• 安倍晋三
  • 安倍晋三議員の発言や活動などまとめ

【安倍首相】施政方針演説<全文>

ページに広告が含まれる場合があります。

第190回国会における安倍内閣総理大臣施政方針演説 平成28年1月22日 政府インターネットテレビ

平成28年1月22日、安倍総理は、衆議院及び参議院の本会議で、第190回国会における施政方針演説を行いました。

印象に残ったのは最後の箇所。

ただ「反対」と唱える。政策の違いを棚上げする。それでは、国民への責任は果たせません。

経済の舵取りをどうするのか、国民の命と平和な暮らしをどのようにして守るのか。互いの政策を明らかにして、建設的な論戦を行おうではありませんか。

民主主義の土俵である選挙制度の改革、国のかたちを決める憲法改正。国民から負託を受けた、私たち国会議員は、正々堂々と議論し、逃げることなく答えを出していく。その責任を果たしていこうではありませんか。

今年も憲法改正という言葉がしっかり入っていますね。昨年も触れられていました。

また、ただ「反対」と唱えるのではなく、責任を持って正々堂々と議論し、答えを出していこう。
この発言は完全に野党に注文つけてますよね。多くの国民も全く同意でしょう。
野党はどう見ても議論しようとしていません。

 
そして少し気になったのは、韓国に対する表現。
今回は、先月の慰安婦問題日韓合意を受け「戦略的利益を共有する最も重要な隣国」という言い方になったようで。しばらくはこの表現でいくのかな。

昨年の施政方針演説では、前年の「基本的な価値や利益を共有する」を削除して「最も重要な隣国」だった。

昨年の、韓国に対する表現の変化は以下の通り。

1.施政方針演説「基本的な価値や利益を共有する」という表現を削除
2.外務省ホームページ 韓国と「基本的な価値を共有する」を削除
3.日本の外交青書、韓国と「基本的な価値を共有する」を削除

「基本的な価値」は共有していないが、「戦略的利益」は共有しているということか。どうでもいいけどおもしろい。

ちなみに、昨年11月に発表された韓国の外交白書では「韓日は価値と利害を共有する大切な隣国」と表現されている。

第百九十回国会 安倍内閣総理大臣施政方針演説

平成28年1月22日

一 はじめに

(未来へ挑戦する国会)

開国か、攘夷か。

百五十年前の日本は、その方針すら決められませんでした。終わらない議論、曖昧な結論、そして責任の回避。滅び行く徳川幕府を見て、小栗上野介は、こう嘆きました。

「一言以て 国を亡ぼすべきもの ありや、
どうかなろう と云う一言、これなり
幕府が滅亡したるは この一言なり」

国民から負託を受けた私たち国会議員は、「どうにかなる」ではいけません。自分たちの手で「どうにかする」。現実を直視し、解決策を示し、そして実行する。その大きな責任があります。

経済成長、少子高齢化、厳しさを増す安全保障環境。この国会に求められていることは、こうした懸案に真正面から「挑戦」する。答えを出すことであります。

批判だけに明け暮れ、対案を示さず、後は「どうにかなる」。そういう態度は、国民に対して誠に無責任であります。是非とも、具体的な政策をぶつけあい、建設的な議論を行おうではありませんか。

私たち自由民主党と公明党の連立与党は、決して逃げません。安定した政治基盤の下、そして、この三年間の大きな実績の上に、いかなる困難な課題にも、果敢に「挑戦」してまいります。

(世界経済の新しい成長軌道への挑戦)

世界経済の不透明感が増しています。これまで力強く成長を牽引してきた新興国経済に、弱さが見られます。

二十一世紀に入って十五年。安い労働力、緩い環境規制、「より安く」生産できる地を求め、新興国への投資が拡大しました。工業化は、人々を豊かにし、新興国に大きなマーケットを生み出しました。

しかし、経済が成長すれば、労働コストは上がる。公害も発生します。「より安く」を追い求める、デフレ型の経済成長には、自ずと限界があります。
そのリスクが顕在化する前に、世界が目指すべき、新しい成長軌道を創らねばなりません。

イノベーションによって新しい付加価値を生み出し、持続的な成長を確保する。「より安く」ではなく、「より良い」に挑戦する、イノベーション型の経済成長へと転換しなければなりません。

