【安倍首相】アジア・アフリカ会議(バンドン会議)演説 全文
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安倍晋三首相は22日午前(日本時間同日午後)、インドネシアの首都ジャカルタで始まったアジア・アフリカ会議(バンドン会議)60周年記念首脳会議で演説した。
先の大戦への反省を述べた上で、平和的手段による国際紛争解決など不戦の誓い、未来志向でアジア・アフリカの平和と繁栄に今後も貢献していく決意を表明。
菅内閣官房長官記者会見
安倍総理のインドネシア訪問について
平成27年4月17日(金)午前
安倍総理は、4月21から23日の日程で、インドネシアのジャカルタを訪問し、同地で開催をされるアジア・アフリカ会議60周年記念首脳会議に出席をする予定であります。
本件会議は、アジア・アフリカから100カ国を超える国々や国際機関が招待 されており、これら地域の平和と繁栄や協力のあり方などについて議論される機会 であります。
これまで我が国は、アジアやアフリカの発展に大きな貢献を果たしてきましたが、今後、積極的平和主義の下、より一層積極的に、アジアとアフリカの発展と繁栄に貢献していくとの決意を安倍総理から発信 をすることになります。
出典:首相官邸
安倍内閣総理大臣スピーチ
アジア・アフリカ会議(バンドン会議)60周年記念首脳会議における安倍内閣総理大臣スピーチ
平成27年4月22日
Unity in diversity ~ 共に平和と繁栄を築くバンドン会議60年の集まりを実現された、ジョコ・ウィドド大統領閣下、ならびにインドネシアの皆様に、心から、お祝いを申し上げます。
アジア・アフリカ諸国の一員として、この場に立つことを、私は、誇りに思います。【共に生きる】
共に生きる
スカルノ大統領が語った、この言葉は、60年を経た今でも、バンドンの精神として、私たちが共有するものであります。
古来、アジア・アフリカから、多くの思想や宗教が生まれ、世界へと伝播していった。多様性を認め合う、寛容の精神は、私たちが誇るべき共有財産であります。
その精神の下、戦後、日本の国際社会への復帰を後押ししてくれたのも、アジア、アフリカの友人たちでありました。この場を借りて、心から、感謝します。
60年前、そうした国々がこの地に集まり、強い結束を示したのも、歴史の必然であったかもしれません。先人たちは、「平和への願い」を共有していたからです。【共に立ち向かう】
そして今、この地に再び集った私たちは、60年前より、はるかに多くの「リスク」を共有 しています。
強い者が、弱い者を力で振り回すことは、断じてあってはなりません。バンドンの先人たちの知恵は、法の支配が、大小に関係なく、国家の尊厳を守るということでした。
卑劣なテロリズムが、世界へ蔓延しつつあります。テロリストたちに、世界のどこにも、安住の地を与えてはなりません。
感染症 や 自然災害 の前で、国境など意味を持ちません。気候変動 は、脆弱な島国を消滅リスクに晒しています。どの国も、一国だけでは解決できない課題です。共に立ち向かう
私たちは、今また、世界に向かって、強い結束を示さなければなりません。
【日本の誓い】
その中で、日本は、これからも、出来る限りの努力を惜しまないつもりです。
“侵略または侵略の脅威、武力行使によって、他国の領土保全や政治的独立を侵さない。”
“国際紛争は平和的手段によって解決する。”
バンドンで確認されたこの原則を、日本は、先の大戦の深い反省と共に、いかなる時でも守り抜く国であろう、と誓いました。
そして、この原則の下に平和と繁栄を目指すアジア・アフリカ諸国の中にあって、その先頭に立ちたい、と決意したのです。
60年前、インドの農家と共に汗を流し、農機具の使い方を伝え、スリランカの畜産者たちを悩ませる流行病と共に闘うことから、私たちはスタートしました。
そして、アジアからアフリカへ。日本が誇るものづくりの現場の知恵や職業倫理を共有してきました。エチオピアでは、「カイゼン」のトレーニングプログラムにより、生産性が大幅に向上しています。
1993年には、アフリカの首脳たちを日本に招き、互いの未来を語り合う、TICADをスタート しました。
暦はめぐり、世界の風景は一変しました。
最もダイナミックで、最も成長の息吹にあふれる大地。それこそが、アジアであり、アフリカであります。
アジア・アフリカはもはや、日本にとって「援助」の対象ではありません。「成長のパートナー」であります。
来年のTICADは、初めて、躍動感あふれるアフリカの大地で開催する予定です。人材の育成も、インフラの整備も、すべては、未来への「投資」であります。【共に豊かになる】
共に豊かになる
アジア・アフリカには、無限のフロンティアが広がっています。
オープンで、ダイナミックな市場をつくりあげ、そのフロンティアを、子や孫にまで、繁栄を約束する大地へと変えていかねばなりません。TPP、RCEP、FTAAPは、更にアフリカに向かって進んでいく。私は、そう考えます。
