G7広島外相会合、概要と“広島宣言”声明内容のポイント(まとめ)
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4月10日~11日、広島においてG7広島外相会合が開催され、核の無い世界を目指す共同声明 “ 広島宣言 ” が発表された。
概要や声明のポイントを簡単にまとめた。
G7広島外相会合 概要
参加者
カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国の外務大臣及びEU上級代表
日本・議長 | 岸田文雄 外務大臣 |
アメリカ | ジョン・ケリー 米国国務長官 |
イタリア | パオロ・ジェンティローニ イタリア外務・国際協力大臣 |
イギリス | フィリップ・ハモンド 英国外務英連邦大臣 |
カナダ | ステファン・ディオン カナダ外務大臣 |
ドイツ | フランク=ヴァルター・シュタインマイヤー ドイツ連邦外務大臣 |
フランス | ジャン=マルク・エロー フランス外務・国際開発大臣 |
EU | フェデリカ・モゲリーニ EU外務・安全保障政策上級代表兼欧州委員会副委員 |
開催地・内容・関連行事
会議場
広島市 グランドプリンスホテル広島
内容
テロ・暴力的過激主義,難民問題,軍縮・不拡散,海洋安全保障等の国際社会が直面する喫緊の課題や,北朝鮮,中東,ウクライナといった地域情勢について
関連行事
広島平和記念資料館訪問及び原爆死没者慰霊碑への献花並びに宮島厳島神社への訪問
おもな合意事項
核の無い世界を目指す共同声明 “ 広島宣言 ” 発表
声明内容、4つのポイント
北朝鮮の核開発を最も強い表現で非難 | |
過激派組織 “イスラム国” によるテロを非難、入国阻止など連携を強化 | |
難民増加は世界的危機。紛争など根本原因への対処が必要 | |
東・南シナ海の状況は紛争解決が重要。威嚇的な一方的行動に強い反対を表明 |
この中で、日本においては4つめの「東・南シナ海問題」が最も注目すべき点だと思うため、該当個所を以下紹介する。
我々は、東シナ海及び南シナ海における状況を懸念するとともに、紛争の平和的管理及び解決の根本的な重要性を強調する。
我々は、現状を変更し緊張を高め得るあらゆる威嚇的、威圧的又は挑発的な一方的行動に対し、強い反対を表明するとともに、すべての国に対し、大規模なものを含む埋立て、拠点構築及びその軍事目的での利用といった行動を自制し、航行及び上空飛行の自由の原則を含む国際法に従って行動するよう要求する。
我々は、沿岸国が、境界未画定海域において、海洋環境に恒久的な物理的変更を引き起こす一方的な行動を最終的な合意への到達を危うくし又は妨げる限りにおいて控えること、及び、それらの海域において、実際的な性質を有する暫定的な取極を締結するためにあらゆる努力を払うことの重要性を強調する。
我々は、地域における信頼及び安全の構築を追求するための対話といった信頼醸成措置への更なる関与を奨励する。
我々は、南シナ海に関する行動宣言(DOC)全体としての完全かつ効果的な履行、及び効果的な行動規範(COC)の早期策定を求める。
この日プライムニュースに出演していた、佐藤優氏、山内昌之氏は、
日本とアメリカ以外は興味のない、むしろ「金持ち喧嘩せず」で関わりたくない中国の「東・南シナ海問題」について、G7でこの言葉を引き出せたのは、日本政府・外務省のこれまでの努力の結果であり評価すべきことだ。
政府はポイントを稼いだ。(発言主旨)
と評価した。
平和記念公園訪問
各国外相は11日午前、平和記念公園を訪問し、慰霊碑に献花した。
核拡散防止条約(NPT)が定める核兵器国の米英仏の外相が初めて平和記念公園を訪れた。
原爆ドーム訪問はケリー氏が提案したという。
右の画像は、ケリー米国務長官がツイッターで公開した、広島平和記念資料館を訪れた際の記帳。
「世界のすべての人が記念館の力強さをみて、感じるべきだ」などと記されている。
広島を初訪問しているケリー国務長官は11日、主要7カ国(G7)外相会合後の会見で「すべての人が広島を訪れるべきだ」と語り、オバマ大統領が広島を訪問することに前向きな姿勢を示した。
オバマ政権は5月のG7首脳会議(伊勢志摩サミット)に合わせたオバマ氏の広島訪問に向け本格的な検討に入っており、ケリー氏訪問後の米国内外の反応を見た上で最終判断する方針だ。