模倣、過酷な労働、環境への負荷。安かろう悪かろうは、世界のマーケットから一掃すべきであります。二十一世紀にふさわしい経済ルールを世界へと広げる、大いなる「挑戦」。TPPは、その最初の一歩であります。

イノベーションを次々と生み出す社会へと変革する。その鍵は多様性であります。三人寄れば文殊の知恵。多様性の中から、新たなアイデアが生まれ、イノベーションが起こる。「一億総活躍」は、そうした新しい経済社会システムを創る「挑戦」であります。

自然との共存の中で育まれた、おいしくて、安全な日本の農産物。環境と調和し、最大限の省エネを追求してきた「メイド・イン・ジャパン」の品質。日本は、古来、付加価値の高いものづくりを実践してきました。そのマインドを世界へと広げる。日本のリーダーシップが求められています。

伊勢神宮、美しい入江。日本の長い伝統や文化、豊かな自然を感じられる、伊勢志摩の地で開く五月のサミットは、その大きな舞台であります。基本的価値を共有する主要国のリーダーたちと、世界経済の未来を論じ、新しい「挑戦」を始める。そのようなサミットにする決意であります。

二 地方創生への挑戦

(TPPは大きなチャンス)

人口八億人、GDP三千兆円を超える巨大な経済圏。TPPの誕生は、我が国のGDPを十四兆円押し上げ、八十万人もの新しい雇用を生み出します。

一方で、「TPPによって農業を続けることができなくなるのではないか」。多くの農家の皆さんが不安を抱いておられます。

美しい田園風景、伝統ある故郷、助け合いの農村文化。日本が誇るこうした国柄をしっかりと守っていく。安倍内閣の決意は、決して揺らぐことはありません。

米や麦、砂糖・でん粉、牛肉・豚肉、そして乳製品。日本の農業を長らく支えてきた重要品目については、関税撤廃の例外を確保いたしました。二年半にわたる粘り強い交渉によって、国益にかなう最善の結果を得ることができました。更に、生産者の皆さんが安心して再生産に取り組むことができるよう、農業の体質強化と経営安定化のための万全の対策を講じます。

北海道・十勝の雄大な大地が育てた生乳は、現在、ソフトクリームの原料に加工され、輸出を大幅に増やしています。

「二〇二〇年までに農林水産物の輸出を一兆円に増やす」。この目標を三年前に掲げた時、「無理だ」という声が上がりました。「できない」とも言われました。

しかし、輸出額は昨年七千億円規模に達し、その結果、「過去最高」を三年連続で更新いたしました。

一兆円目標も二〇二〇年より前倒しで達成いたします。おいしくて、安全な日本の農産物にとって、TPPは、ピンチではありません。世界に売り込む大きなチャンスであります。

朝早く起き、額に汗して草を引き、精魂込めて作物をこしらえてきた、農家の皆さんの手間暇が、真っ当に評価されるようになる。それがTPPです。

農産物の地理的表示を始め、投資、労働、環境など幅広い分野で、透明で公正なルールが共有されます。日米両国が主導して、「良いものが良い」と評価される経済ルールを世界へと広げる。TPPは正に「国家百年の計」であります。

その先には、欧州とのEPA、インドや中国を含めたRCEPなど、自由で公正な経済圏を更に拡大するため、交渉を加速します。経済統合を大胆に進め、海外の活力を日本の成長へと取り込んでまいります。

(農政新時代)

この機に、農林水産業の付加価値を更に高め、農業・農村の所得倍増へ取組を加速します。

夕張メロン、あおもりカシス、神戸ビーフ。農産物のブランド化を支援します。新たな加工品の開発など六次産業化のチャレンジへの支援を強化してまいります。

意欲ある担い手への農地集約を加速します。農地集積バンクに貸し付けられた農地への固定資産税を半減する一方、耕作放棄地への課税を強化します。大規模化、大区画化を進め、国際競争力を強化してまいります。

「攻めの農政」の下、四十代以下の新規就農者が年間二万人を超え、この八年間で最も多くなりました。

「きつい仕事だが、やりがいがあります」

和歌山で出会った若手林業者の言葉です。緑の雇用事業で家族と共にIターンして十一年、地域の林業を支える人材となりました。

若者が将来に夢や希望を持てる農業へと改革する。「農政新時代」を、皆さん、共に切り拓いていこうではありませんか。

(中小・小規模事業者、中堅企業の海外展開)

