約の締結は、容易なことではありません。

今、島々には一人の日本人も暮らしていません。たくさんのロシアの人々が暮らし、70年もの時が経ちました。他方、70年もの時を重ねたことで、恩讐を超えて元島民の皆さんと島に住むロシアの人々との交流や理解が進んでいるという事実もあります。

日露両国民の相互の信頼なくして、日露双方が受入れ可能な解決策を見つけ出し、平和条約締結というゴールにたどり着くことはできません。

本日、8項目の経済協力プランに関連し、たくさんの日露の協力プロジェクトが合意されました。日本とロシアの経済関係を更に深めていくことは、双方に大きな大きな利益をもたらし、相互の信頼醸成に寄与するものと確信しています。

私とプーチン大統領は、この後、講道館へと足を運びますが、講道館柔道の創始者である嘉納治五郎師範の言葉を借りるならば、正に「自他共栄」の精神こそが必要です。

ウラジーミル、今回の君と私との合意を「出発点」に、「自他共栄」の新たな日露関係を、本日ここから共に築いていこうではありませんか。
ありがとうございました。私からは以上です。

出典:首相官邸

プーチン大統領冒頭発言<全文>

尊敬する総理閣下、ご列席の皆さま、まず感謝の念をお伝えしたいと思います。温かいお迎え、ホスピタリティ、プログラムは非常に充実しておりまして、きのうは安倍首相の故郷である(山口県)長門市で、私たちは、非常に友好な環境の中で、露日関係の協力のキーとなる部分について、また喫緊の国際、地域問題について、話をすることができました。非常にすばらしい場所であり、あなたの故郷を訪れる機会を与えてくれて、本当に感謝しております。今朝も美しい場所を訪れることができ、非常にうれしく思っていますし、住民の皆さまにも温かいポスピタリティに感謝したいと思います。

きょう私たちは、双方の実業界、また政府関係者の参加のもと、詳細に貿易投資関係についてお話をさせていただきました。ビジネス対話が行われ、そして省庁間、実業界間の覚書が調印されました。

今、それをごらんいただいたと思いますけれども、新しい税制、貿易労働における制度が始められます。日本は地域における日本は隣国であります。最近、政治的対話は非常に活発化しておりまして、今年は4回目です。また議会間の交流、そしてさまざまな外務省など省庁間の関係も活発化しております。この2国間関係を真のパートナーシップに進めていき、経済的な交流を強めてきました。

省庁間のミッションによりまして、数十もの非常に多くのプロジェクトが協議されています。それは農業、イノベーション、人道的、すべての分野を網羅しています。

今後、将来性があると考えられるのは、新しい投資フォーラムが創設されるということです。

また、戦略的な分野としては、露日間の資源における交流ですけれど、日本の液化ガスの消費量の8%をロシアが供給しています。

日本とロシアの間は今後も技術における相互関係を構築していくつもりです。健康、医療の分野でも協業が計画されており、心臓血管系のセンターがモスクワに作られたり、ウラジオストクにおきましても医療センターの建設が計画されています。

農業では、ロシアは非常に大きなポテンシャルを持っていますが、日本に対する農作物の輸出の拡大を考えています。また、極東発展における日本との協力、そして今後、ロシアの極東地域を、アジア太平洋地域の物流、貿易のチェーンの中に組み立てることも計画されています。

緊密なパートナーシップは、日本とロシアとの間で、文化、教育、人道的な部分でも考えられておりまして、毎年、学長間の会合が行われております。

日本におけるロシア年、ロシアにおける日本文化年も計画されています。東京では2020年にオリンピックが行われます。このイベントに向けての準備、さまざまな私たちの経験を使って協力していきたい。

また、国際的な安全保障の点においても私たちは協力することができます。グローバル、また地域間の安定と安全保障においても協力を行います。

多方面の協力が考えられます。朝鮮半島における協力、国際テロリズムとの戦い、平和条約締結についての協議もしており、(安倍)首相も非常に大きな注目を払われているが、(戦後)70年がたった。ここにおいて、ロシアと日本の戦略的な利益にリンクした方向性を見いだすのは非常に理にかなっていますし、平和条約が今ないということは過去の負の遺産だと思っています。相互の信頼を確認するための、血のにじむような仕事を行っています。この意味において、安倍首相のイニシアシブにおいて、南クリル諸島(北方領土)における共同経済活動も考えられています。このようなことを実現することで、平和条約締結に向けた信頼の醸成が行われていると思っています。