ケリー氏は同日午前11時ごろから約50分間、岸田文雄外相らG7外相とともに、平和記念公園内の広島平和記念資料館(原爆資料館)を参観。原爆死没者慰霊碑に献花した後、自ら提案し、同公園内の原爆ドーム近くにも足を延ばした。その後、自身の公式ツイッターに、「原爆資料館と平和記念公園を訪れた最初の国務長官になって光栄だ」と書き込んだ。
ケリー氏は、資料館の芳名録に「世界のすべての人が記念館の力強さを見て、感じるべきだ」と記載し、ツイッターで写真を公開。記者会見で、「いつか米大統領もその『すべて』の一人となり、ここに来られることを願っている」と語った。米国に帰国して週内にオバマ氏と会い、「ここで見たこと、そしていつか(オバマ氏が)訪問することがいかに重要かを確実に伝える」とも強調した。
ただ、5月の訪日時に広島を訪問するかは日程調整の問題もあり、「わからない」と述べるにとどめた。
出典:朝日新聞
終了後の議長国会見
平成28年4月11日
1 岸田文雄外務大臣 冒頭発言
昨日,本日と二日間にわたり開催したG7広島外相会合においては,各国外相の協力を得て,国際社会が直面する喫緊の課題,更には主要な地域情勢について,率直に,そして白熱した,充実した議論を行うことができた。歴史的な会合になったと受け止めている。参加いただいた各国外相,そして関係者の皆様方に,改めて感謝を申し上げる。その上で,議長を務めた私から,外相会合の主な成果について,簡潔に紹介したい。
G7は,民主主義,法の支配,市場経済,領土の一体性,更には基本的人権の尊重といった普遍的価値を共有している。これまでの国際社会の安定と繁栄は,これらの価値を土台とする秩序の産物と言える。
しかし,今日,そのような普遍的価値に基づく国際秩序は,現状を変更する一方的な行動による挑戦に直面している。
今般の外相会合では,まず,そのような挑戦の最たる例であるテロ・暴力的過激主義や,その結果生じた難民問題について議論し,テロリストによる無差別の攻撃,あるいは残虐行為などを非難すること,そして国際社会の取組をG7が主導していくことで一致した。
テロあるいは難民問題に対処していくためには,水際対策や緊急人道支援のような短期的な取組,これはもちろん重要なことであるが,これに加え,その背景にある根本原因に中長期的に取り組み,中東地域のみならず,世界全体で,暴力的過激主義を生み出さない寛容で安定した社会の構築に向けた支援を積極的に進めていく必要がある。そのような考えの下,G7各国がそれぞれの強みを活かし,それぞれ相互補完的に,かつ相乗効果を生む形で取組を進めていくこと,こうした取組について一致した。こうした観点から,テロ・暴力的過激主義対策については,伊勢志摩サミットに向けて「G7テロ対策行動計画」を策定することで一致した。
次に地域情勢では,中東情勢,そしてウクライナ情勢についてG7として連携を強化することを確認した。
また,8年ぶりにアジアで開催されるG7会合ということもあり,北朝鮮による核実験,弾道ミサイル発射,拉致問題,海洋での緊張を高める一方的な現状変更など,国際秩序の安定を損なう行動が見られるアジアの情勢についても議論した。
また,軍縮・不拡散といった,国際社会が直面する課題への対応も,次の世代が我々の築き上げた価値に基づく秩序を享受するために重要である。
軍縮・不拡散をめぐる現状は大変厳しく,今こそ核兵器国と非核兵器国との協力が必要である。その双方が含まれるG7が一体となって,国際社会にメッセージを発出し,双方の協力の具体的な在り方を国際社会に示すことは,しぼんでいる「核兵器のない世界」に向けた機運を再び盛り上げ,取組を再起動する上で,大変重要。そのような考えの下,核軍縮に関する力強いメッセージ「広島宣言」を発出することとなった。
さらに,G7外相による史上初の広島平和記念資料館訪問及び原爆死没者慰霊碑への献花,さらには原爆ドームへの訪問を行い,G7外相に被爆の実相に触れていただいた。こうした訪問は,「広島宣言」とも相まって,「核兵器のない世界」に向けた国際的機運を再び盛り上げる歴史的な一歩になったと感じている。
二日間で議論した諸課題にいかに対処するかは,今後の国際秩序の分岐点となると考える。今回の広島外相会合を基に,普遍的な価値を共有するG7として,国際社会の平和と繁栄に向けた取組を主導していきたい。