TPPの下では、技術移転を強制するような不当な要求が行われることは、一切なくなります。知的財産も保護されます。高い技術力を持つ、全国津々浦々の中小・小規模事業者、中堅企業にとって、TPPは大きなチャンスです。

中小・小規模事業者、中堅企業もまた、グローバルな経営が求められる時代です。

中小企業版の「競争力強化法」を制定します。海外も視野に入れた営業活動、高度な経営管理、そのための人材育成を支援します。生産性を高める設備投資については、固定資産税を三年間半減する、大胆な減税を行います。世界にネットワークを持つJETROを中心に、企画段階から販路開拓、商談までを一貫して支援する体制を構築してまいります。

(被災地の復興)

岩手から世界へ。震災を乗り越えた奇跡の醤油は、昨年フランスへ輸出が始まりました。

漁網を編む宮城・気仙沼の伝統は、地元の女性たちによって、手編みのセーターに生まれ変わりました。福島の土湯温泉では、地熱エネルギーを利用して、新しい産品や体験ツアーを開発し、賑わいを取り戻そうとしています。

新しい産業の芽が、東北から次々と育っている。既に二十五回を数えた被災地訪問の度、地元の皆さんの復興への情熱を感じます。

来年春までに、計画の八十五%に当たる二万五千戸の災害公営住宅が完成し、高台移転も七割で工事が完了する見込みです。

この春、ほぼ全ての漁港が復旧します。来年には、全ての水産加工施設の再開を目指します。農地は八割が作付け可能となる予定です。生業の復興も本格化し、復興は新たなステージへと入ります。

今後五年間を復興・創生期間と位置付け、六兆五千億円の財源を確保し、被災地の自立につながる支援を行ってまいります。

福島では、来年春までに、帰還困難区域を除く避難指示を解除し、一人でも多くの方に故郷へと戻って頂けるよう、廃炉・汚染水対策を着実に進め、中間貯蔵施設の建設と除染を一層加速し、生活インフラの復旧に全力で取り組んでまいります。

「明るい陽射しが見えてきた」

大熊町では復興拠点計画が動き出しました。植物工場、メガソーラー。復興は、単なる復旧であってはならない。新しいものを創り出し、新しい可能性に挑戦するチャンスです。

正に「地方創生の先駆け」であります。

被災地の皆さんの故郷への思い、復興への熱意をこれからも全力で応援してまいります。

(地方の創意工夫)

地方創生の原動力。それは、地方の皆さんの「情熱」であります。

本年三月までにほぼ全ての自治体で、各地方の創生に向けた総合戦略が策定されます。自分たちの未来を、自分たちの創意工夫で切り拓く。地方の意欲的なチャレンジを、自由度の高い「地方創生交付金」によって応援します。

地方の発意による、地方のための分権改革を進めます。自治体が地方版ハローワークを設置し、住民相談や企業支援と一体となった職業紹介が行えるようにします。

アベノミクスによって、来年度の地方税収は、政権交代前から五兆円以上増加し、過去最高となりました。

この果実を全国津々浦々にお届けする。消費税率引上げ時に、地方法人税を拡充し、都市に偏りがちな税収の再分配を行うことで、過疎に直面する地方でも、財源をしっかりと確保してまいります。

企業版のふるさと納税制度をスタートします。民間の力も大いに活かしながら、ダイナミックに地方創生を進めてまいります。

安全で安心な暮らしを守るため、サイバー犯罪、サイバー攻撃への対策を強化します。高齢者を狙った悪質商法には、規制を強化し、消費者の迅速な救済を図ります。基礎ぐい工事問題については、再発防止に向け、明確なルールを創り、適切な施工が行われる体制を整備します。

先般のスキーバスの事故では、多くの未来ある若者たちの命が絶たれました。亡くなられた方々の御冥福と、負傷された方々の一日も早い回復を、心よりお祈りします。徹底して原因を究明し、悲劇を二度と繰り返さないため万全の対策を講じます。

昨年も関東・東北豪雨を始め自然災害が相次ぎました。堤防の強化対策、避難訓練の実施、的確な防災情報の提供など、事前防災・減災対策に徹底して取り組み、国土強靱化を進めてまいります。