また、外務大臣の間では、日本の元島民のみなさんが、島を訪問するためのビザの簡素化を協議することになった。私は、きのう(15日に)元島民の方からの手紙を拝見させていただきました。ロシアの市民と元島民の間の非公式な相互関係が大事だと考えます。ですから、今のところ閉鎖されていた場所に関して、アクセスを確保していきたいと思うし、サハリンと北海道の住民にとっては自由な往来ができるようにしていきたい

ぜひ、安倍首相にはご都合のいいときにロシアを訪問していただきたいと考えています。東方経済フォーラム、またその他のさまざまなイベントをロシアで行うので、ぜひお越しください。

出典:産経新聞

質疑応答<プーチンへの質問抜粋>

質疑応答を聞いて、最も重要だと感じた質問をピックアップしてご紹介します。

プーチン大統領に対する阿比留氏の質問なんですが、わたしは、この内容は冒頭発言より大事なことを含んでいると思っています。

いつも当たり障りのない質問しかしない記者、あるいは日本側の視点とは思えない質問をする記者の多さに悲しい思いをしていたので、産経新聞 阿比留瑠比氏に対し、このような質問をしてくれたことに心から敬意を表します


質問

幹事社の産経新聞の阿比留と申します。

プーチン大統領にうかがう。
今回の山口、東京での会談を通じて、大統領にとって政治分野、経済分野のそれぞれの最大の成果は何であったか。
共同経済活動をどのように平和条約締結に結びつけていくのか。
平和条約締結に関しては、先日の日本メディアとのインタビューで「われわれのパートナーの柔軟性にかかわっている」とも述べた。かつては「引き分け」という表現も使った。
大統領の主張は後退しているような印象があるが、日本に柔軟性を求めるのであれば、ロシア側はどんな柔軟性を示すのか

その質問に満足に答えるためには、まずとても短く歴史の問題に触れる必要があります。

日本はまず、1855年にその島々を受け取った。プチャーチン提督がロシア政府と皇帝の合意のもとづき、これらの島々を日本の施政下に引き渡したそれまでは、ロシア側はクリル諸島はロシアの航海者によって発見されたため自国の領土と認識していました

条約を締結するためロシアはクリル諸島を日本に引き渡しました。ちょうど50年たって、日本はその島だけでは満足できないように思うようになった

1905年の日露戦争のあとに、戦争の結果としてサハリンの半分を取得しました。あの時、国境は北緯50度の線で決められたのちに日本はサハリンの北半分も獲得しました。

ちなみにポーツマス条約のおかけでその領土からロシア国民を追放する権利もありました。40年後の1945年の戦争の後にソ連はサハリンを取り戻しただけでなく南クリル諸島も手に入れることができました

昨日、非常に感動的な元島民の方々のお手紙を読ませていただきましたけれども、私たちの考えでは、このように領土をめぐる(主張を繰り返す)「歴史のピンポン」、卓球のように球をやり取りするようなことはもうやめた方がよいのではないかと思います。結局のところ最終的で、長期的な解決が日本とロシアの利益であることを理解すべきなのです。

もちろん、多くの課題ははあります。まず経済活動の問題もありますし、安全保障の問題もあります。1956(昭和31)年に、ソ連と日本はこの問題の解決に向けて歩み寄っていき、「56年宣言」(日ソ共同宣言)を調印し、批准しました。

この歴史的事実は皆さん知っていることですが、このとき、この地域に関心を持つ米国の当時のダレス国務長官が日本を脅迫したわけです。もし日本が米国の利益を損なうようなことをすれば、沖縄は完全に米国の一部となるという趣旨のことを言ったわけです。

私がなぜこのようなことをお話しするのか。私たちは地域内のすべての国家に対して敬意をもって接するべきであり、それは米国の利益に対しても同様です。これは明白なことです。

例えば、ロシアには(極東)ウラジオストクと、その北に大きな艦隊の基地があります。わが国の艦船は(その港から)太平洋に出ていく。私たちはこの面で何が起こるかということを理解しなければなりません

