【佐藤優】「世界の混乱と安倍首相の重要な役割」くにまるジャパンより(2016年1月15日)
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2016年1月15日に放送された『くにまるジャパン』において語られた、佐藤優氏の発言を書き起こしました。
わたしには、ところどころ矛盾して聞こえる箇所があるのですが、それはわたしの知的レベルの問題かもしれませんので、割愛などせずそのまま書いています。
佐藤優氏の発言には納得できないことが多々あるものの、時々凄く勉強になる。いずれにしても以下、全体としては参考になることが多いと思います。
今回の原油安は「うんと悪い値下げ」
我々一般の感覚からすると、値下げっていいことですよね。ガソリンが安くなるならいいことじゃないか、と。
ということなんだけれども、世の中には良い値下げと悪い値下げがあるんですよ。
これは悪い値下げというか、うんと悪い値下げ。
これは結果からすると、大値上げに将来繋がる可能性、しかも戦争を伴う可能性があるということなんですよ。
そんな結論にいくと飛躍しているように見えるんで、ゆっくりと説明していきますね。
サウジアラビアが石油を減産しないワケ
サウジが、減産をしない大きな理由というのはシェアを確保したい。
シェアを確保するためにはどうしたらいいか。
減産して値段を上げなければ、代替エネルギー(具体的には、アメリカのシェールガス・シェールオイル)の開発は、「バレル当たり30ドル下がるんじゃやってられない」ということで、入って来ないんですよ。
新規開発のシェールガス・オイル会社は、潰れたりしていますよね。だから、シェールを開発させない、ということだったんです。
今まではそこで読みができたんですよね。
不確定要素、イラン
(しかし)もう1つの不確定要因が入ってきちゃった。
イランです。
イランが戻ってくると、制裁が解除されるから国際市場にイランの石油が出てくるんです。
ところがイランは制裁受けてたでしょ?(そのせいで)設備が凄い古いの。
それだから、サウジと比べるとコストが凄く高いんです。
従って、イランは石油関連施設の更新をしたいんです。新しい設備にするために、お金が欲しいんです。
これで、(原油が)安い値段で続くと、更新ができない程度にしかお金入って来ない。
だからイランを締め上げてやろうっていう思いが、(サウジが)シェアを確保するということに加わってきたわけです。
ですから、今回1月4日に、サウジアラビアがイランと国交を断絶して以降、その要素が凄く強くなってきた。
だからダブつくぞとみんな思ってるんですね。
そうするとイランはどうするか。
「ふざけやがって、こいつら」と。
実は、サウジアラビアっていうのはスンニ派なんですね。
イランはシーア派だけれども、世界のイスラム教徒の9割がスンニ派、1割がシーア派なんです。
ところが、サウジアラビアって実はね、これ日本ではあまり報道されてないんですが、1割5分、15%がシーア派なんです。しかも東部のほうだと、47~48%がシーア派なんです。
この人達は、サウジアラビアの王様よりも、イランのほうが好きなの。
それだから、(サウジアラビアが)1月2日にニムルっていうシーア派の指導者(サウジアラビア人)を処刑しましたけどね、この人は実は、イランのイスラーム革命防衛隊とくっついて、サウジアラビアの政権を転覆してやろうっていう活動をしている人で、結構めんどくさい人なんです。
もちろん、武力での転覆です。
だから、サウジ政府から見ればテロリスト。
イランとサウジアラビアの前哨戦
それで、イランのほうはさらに、イエメンっていうサウジアラビアの南の国、地図で見ると小さい国ですよね。ところが、人口はサウジアラビアと一緒なの。
そのイエメンのシーア派、これはフーシーっていうグループなんですけどね、そこをサポートして、それがぐわーっとサウジアラビアに今攻め上がろうとしている。
「石油を巡って値段を安くしておけば、イランが弱くなる」という(サウジアラビアの)思惑と、「それはさせない」と、今のサウジの政権をガタガタにしてやろうというイラン。
この戦いの前哨戦なんですね。