(観光立国)

リニア中央新幹線が本格着工しました。東京と大阪を一時間で結ぶ夢の超特急。最先端技術の結晶です。

三月に北海道新幹線が開業します。札幌へと工事を続けます。九州新幹線も着実に長崎へとつなげてまいります。東京から富山、金沢を貫く北陸新幹線も、敦賀へと延伸することで、大阪へとつながる回廊が生まれます。

大阪や東京が大きなハブとなって、北から南まで、地方と地方をつないでいく。「地方創生回廊」を創り上げ、全国を一つの経済圏に統合することで、地方に成長のチャンスを生み出してまいります。

外国人観光客は、三年連続で過去最高を更新し、政権交代前の二倍以上、一千九百万人を超えました。二十年前、三兆円の赤字であった旅行収支は、五十五年ぶりに黒字となり、今年度は一兆円を超える黒字が見込まれます。

次は三千万人、いや、更なる高みを目指してまいります。戦略的なビザの緩和や、いわゆる「民泊」を拡大する規制改革を進めます。羽田空港の容量拡大に着手し、国内の税関や検疫、出入国管理の体制を一層拡充してまいります。

沖縄・石垣港を訪れる大型クルーズ船は、この三年で二倍近くに増えました。

町で石垣牛を食べ、お土産に黒糖を買う。周辺の島へと足を伸ばす観光客もいて島々が沸いています。二年後の供用開始に向け、新しい岸壁の整備を進めます。アジアとのハブである沖縄の成長の可能性を開花させるため、今年度を上回る予算を確保してまいります。

免税店の数は、この一年で一気に三倍、三万店に増えました。更なる手続の簡素化、免税対象金額の引下げを行い、年三兆円を上回る外国人観光客の旺盛な消費を、地方が誇るふるさと名物の拡大につなげてまいります。

豊かな自然、文化や歴史、食など、地方にはそれぞれの「オンリーワン」があります。それを付加価値へと変えることで、過疎化というマイナスの流れを、プラスへと大きく転換する。地方創生の実現に向かって、皆さん、共に挑戦しようではありませんか。

三 一億総活躍への挑戦

(多様な働き方改革)

金星への挑戦。探査機「あかつき」は、五年前、その挑戦に失敗しました。

しかし、挫けなかった。先月、再チャレンジに成功しました。その投入軌道を、二年半、数万通りに及ぶ執念の計算から導き出したのは、一人の女性研究者です。

「家族に感謝したい」

そう語る廣瀬史子さんは、この五年の間に、結婚、そして出産を経験し、育児休業を取得した後、再びプロジェクトに復帰し、成功の瞬間に立ち会いました。

女性も男性も、お年寄りも若者も、一度失敗を経験した人も、障害や難病のある人も、誰もが活躍できる社会。その多様性の中から、新たなアイデアが生まれ、イノベーションが湧き起こるはずです。

「一億総活躍」への挑戦を始めます。

最も重要な課題は、一人ひとりの事情に応じた、多様な働き方が可能な社会への変革。そして、ワーク・ライフ・バランスの確保であります。

労働時間に画一的な枠をはめる、従来の労働制度、社会の発想を大きく改めていかなければなりません。フレックスタイム制度を拡充します。専門性の高い仕事では、時間ではなく成果で評価する新しい労働制度を選択できるようにします。

時間外労働への割増賃金の引上げなどにより長時間労働を抑制します。更に、年次有給休暇を確実に取得できるようにする仕組みを創り、働き過ぎを防ぎます。

女性が活躍できる社会づくりを加速します。妊娠や出産、育児休業などを理由とする、上司や同僚による嫌がらせ、いわゆる「マタハラ」の防止措置を事業者に義務付けます。男性による育児休業を積極的に促す事業者には、新しい助成金を創設します。

障害者総合支援法を改正し、障害者の皆さんが、自立した生活を送り、職場に定着、就業を継続できるよう、きめ細かな支援を行ってまいります。

非正規雇用の皆さんの均衡待遇の確保に取り組みます。短時間労働者への被用者保険の適用を拡大します。正社員化や処遇改善を進める事業者へのキャリアアップ助成金を拡充します。契約社員でも、原則一年以上働いていれば、育児休業や介護休業を取得できるようにします。更に、本年取りまとめる「ニッポン一億総活躍プラン」では、同一労働同一賃金の実現に踏み込む考えであります。