この点において、日米の特殊な関係と、日米安保条約がどのような立場を取るのか。私たちは分かりません

柔軟性ということについて言うならば、日本の首相および友人の皆さんには、この問題の微妙な部分、またロシア側の懸念の部分を考慮してもらいたいと思います。

私たちは「56年宣言」(日ソ共同宣言)に基礎を置く方針に戻りました。

この宣言は日本に2つの島を引き渡すという内容になっていますが、どのような形で引き渡すかは明解に定義されていません

ただし、平和条約の締結の後に島を引き渡すとなっています。

この宣言のなかには非常に多くのニュアンスや課題が存在しています。しかし、この地域に関係するすべての人々のために、私たちはプロフェッショナルとして、友好的な気持ちをもって最終目標に向けて動かなければなりません。

最初も申し上げましたが、もし安倍首相の計画が実現していけば、これらの島々はロシアと日本の「争いの種」ではなく、逆にロシアと日本を結びつける存在になりうる可能性がある。

首相からご提案いただいた項目、つまり、共同経済活動のための特別な制度をつくる、相互協力メカニズムをつくり、それを基盤にして、私たちが最終的な平和条約に向けての最終的な決定に近づくことができる形に持っていくことが大事なんです。

もし誰かが、私たち(ロシア側)が経済関係の発展だけに関心があり、平和条約の締結を二次的なものだと考えているというのであれば、それは間違いです。私たちにとって一番大事なのは平和条約の締結なのです。

なぜかと申しますと、平和条約は、歴史的な、中長期的な見通しの中で、長期的な互恵関係のための条件を生み出すからです。これはあの島での活動よりももっと重要です。

日本はロシアと緊密な関係をしなくても、存続してきたわけです。ロシアもそうです。ただし、それは正しいでしょうか。いいえ、そうではありません。

もし、私たちが力を合わせれば、私たちは両国の経済の競争力を数倍に拡張していくことができる。これが、私たちの目指すべきことです。

出典:産経新聞

ここでプーチンの話をより理解するために、これまでの北方領土をめぐる経緯をまとめておきましょう。

北方領土をめぐるこれまでの経緯

1951年
サンフランシスコ講和条約
日本、千島列島のすべての権利を放棄
1956年
日ソ共同宣言
平和条約締結
歯舞群島・色丹島の引き渡しへ
1993年
東京宣言
四島帰属問題解決
平和条約締結へ
2001年
イルクーツク声明
歯舞群島・色丹島の引き渡し
四島帰属問題解決  平和条約締結へ

と、北方領土を巡ってこのような流れがありました。

以下に、この質問をした阿比留氏が会見後に書いた記事をご紹介します。

「引き分け」より後退したのか
プーチン大統領はなぜかニコッと笑い、質問に熱弁を振るった

16日午後、首相公邸大ホールでの安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領による共同記者会見。

「大統領の平和条約締結に関する主張は、『ヒキワケ』に言及した頃より後退している印象がある。日本側に柔軟な姿勢を求めるのであれば、ロシア側はどんな柔軟性を示すのか」

私が問うと、プーチン氏はなぜかニコッと笑った後、身を乗り出すようにして北方領土の歴史を振り返り、こう熱弁を振るった。

「私たちの考えとしては、領土をめぐる“歴史のピンポン(卓球)”をやめるべきだと考えている」

「もし安倍首相の計画が実現するのであれば、島は反目のリンゴ(果実)ではなく、ロシアと日本を結びつける何かになり得る」

プーチン氏は、平和条約締結後に歯舞、色丹の2島を引き渡すとうたった1956(昭和31)年の日ソ共同宣言には一応言及したものの、やはり領土問題ではかたくなだった。日本が目指す四島返還までの道程は険しく遠そうだ。

■プーチン氏否定

ただ、それは日本側も織り込み済みの話ではある。政府高官はプーチン氏について「領土とは血で奪い、血で守るものだと考えている。中国との間で40年かけて領土を画定したのも、血で血を洗う国境紛争の末のことだ」と指摘する。