今般の会合の成果として,外相共同コミュニケと先ほど御紹介した「広島宣言」に加え,コミュニケの付属文書として,軍縮・不拡散に関する声明,海洋安全保障に関する声明を発出する。G7として力強いメッセージを国際社会に発信することができることを議長として大変喜ばしく思っている。そして,この広島外相会合の成果を,来月末に開催する伊勢志摩サミットにつなげていく。
なお,今回議長を務め,議論をリードする立場に立たせていただいたが,その立場から議論を振り返ると,今回のG7外相会合における議論のほとんどにおいて,大変率直で,自由であり,政治指導者としての見識をしっかり示した真剣な議論が行われたと感じている。時には予定時間を大幅にオーバーし,激しい議論も行われた。大変充実した議論であったことにつき,議長として満足している。
最後に,おもてなしの精神でG7外相を歓迎してくださった,ここ広島の皆様に心から感謝申し上げ,私の冒頭発言とさせていただく。
2 質疑応答
(NHK,栗原記者)
共同声明では,核軍縮・不拡散に関する声明が発出され,別文書では南シナ海や北朝鮮などアジア情勢についても言及されている。G7各国と,アジア情勢や,アジアで厳しさを増す安全保障情勢といったことについて認識を共有できたか。北朝鮮では核実験が繰り返し行われているなど,核軍縮とは逆行する形で,挑発行為を繰り返しているが,こうした北朝鮮や現実的脅威に対処し,向き合わなければならない中で,核兵器国と非核兵器国が協力して核兵器のない世界という理想を追求していく,その具体的な取り組み,展望をうかがいたい。
(岸田外務大臣)
北朝鮮や海洋の安全といったアジアに関わる議論については,8年ぶりにアジアで開催される,このG7外相会談であるので,しっかりと議論をすることができたと思っている。先ほど冒頭発言で,大変充実した議論を行うことができたと申し上げたが,このG7の中では,アジアの出席国は日本だけであるため,こうしたアジアの問題を,他の参加国から見ると,少し意識が薄くなっているのではないか,と心配する向きもあったが,実際議論を行ってみると,このアジアに関する問題は,想像以上に多くの意見が出され,激しいやりとりが行われ,予定の時間を大幅にオーバーする,大変充実した議論が特に行われたと感じている。
今回,アジアについてもしっかり議論を行うことができ,その中で,軍縮・不拡散の部分については,今この国際社会において,核兵器のない世界をめざそう,という気運がしぼんでいるのではないかといわれており,その中で北朝鮮による核実験や弾道ミサイル発射が強行され,こういったことを考えると,軍縮・不拡散の分野における国際的な情勢は極めて厳しい。そのような状況な中であるからこそ,ぜひG7外相会談において,「広島宣言」という,明確な強いメッセージを発出するのが重要であると訴えた。結果として,軍縮・不拡散を進めるにあたって,核兵器国と非核兵器国の協力が必要だと言われているなかにあって,核兵器国と非核兵器国の双方が参加する,G7の枠組みで議論を行い,そして意見一致をみて強いメッセージを発することができたことは,重要であり,意義あるものであったと強く感じている。
ぜひ,こうした議論を踏まえながら,引き続き国際社会において核兵器国と非核兵器国の協力を推進して行かなければならないと思うし,こうした取り組みを下支えする被爆の実相に対する正確な認識・理解を国境や世代を超えて,しっかりと伝えていく,こういったことを通じて,国際的な議論を主導していきたいと考える。
海洋安全保障についても,海における法の支配の確保・促進に対する重要性の認識,あるいはG7の連携の重要性を確認した。 東シナ海及び南シナ海における一方的な現状変更の試みについて議論をし,現状について懸念を共有し,いかなる一方的な現状変更の試みに対しても反対するとの認識で一致した。
その上で,昨年のリューベックでのG7外相会合に引き続き,海洋安全保障に関する単独の声明を発出することができた。ぜひ,こうした成果を今後にしっかりつなげていきたいと考えている。
(ブルームバーグ通信,シャープ記者)
先ほどの質問と重複するが,なぜ海洋安全保障が重要であると思ったのか。海洋安全保障声明において,具体的に南シナ海及び東シナ海という文言を入れることは重要だと思ったのか。
もちろん声明の中で明示的に中国は出てこないが,何が懸念なのか。あるいはG7外相は中国に対してどのような懸念を共有したのか。あるいは東シナ海・南シナ海におけるどのような中国の具体的な行動に対して懸念を共有したのか。