(介護離職ゼロ)

介護で自分の人生を犠牲にされたと思わずに済むような社会にしたい。そう訴える、介護経験者の方の言葉が胸に刺さりました。

介護離職者は年間十万人を超えています。離職を機に、高齢者と現役世代が共倒れする現実もあります。日本の大黒柱、団塊ジュニア世代が大量離職すれば、経済社会は成り立ちません。

「介護離職ゼロ」という明確な目標を掲げ、現役世代の「安心」も確保する社会保障制度へと改革を進めてまいります。

在宅介護の負担を軽減します。特別養護老人ホームやサービス付き高齢者住宅など多様な介護の受け皿を、二〇二〇年代初頭までに五十万人分整備します。介護施設には、首都圏などの国有地を安く提供いたします。

介護福祉士を志す学生には、返還を免除する奨学金制度を充実します。一旦仕事を離れた人が復職する場合には再就職の準備金を支給します。あらゆる施策を総動員し、今後二十五万人の介護人材を確保してまいります。

介護休業の分割取得を可能にし、休業中の給付を四十%から六十七%に引き上げます。所定外労働の免除、短時間勤務などを可能とし、仕事と介護が両立できる社会を創り上げてまいります。

高齢者の皆さんの七割近くが、六十五歳を超えても働きたいと願っておられる。大変勇気付けられる数字です。

高齢者も雇用保険の適用対象とし、再就職を支援するなど、多様な就労機会を提供します。更に「ニッポン一億総活躍プラン」では、定年延長に積極的な企業への支援など、定年引上げに向けた環境を整え、働きたいと願う高齢者の皆さんに道を拓いてまいります。

いつまでも、元気で、その豊富な経験や知恵を、能(あた)う限り、社会で発揮して頂きたい。「生涯現役社会」。単なるスローガンはもう要りません。それを、現実のものにしていこうではありませんか。

(希望出生率一・八)

一億総活躍の最も根源的な課題は、人口減少問題に立ち向かうこと。五十年後も人口一億人を維持することであります。長年放置されてきた、この課題への挑戦をスタートします。

「希望出生率一・八」の実現を目指します。

一人でも多くの若者たちの、結婚や出産の希望を叶えてあげたい。

所得の低い若者たちには、新婚生活への経済的支援を行います。不妊治療への支援を拡充します。産前産後期間の年金保険料を免除し、出産の負担を軽減します。妊娠から出産、子育てまで、様々な不安の相談に応じる「子育て世代包括支援センター」を、全国に展開してまいります。

仕事をしながら子育てできる。そういう社会にしなければなりません。

病児保育の充実など、子ども・子育て支援を強化します。目標を上積みし、平成二十九年度末までに合計で五十万人分の保育の受け皿を整備してまいります。返還免除型の奨学金の拡充、再就職準備金などの支援を行い、九万人の保育士を確保します。「待機児童ゼロ」を必ず実現してまいります。

大家族による支え合いを応援します。二世帯住宅の建設を支援します。URの賃貸住宅では「近居割」を五%から二十%へと拡大します。新しい住生活基本計画を策定し、三世代の同居や近居に対する支援に本格的に取り組んでまいります。

子どもたちの未来が、家庭の経済事情によって左右されるようなことがあってはなりません。

ひとり親家庭への支援を拡充します。所得の低い世帯には児童扶養手当の加算を倍増し、第二子は月一万円、第三子以降は月六千円を支給します。

幼児教育無償化の実現に一歩一歩進んでまいります。所得の低い世帯については、兄弟姉妹の年齢に関係なく、第二子は半額、第三子以降は無償にします。

高校生への奨学給付金を拡充します。本年採用する大学進学予定者から、卒業後の所得に応じて返還額が変わる、新たな奨学金制度がスタートします。希望すれば、誰もが、高校にも、専修学校、大学にも進学できる環境を整えます。

いじめや発達障害など様々な事情で不登校となっている子どもたちも、自信を持って学んでいける環境を整えます。フリースクールの子どもたちへの支援に初めて踏み込みます。子どもたち一人ひとりの個性を大切にする教育再生を進めてまいります。