成長をけん引するのは、人材です。それぞれの国の多様性を活かすことは、むしろ力強いエンジンとなるはずです。日本は、女性のエンパワメントを応援します。手と手をとりあって、アジアやアフリカの意欲あふれる若者たちを、産業発展を担う人材へと育てていきます。
アジア・アフリカの成長を、一過性のものに終わらせることなく、永続的なものにしていく。その決意のもとに、日本は、これらの分野で、今後5年で35万人を対象に、技能の向上、知識習得のお手伝いをする考えです。【むすび】
私たちの国々は、政治体制も、経済発展レベルも、文化や社会の有り様も、多様です。
しかし、60年前、スカルノ大統領は、各国の代表団に、こう呼び掛けました。
私たちが結束している限り、多様性はなんらの障害にもならないはずだ、と。
私たちが共有している様々なリスクを再確認すれば、多様性のもとでも、結束することなど簡単でしょう。
直面する様々な課題を解決するために、私たち、アジア人、アフリカ人は、結束しなければなりません。
この素晴らしい多様性を大切にしながら、私たちの子や孫のために、共に、平和と繁栄を築き上げようではありませんか。ありがとうございました。
出典:首相官邸
日中首脳会談
平成27年4月23日
バンドン会議60周年行事出席のためにインドネシア・ジャカルタを訪問中の安倍総理は,4月22日(水曜日)17時(日本時間19時)頃から約25分間,習近平(しゅう・きんぺい)中国国家主席との間で日中首脳会談を行ったところ,概要は以下のとおり(日本側同席者:加藤官房副長官,長谷川総理補佐官,杉山外務審議官,伊原亜洋局長,山崎財務官他,中国側同席者:楊潔チ国務委員,王毅外交部長,丁薛祥・習近平主席弁公室主任,劉振民外交部副部長他)。
1 冒頭,習近平主席より,本日,バンドン会議60周年記念行事に共に参加する機会を利用して,安倍総理とお目にかかることになった,北京APECでの日中首脳会談は重要な意義を有するものであり,その後,両国の政府と国民の努力により,日中関係には一定の改善が見られている旨述べた。
2 これに対し,安倍総理より,習主席と再会できて嬉しい,北京での首脳会談以降,日中関係が改善しつつあることを評価したい,日中関係の発展は,両国国民の利益であり,また,「戦略的互恵関係」の推進によって地域と世界の安定と繁栄に貢献していくことは,我々の責務である,今後,青少年交流を含め,様々なレベルの対話と交流を深め,日中関係をさらに発展させるために,共に努力を重ねていきたい旨述べた。
3 続いて習近平主席より,日中関係のさらなる関係改善のために中国側が重要と考える点について説明があった。この中で歴史認識についての中国側の立場や「一帯一路」,AIIBについても言及があった。
4 これに対する安倍総理からの発言は,概要以下のとおり。
(1)北京APECの成功を祝福する。前回の首脳会談後,日中関係に様々な面で改善が見られることを改めて評価する。
(2)国民の間の相互理解こそが良好な日中関係の基礎。最近は多くの中国人が訪日しているが,青少年交流を始め,国民各層の対話・交流をさらに進めたい。
(3)一方,東シナ海では緊張状態が継続している。東シナ海を「平和・協力・友好の海」としていくことは,両国の共通の目標かつ利益。この点を改めて習主席と確認したい。防衛当局間の海空連絡メカニズムについて,早期に運用を開始したい。「2008年6月の合意」の実施に向けた協議を加速させたい。
(4)安全保障分野の対話も重要であり,約4年ぶりに日中安保対話が開催できたことを評価する。この分野の対話をさらに推進し,地域と国際社会の平和と安定にともに貢献していきたい。
(5)歴史に関しては,安倍内閣として,村山談話,小泉談話を含む歴代内閣の認識を全体として引き継いでおり,このことは何度も表明している。本日のバンドン会議記念行事におけるスピーチでも述べたとおり,日本は,先の大戦の深い反省の上に平和国家として歩んできた。この歩みは今後も変わらない。
(6)AIIBについては,アジア地域に高いインフラ需要があるとの認識は共有するが,公正なガバナンスの確保や借入国の債務持続可能性といった点について,中国側から明確に説明してほしい。「一帯一路」については,今後どのように具体化されるか注目している。
(7)今回,スカルノ大統領と周恩来総理のリーダーシップで実現したバンドン会議の記念会議においてこうして習主席と会い,有意義な対話ができた。今後もこうした機会があれば,なるべくお会いして話し合いたい。習主席とともに日中関係を発展させていきたい。
出典:外務省
アジア・アフリカ会議(バンドン会議)とは
昭和30年(1955年)4月,アジア地域を中心とする新興独立国の地位が脆弱であったことから,相互の連帯を図るため,インドネシア,インド,ビルマ(当時),パキスタン及びセイロン(当時)の主催により開催。日本を含むアジア・アフリカの29か国・地域が参加し,「バンドン10原則」を含む最終コミュニケが採択された。
平成17年(2005年)には50周年記念行事が開催され,アジア・アフリカの104か国が参加。日本からは,閣僚会議に町村外務大臣(当時),首脳会議に小泉総理(当時)が出席。首脳宣言(「新たなアジア・アフリカ戦略的パートナーシップ」)が採択された。出典:外務省