(岸田外務大臣)
先ほども申し上げたように,今回も海洋安全保障についてしっかりとした議論を行い,単独の声明を文書として発出した。
海洋においては,緊張を高める一方的な現状変更など,国際秩序の安定を損なう行動が見られる。こうした現状に対して議論を行い,海における法の支配の確保・促進に向けたG7の連帯の強化を確認した次第である。
その中で,ご指摘のように東シナ海及び南シナ海における現状についても議論した。懸念を共有し,そして一方的な現状変更の試みに対して強く反対するといったことで一致した。
そして,共同宣言でも明らかにしているが,全ての国に対して,一方的な行動の自制を求めていくこと及び国際法に基づく紛争の平和的解決の重要性,海賊対策等を含めた海上交通の安全確保に向けた取組の重要性についても認識が一致した。
質問の中でなぜ海洋安全保障を取り上げたのかとの質問があったが,海洋安全保障,海における法の支配,そして国際法に基づいて物事を平和的に解決していく,こういったことの重要性は,アジアのみならず国際社会全体にとっての関心事ではないかと思う。そういった観点から,今回G7外相会合においても,多くの国々から強い関心が示され,充実した議論が行われたと認識している。
(広島ホームテレビ,居升記者)
今回G7伊勢志摩サミットの一連の会合で広島が初の開催地となったが,被爆地で開催した意義をどのように捉えているのか,また,併せて発表された広島宣言について,被爆者の方々にとって十分納得のいくものになったかどうか,大臣ご自身のお考えを伺いたい。
また,アメリカのオバマ大統領に関し,大統領の被爆地訪問に対する期待を改めて伺う。
(岸田外務大臣)
まず,「広島宣言」については,昨年,NPT運用検討会議において最終文書が不採択になるなど,国際的な「核兵器のない世界」に向けての機運がしぼんでいる状況の中,今回の議論が行われた。
NPT運用検討会議後,初めて,核兵器国と非核兵器国双方が核軍縮・不拡散全般について意見の一致を見て,共同でこうした文章を発出した,ここに意義があると思っている。国際的な機運を再び盛り上げていく,あるいは再稼働させていく,こうした機会になるのではないか,と考えている。広島宣言の中には,核兵器国と非核兵器国による対話の促進という内容が含まれているが,加えて,原子爆弾投下による「極めて甚大な破壊」と「非人間的な苦難」という結末,こういった表現を盛り込み,さらには世界の指導者等に対して,被爆地の訪問を呼びかける。さらには,北朝鮮の挑発行動等,現実の厳しい安全保障環境に対する認識にも触れ,そして核戦力の透明性の向上が重要だということ,そして核軍縮において,多国間を含むアプローチが重要だ,といった提案も盛り込んでいる。こうした内容を「広島宣言」の中に盛り込んだが,さらには,核兵器は二度と使われてはならないという広島および長崎の人々の心からの強い願いを共有する,という内容も盛り込んでいる。
このように,今,この軍縮・不拡散の議論の中で議論されている主要な論点を盛り込むことができたと感じている。
先ほど申し上げたように,昨年のNPT運用会議が決裂した後,初めて,核兵器国・非核兵器国双方が参加する形で共同で発出したこの画期的な文書であると思っている。そして,こうした文書を今回発出することができたが,併せてG7外相が揃って,広島平和記念資料館を訪問し,原爆死没者慰霊碑に献花を行い,そして,予定にはなかったが,強い意向を受け,原爆ドームへの訪問も行った。こうした被爆の実相に触れて頂くという日程は,先ほど申し上げた「広島宣言」と相まって,国際社会において「核兵器のない社会」を作っていこうという機運を再び盛り上げる,歴史的な一歩となったと感じている。広島の皆さんに,被爆者の皆さんにとって納得したものになったか,というご質問があったが,今申し上げたこの観点から,「核兵器のない世界」を再び盛り上げようという強い思いを形にした。広島の皆さんにも,広島において外相会合をやってよかったと思って頂けるような会議にできたのではないかと考えている。
そして,オバマ大統領のこの広島訪問についても質問があったが,この点については,私の立場でアメリカの大統領の日程についてコメントするということは差し控えたい。
(ロイター通信,竹中記者)
米国大統領選挙の候補者であるドナルド・トランプ氏は,日本及び韓国の核武装容認について言及している。日本は非核三原則を維持しているが,日本やこの地域の国はより多くの通常兵力を提供し,米国の兵力への依存を減らすべきであるという同氏の考えに,同意するか。