日本の未来。それは、子どもたちであります。子どもたちの誰もが、頑張れば、大きな夢を紡いでいくことができる。そうした社会を、皆さん、共に創り上げていこうではありませんか。

(アベノミクスの果実)

三年間のアベノミクスは、大きな果実を生み出しました。

名目GDPは二十八兆円増えました。国民総所得は四十兆円近く増加し、政権交代選挙で国民の皆様にお約束した、「失われた国民総所得五十兆円」の奪還は、本年、実現する見込みであります。

来年度予算の税収は十五兆円増えています。社会保障を始めとする歳出の伸びを抑制し、基礎的財政収支の赤字は、政権交代前の半分以下、十兆円余りにまで減りました。

経済再生なくして財政再建なし。二〇二〇年度の財政健全化目標を堅持します。行政改革も不断に進めてまいります。来年四月の消費税率引上げでは、酒類と外食を除く全ての食品について、十%に引き上げることなく八%に軽減し、日々の生活で幅広い消費者の皆さんに負担軽減を実感して頂けるよう、準備を進めます。

企業収益は過去最高となりました。中小企業の倒産は、政権交代前と比べて二割減り、一昨年、二十四年ぶりに一万件を下回りました。昨年は更に一割近く減少しています。

雇用は百十万人以上増え、正社員も増加に転じました。正社員の有効求人倍率は、政権交代前より五割上昇し、統計開始以来最高の水準です。昨年は十七年ぶりの高い賃上げも実現しました。

(GDP六百兆円)

強い経済、「成長」の果実なくして、「分配」を続けることはできません。「成長と分配の好循環」を創り上げてまいります。

「介護離職ゼロ」、「希望出生率一・八」という二つの「的」を射抜くためにも、又その安定的な基盤の上に、「戦後最大のGDP六百兆円」というもう一つの「的」を掲げ、新しい「三本の矢」を放ちます。

この春も、企業収益の拡大を賃金の上昇へとつなげる。昨年を上回る賃上げを目指すことで、政府と経済界の認識が一致しました。原材料コストの価格への転嫁など、下請企業の取引条件の改善に官民で取り組みながら、最低賃金についても、千円を目指し、年率三%を目途に引き上げます。

昨年の七月八月九月、企業の設備投資は一年前と比べ十一%以上伸びました。三年後には更に十兆円上積みできる。その認識で経済界と一致いたしました。

法人実効税率を来年度から一気に二十%台へと引き下げ、国際的に遜色のない水準へと法人税改革を断行します。中小・小規模事業者には固定資産税の大胆な減税を行い、投資収益率を高め、国内の設備投資を後押しします。

経済の好循環によって、内需を押し上げてまいります。

日本が、これからも、力強く成長を続ける。その成否は、イノベーションにかかっています。

五十年間で五十六億人を輸送し、死亡事故ゼロ。年間十二万本を運行し、遅れは一分以内。新幹線技術は、日本が誇るイノベーションであります。トップセールスが実を結び、インドでその採用が決まりました。エネルギー、都市開発、日本には質の高いインフラがあります。JBICに新勘定を創設し、世界へと売り込んでまいります。

地球温暖化対策は、新しいイノベーションを生み出すチャンスです。主要排出国を含む全ての国が参加するパリ協定を歓迎します。温室効果ガスの排出量を二〇三〇年度までに二〇一三年度比で二十六%削減するとの目標の下、省エネルギーと再生可能エネルギーの大胆な技術革新、最大限の導入を進めてまいります。十五年間で、次世代自動車の販売を新車全体の七割にまで引き上げ、自動車市場の姿を一変させます。

人工知能、ロボット、IoT、宇宙など、次世代を切り拓く挑戦的な研究を支援し、大胆な規制改革によって新しい可能性を開花させてまいります。国産資源であるメタンハイドレートの商業化を目指し、調査・開発を進めます。

筋肉が衰える難病。その皆さんが自分の足で歩くことができる。「夢のロボットスーツ」の技術は、筑波大学で誕生しました。企業の協力を得て製品開発に成功。海外の企業とも連携し、欧州に展開する製品となりました。

国内外の研究機関、大学、企業のオープンな連携から、ダイナミックなイノベーションが生まれる。あらゆる壁を取り払ってまいります。新しい科学技術基本計画の最大のテーマは、オープン・イノベーション。研究開発法人には、世界中から超一流の研究者を集めます。大学では、国内外の優秀な人材を集めて経営を革新し、積極的な産学連携など、攻めの経営を促します。