一方、日本はあくまで平和裏に問題を解決しようと試みている。相手を説得し、納得させることが至難の業であることは最初から分かっていることである。

安倍首相は問題解決への近道はないと知り、迂遠なようでも日露間での信頼関係を築き、交流を深めることから始めて一歩一歩前進する道を選んだのか。

「『もう時間がない』。そう語る(北方領土の元)島民の痛切な思いが胸に突き刺さった」

安倍首相は共同記者会見でこう述べた。確かに今回の合意で元島民が、故郷訪問が容易になれば、関係者には朗報だろう。ビザ(査証)なし交流拡大による人的交流の円滑化も、日露の相互理解につながる。

日露両国の8項目の経済協力プランの具体化や、北方領土での共同経済活動も、日本企業にとって新たなビジネスチャンスや資源確保の機会を生むことだろう。両首脳が強調するように、経済的な結びつきの強化は、将来の平和条約締結への「重要な一歩」となるかもしれない。

ただ、日露双方に「ウィン・ウィン」の状況が生まれるかどうかは今後の両国の真摯な努力にかかっている。日本はこれから安易な妥協は避けつつ、北方領土問題の解決に向けてほふく前進していくことになる。

■防衛協力は前進

そもそも安倍首相が日露関係の深化を目指すのは、北方領土問題だけを考えてのことではないはずだ。

安倍外交は、日米同盟を不動の基軸としつつ、常に膨張する中国にどう向き合い、地域の安定と平和を維持するかを念頭に置いてきた。日露関係の強化も、北方領土問題解決のためだけではなく、中国という要素を含めてみるべきだろう。

今回の一連の首脳会談でも、最初のテーマは安全保障対話であり、外務・防衛閣僚級協議(2プラス2)の再開で合意するなど防衛協力の前進がみられた。

日本は日米同盟だけに依存するのではなく、オーストラリアやインドなどと防衛協力を進めており、仮にこれにロシアが加わることになれば、東アジアの安保環境は一変する。ロシアは中国と友好関係にあるが、潜在的な不信感も根強い。

今年は5月にオバマ米大統領が被爆地・広島を訪ねて日米同盟の蜜月をアピールし、12月にはプーチン氏が来日して、今度は安倍首相が米ハワイ・真珠湾を訪ねる。こうした一連の安倍外交自体が、中国に対する強いメッセージともなっている。(阿比留瑠比)

日露ビジネス対話 安倍総理スピーチ<全文>

尊敬するプーチン大統領、そして御列席の皆様、「日露ビジネス対話」の開催に当たり御挨拶を申し上げます。
後世の人々は2016年を振り返り、日露両国の関係が飛躍的な発展の軌道に乗った一年であったと意義付けることでしょう。

私は、5月のソチ、9月のウラジオストク、11月のペルーと、プーチン大統領と首脳会談を重ね、深い信頼関係を築いてきました。政治、経済、文化等、幅広い分野で多くの成果が結実する中、プーチン大統領の訪日は、日露関係を新たな高みに導く歴史的な出来事といえます。

昨日は、私の地元、山口県長門市で平和条約締結問題を含め胸襟を開いた会談を行いました。本日、ここ東京で日露関係の展望について大統領と話し合えたことを大変嬉しく思います。

先日の年次教書演説でプーチン大統領は、ロシアの東方政策は、長期的国益と地域の発展傾向を見据えたものと強調されました。ロシアがアジア太平洋と共に発展していく決意を表明した。私はこのように受け止めました。

プーチン大統領、アジア太平洋はロシアに開かれています。大統領の決意に賛同し、心からロシアを歓迎いたします。ロシアの豊かな資源、高い技術、優れた人材は、地域の発展の力強いエンジンになり、ひいては地域の安定にも寄与するものと考えます。

日本も更なる繁栄の道をロシアと共に歩みたい。その思いを込めたアイデアが、ソチで私から提案した8項目の「協力プラン」にほかなりません。

この会場には、日本の経済界を代表する企業の皆さんが多数出席され、多くの方々が既にロシアとのビジネスに取り組んでいます。「協力プラン」に基づく多くのプロジェクトが、日露のビジネスの最前線で日夜進められています。