(岸田外務大臣)
大変注目を集める質問であると思うが,米国で行われている選挙の候補者一人一人の発言に逐一コメントすることは適切ではないと考える。
その上でお答えするとすれば,アジア太平洋地域の安全保障環境が一層厳しさを増す中,日米安保体制を中核とする日米同盟は我が国のみならず,同地域の平和と安定の礎であり,このことは今後も変わらない。
次の大統領が誰になったとしても,日米同盟の役割がますます重要になっていることを訴え,米国の新たな政権とも緊密に連携して日米同盟を強固にしていかなければならない。
核武装については,我が国は非核三原則に加えて,原子力基本法も存在する。国際的な条約における責任との観点からも,我が国は核兵器不拡散条約(NPT)を締結しており,同条約は大変重要であると理解している。NPT体制を重視する我が国の立場などを考え合わせれば,我が国が核兵器を保有することは全くあり得ない。
(中国新聞,田中記者)
先ほど原爆被害の実態に触れるプログラムについて言及があったが,今日,核兵器保有国の現職外相たちと現地に行き,各外相が原爆の非人道性を感じ,核兵器なき世界に向けて実際に行動してくれると感じたか。また,そう感じる具体的な外相たちとのやりとりがあれば,ご紹介いただきたい。
また,非保有国の間には核兵器の法的禁止を求める動きが広まっている。今回のG7メンバーに法的禁止を求める当事国はいなかったが,これらの禁止を主張する国々と核保有国との溝を,唯一の被爆国として具体的にどう埋めていくのか,大臣の見解を伺う。
(岸田外務大臣)
まず,各国の外相が被爆の実相にしっかり触れたのか,そしてその結果「核兵器のない世界」に向けて行動してくれると感じるか,という質問を受けた。
今回,原爆資料館を訪問し,平和公園において献花をする。こうした日程を経験して,G7各国外相には大変大きなインパクトがあったと感じている。共に資料館を訪問する中で,各国の外相から様々な感想が述べられた。多くの外相から,心を動かされた,大変強い印象を受けた,といった声が口々に発せられていた。
そして原爆資料館の訪問,資料の視察についても,当初は予定時間30分であったが,各国外相は一つ一つ大変丁寧に,熱心に見てくれた。結果として資料館を出るまでに50分の長い時間を要することとなった。
その上で,平和公園で献花をしたわけであるが,各国外相並んで写真撮影に収まる際に,ぜひ目の前に見える原爆ドームを見てみたい,実際そこまでいけるのか,という声が突然上がった。全く予定のなかったことであった。5分ほど歩くが良いかという確認や,また,警備の関係があるため,すぐに対応できるか心配したが,すぐにアレンジし,各国外相揃って平和公園の慰霊碑の前から歩いて原爆ドームに行き,その場で改めて松井市長の説明をみんなで聞くということも行われた。全く予定のなかったことであるが,G7外相側からぜひ見てみたい,という強い意向が示された。このあたりも,今回の訪問・視察が外相たちに強いインパクトを与えられた一つの例ではないかと感じている。こうした訪問と相まって,今回広島宣言という核兵器国と非核兵器国が協力し,一致しまとめた文書を発出できたこと,この二つが相まって,必ずや「核兵器のない世界」に向けての機運をもう一度盛り上げることができるのではないかと考えている。
また,核兵器に関する法的規制について質問をいただいた。核軍縮を目指すアプローチについては様々な考えがあるが,日本としては,「広島宣言」を含めた今回の結果を活かし,今後とも国連等の場で,核兵器国と非核兵器国の協力をしっかりと促していかなければならない。そして協力ができる現実的かつ実践的な取組をしっかりと着実に実施していく,こういったことの重要性を訴えていくべきであると思う。ぜひ両者の協力を具体化することによって現実的な結果を出し,具体的な前進につなげていきたいと考えている。
参考資料
概要
核軍縮及び不拡散に関するG7外相広島宣言(仮訳(PDF)/英文(PDF))
海洋安全保障に関するG7外相声明(仮訳(PDF)/英文(PDF))
不拡散及び軍縮に関するG7声明(仮訳(PDF)/英文(PDF))
外務大臣記者会見
G7広島外相会合議長国会見(平成28年4月11日)
岸田外務大臣臨時会見記録(平成28年4月10日)
出典:外務省