日本を「世界で最もイノベーションに適した国」としていく。その決意であります。

四 より良い世界への挑戦

(地球儀を俯瞰する外交)

さて、この三年間で、六十三の国と地域を訪問し、首脳会談は四百回を超えました。

地球儀を大きく俯瞰しながら、積極的な平和外交、経済外交を展開する。そして、アジアから環太平洋地域に及ぶ、この地域の平和と繁栄を、確固たるものとしていく。日本こそがその牽引役であり、私たちはその大きな責任を果たしていかなければなりません。

そのことが、我が国自身の平和を守り、更なる繁栄を築く道である。そう確信しております。

自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値を共有する国々との連携を、一層深めます。

ASEAN豪州インド欧州とは、これまでも戦略的なパートナーとしてその絆を深めてきました。この協力関係を、より広く、より深く、強化してまいります。

韓国とは、昨年末、慰安婦問題の最終的かつ不可逆的な解決を確認し、長年の懸案に終止符を打ちました。戦略的利益を共有する最も重要な隣国として、新しい時代の協力関係を築き、東アジアの平和と繁栄を確かなものとしてまいります。

中国の平和的な台頭は、日本にとっても、世界にとっても、大きなチャンスです。戦略的互恵関係の原則の下、関係改善の流れを一層強化します。地域の平和と繁栄に大きな責任を持つ日中両国が、大局的な観点から、安定的に友好関係を発展させることで、国際社会の期待に応えてまいります。

ロシアとは、世界が直面する様々な課題に共に立ち向かう関係を築きたい。ウクライナ情勢については、G7の連帯を重視しつつ対処いたします。領土問題の解決、平和条約の締結に向けて、経済、エネルギー、文化など幅広い分野で関係強化を一歩一歩進めます。あらゆる機会を見つけて対話を重ねてまいります。

(希望の同盟)

こうした外交を展開する、その基軸は、日米同盟であります。

普遍的な価値で結ばれた日米同盟、世界第一位と第三位の経済大国による日米同盟は、世界の平和と繁栄のため、共に行動する「希望の同盟」であります。

貧困、感染症、気候変動。人間の安全保障に関わるあらゆる課題に、米国と力を合わせて、立ち向かってまいります。

その強い信頼関係の下に、抑止力を維持しながら、沖縄の基地負担の軽減に全力で取り組みます。

西普天間住宅地区は、昨年返還が実現し、病院の建設が決まりました。アクセス道路の設置も日米で合意し、前進を続けています。オスプレイの定期整備は千葉・木更津駐屯地で行います。普天間飛行場や牧港補給地区の一部の返還前倒しも決まりました。一歩一歩、確実に結果を出しながら、負担軽減を進めています。

学校や住宅に囲まれ、市街地の真ん中にある、普天間飛行場の全面返還を、日米で合意してから二十年。もはや先送りは許されません。名護市辺野古沖への移設による埋立て面積は、現在の普天間の三分の一以下に縮小します。普天間が有する三つの機能のうち、二つは本土に移転し、オスプレイの運用機能だけに限られます。日常の飛行経路も海上へ変更され、騒音対策が必要な住宅はゼロになります。

沖縄の皆さんと対話を重ね、理解を得る努力を粘り強く続けながら、明日の沖縄を共に切り拓いてまいります。

(積極的平和主義)

ネパールを襲った、死傷者二万五千人を超える巨大地震。自衛隊は直ちに現地に展開し、不眠不休で医療援助に当たりました。

部隊が撤収する際、子どもの手を引いた一人のお母さんが、隊員に近寄り、飴をプレゼントしてくれました。食糧が不足する現地で、それは、心からの感謝の気持ちがこもった飴でありました。

震災で御主人と家を失った、その女性は、隊員の手を握りながら、「ありがとう。ありがとう。」何度も繰り返していたそうであります。

世界のため黙々と汗を流す自衛隊の姿を、世界が称賛し、感謝し、そして頼りにしています。

その自衛隊が、積極的平和主義の旗の下、これまで以上に国際平和に力を尽くす。平和安全法制は、世界から、支持され、高く評価されています。「戦争法案」などという批判は、全く根拠のないレッテル貼りであった。その証であります。