その目に見える成果として、5月のソチから半年余りという短い期間に、60件を超えるプロジェクトが結実したことは、この「協力プラン」の力強さ、日露協力の可能性の大きさを物語っているといえるでしょう。

健康寿命の伸長では、極東での外来リハビリセンター開設、子供の医療、心臓病やがんの予防等で協力していきます。ウラジオストクとヴォロネジをモデル都市として、活気あふれる生活環境と地域経済を支える都市づくりに協力していきます。

「カイゼン」というグローバルに使われている言葉が象徴するとおり、日本企業との深い付き合いは、ロシアの製造業大国への近道です。セミナー、ミッション、食関連の共同イベントの開催を通じ、中小企業協力・交流を拡大します。12社のロシアの工場の生産性診断、約100名の企業人材育成によりロシアの産業多様化に協力します。来年はパートナー国として、エカテリンブルグにおける「イノプロム」を、皆様と一緒に成功させます。

エネルギー分野では、サハリンや東シベリアで石油・天然ガスの上流開発やLNGプロジェクトが進展していきます。今後は、極東地域などで石油天然ガスの共同探査や開発を進めるとともに、LNGプロジェクトの拡張に向けた協力を行います。また、福島第一原発の廃炉に関する日露協力を行うとともに、風力発電やコジェネレーションの導入といった幅広い分野でプロジェクトを推進します。

極東では、ハバロフスク及びヤクーツクの植物工場での生産拡大、石炭積出し港の整備等、日本企業のプロジェクトが進展しています。また、原子力、ICT・郵便、農水産業といった幅広い分野で先端技術に関する協力を進め、イノベーションを起こしていきます。

人的交流の更なる活性化のために、査証緩和措置を決定し、JNTOモスクワ事務所を開設しました。将来の世代にわたる日露友好への投資として、青年交流と大学間交流を倍増し、スポーツ交流を3倍増します。

今回、租税条約改正に向けた正式交渉の開始で合意しました。今後も、日露企業の声に耳を傾け、ビジネス環境の向上に努力しながら、8項目の「協力プラン」を推進してまいります。

プーチン大統領、ロシアの企業の皆様。日本の強み、日本企業の強み。それは、どの国にあっても、地域社会への貢献を忘れず、地域と共に発展しようという姿勢であります。

木材加工に関わりつつ、アムールトラの保護に貢献した企業があれば、海鳥が暮らす極東の海域保全に取り組んだ企業もあります。ロシアの6都市で「日本センター」が「カイゼン」講座や訪日研修、ビジネスマッチングに取り組んでいます。今回、この事業を更に強化します。

現地の雇用、人材の育成、環境への配慮。このように、現地社会との調和の中で一緒に発展しようとする姿こそ、我が国の誇るべき伝統であり、単なるビジネスの関係を越えた、両国の信頼の礎にもなっていきます。

ウラジーミル。私が目指すのは、互恵の原則に基づき、日露が「共に発展していく」関係です。先日発表された年次教書の中で、君は、我が国との関係の「質的前進」に強い期待を表明しました。

全く同感です。幅広い分野で日露関係を大きく発展させ、両国国民の間に深い信頼関係を育み、強固な協力関係の下、共にアジア太平洋地域の繁栄をつくり上げ、地域の安定に貢献していきましょう。

本日の会合では、「協力プラン」のテーマに沿った8つの分科会を含め、今後の日露関係を展望する有意義な議論が行われたと承知をしております。この会合が日露経済関係の、そして日露関係の更なる発展に大きく貢献されますことを期待いたしまして、私の御挨拶とさせていただきたいと思います。
ありがとうございました。

出典:首相官邸

エネルギーと安全保障は、日本にとって非常に大きな問題です。

これまで日本は、特に原油においてそのほとんどを中東に依存し、ホルムズ海峡やマラッカ海峡を通過せざるを得ませんでした。これは、ホルムズ海峡あるいは南シナ海で危機、あるいは封鎖があれば、大変なリスクになるということです。
原油価格の面でも、日本が大震災で困っているときに足元を見られ、吊り上げられたこともありました。

また、安全保障問題にロシアが加われば、南アジアの防衛体制は大きく変化するでしょう。

北方領土問題については、言及を控えます。

【北方領土問題・プーチン来日1日目】安倍首相会見<全文>

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