先般、北朝鮮が核実験を強行したことは、断じて容認できません。強く非難します。安保理決議への明確な違反であり、国際社会と連携して、断固たる対応を取ってまいります。「対話と圧力」、「行動対行動」の原則を貫きながら、拉致問題の解決に全力を尽くします。拉致、核、ミサイルの諸懸案の包括的な解決に向けて具体的な行動を取るよう、北朝鮮に強く求めます。

もはやどの国も、一国だけで自国の安全を守ることはできない時代です。自国防衛のための集団的自衛権の一部行使容認を含め、切れ目のない対応を可能とし、抑止力を高める。平和安全法制の施行に向けて万全の準備を進めます。国民の命と平和な暮らしを守り抜くという政府の最も重い責任を、しっかりと果たしてまいります。

(世界の中心で輝く日本)

本年から、日本は、安全保障理事会の非常任理事国の重責を担います。国連改革を推し進め、世界の平和と安定にしっかりと責任を果たしてまいります。

本年は、伊勢志摩サミットに世界のリーダーたちを招きます。アフリカの首脳たちが一堂に会するTICADも開催します。「女性が輝く世界」に向けた国際女性会議も三年目。日中韓サミットも日本が議長国を務めます。

日本が、正に世界の中心で輝く一年となります。

日本が世界に誇る文化芸術の魅力を発信する。ソフトパワーを活かし、積極的な文化外交を展開してまいります。

これまでの国を挙げた努力が実を結び、「世界津波の日」が国連総会において全会一致で採択されました。世界の防災に、日本の教訓を活かしてまいります。

中東地域での緊張感が増しています。全ての当事者の自制を求め、その対話を促してまいります。欧州には大量の難民が流入しています。その根本的な解決に向けて、保健医療での協力、経済支援を進め、大きな責任を果たします。

国際社会と共にテロとの闘いを進めます。水際対策の強化など国内のテロ対策、危機管理を強化し、安全の確保に万全を期してまいります。

より良い未来、より良い世界を築く、国際社会の「挑戦」に終わりはありません。そうした世界の中で、日本は、しっかりとリーダーシップを発揮してまいります。

五 おわりに

ラグビー日本チームの世界への「挑戦」。あの歴史的な勝利は、私たち日本人に、大きな自信と勇気を与えてくれました。日本で開催されるラグビーワールドカップ、東京オリンピック・パラリンピックの成功に全力を尽くします。

継続こそ力。三年間の内政、外交の実績の上に、今後も、ぶれることなく、この道をまっすぐに進んで行きます。困難な課題にも真正面から「挑戦」し、結果を出してまいります。

「挑戦」

日本で初めての孤児院を設立した石井十次は、児童福祉への「挑戦」に、その一身を捧げました。たくさんの子どもたちを、立派に育て上げ、社会へと送り出しました。

孤児がいれば救済する。天災の度に子どもの数は増えていきました。食べ物が底を尽き、何度も困窮しました。コレラが流行し、自らも生死の境を彷徨いました。

しかし、いかなる困難に直面しても、決して諦めなかった。強い信念で、児童福祉への「挑戦」を続けました。

「為せよ、屈するなかれ。時重なればその事必らず成らん」

安倍内閣は、諦めません。目標に向かって、諦めずに進んでいきます。

一億総活躍の未来を拓く。日本と世界の持続的な成長軌道を描く。平和で安定した、より良い世界を築く。安倍内閣は「挑戦」を続けてまいります。

皆さん、共に「挑戦」しようではありませんか。そして、「結果」を出していこうではありませんか。それが、私たち国会議員に課せられた使命であります。

ただ「反対」と唱える。政策の違いを棚上げする。それでは、国民への責任は果たせません。

経済の舵取りをどうするのか、国民の命と平和な暮らしをどのようにして守るのか。互いの政策を明らかにして、建設的な論戦を行おうではありませんか。

民主主義の土俵である選挙制度の改革、国のかたちを決める憲法改正。国民から負託を受けた、私たち国会議員は、正々堂々と議論し、逃げることなく答えを出していく。その責任を果たしていこうではありませんか。

御清聴ありがとうございました。

出典:首相官邸

動画リンク

http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg13052.html

合わせて読みたい