もし、この2つの国が戦うということになると、ホルムズ海峡はもとより、イランからも、サウジアラビアからも油が入ってこなくなるんです。
そうなると、油の値段が今度は一挙に、極端なことを言うと10倍位に上がってもおかしくない。
シェールガスは石油の代替になるか
(シェールガスを代替にするには)ちょっと時間が足りないですね。
ただ、代替になるのは1つありますね。ロシア。
それだから、12日のロシアの政府系新聞の「イズベスチア」に、ウシャーコフっていうロシアの大統領補佐官が、「実は安倍さんが、モスクワ以外のロシアを訪問するんだ」と言っている。「そこで北方領土問題と極東の開発問題を話すんだよ」と言ってるんですけれども、これが凄く重要なんですよ。
どうしてかというと、ロシアは去年8月の終わり以降、北方領土問題、領土問題という言葉を遣っていないんです。今回遣ったのは、領土の話もきちんとすると。だから、石油ガスを日本に売る、その仕組みを作りたいと。
中東情勢が不安定でしょ?安値で長期お売りしますから、ここで仲良くしませんかと。こういうメッセージを出しているわけですよ。
これは日本にもメリットがある。
どうしてかっていうと、中東の今の一時的な原油安が、そんなに長く続かない。リスクが高すぎるから。
こういうゲームになっているんですね。
第3次世界大戦
宣戦布告をやるっていうタイプの戦争で、ヨーロッパやアメリカや日本が巻き込まれるということはないんですね。
どういうことかというと、サウジアラビアからすると、イランのほうが自称イスラム国(IS)より怖いんです。
ということは、敵の敵は味方だからIS頑張ってちょうだい、うちに向かって来ないでイランやっつけてるぶんには、ISさん応援しますよっていうことになりかねない。
となると、ISはこの機会に、ヨーロッパやアメリカや日本でも「いっちょテロ起こしてやろう」と。それによって世界イスラーム革命を実現するんだと、こういう流れになってくる可能性がある。
オイルマネーがジャカスカと、ISに流れてくる可能性が充分にある。
インドネシアでISによるアジア初のテロ
ISは、短期的にはロシアの物凄い空爆をうけ、あともうひとつは、イランの革命防衛隊が皆殺し部隊のようなものを送っているわけですね。ですから、イラクで最近、イスラム国の拠点をイラク軍が奪還したとか出てるでしょ?突然イラク軍が強くなったんですか?有り得ない。
それは、イランの革命防衛隊が制服をイラク軍の制服に着替えて行っているだけで、物凄い精鋭部隊がいるから、イスラム国を皆殺しにしてどんどん奪還してんです。
で、そういうふうになって窮地に陥ったイスラム国は、「俺たちのところを絞めてかかったり空爆したりすると、世界中あちこちでテロやれるんだぜ」と。「俺たちはどこだってできるからな」っていうことを見せつけるために、今回はインドネシアでやった。また別のところでやる。
それで「世界中のどこでも、我々に狙われたら逃げられる所はないんだ。だからお前ら大人しくしてろよ。中東に手を出すんじゃねえ」と。
こういうメッセージを出してるわけですね。
ISを支えるサウジアラビアとカタール
去年12月20日の話なんですけどね、中東のある国の情報大国でアラブじゃない国の、昔から付き合っている友達が「佐藤、大変なことになってるぞ。イスラム国が人質でカネを取ってるのか、あるいはトルコに石油を密輸をしているというような話、あんなのは表面的な偽の話で大したことはないぞ。今イスラム国は凄いカネで潤沢になっている。サウジアラビアとカタールが銭を流しているぞ」と。これ、そのうち表に出てくる。
「イランとサウジの関係が、相当キツくなっている。敵の敵は味方だということで、サウジが、イランの影響がアラビア半島に広がるよりは、イスラム国のほうがまだいい。それでカネ流してる。緊張するぞ。カタールもそれにくっついている」と。こういう話があるんですよね。
アルジャジーラ アメリカ支局、閉鎖の理由
カタールは、アルジャジーラを持ってるでしょ?アメリカで支局閉じちゃったでしょ?
もうカタールは自分たちが何やってるかってことをよく分かってますからね。戦線縮小して、西側にはあまり出てこないほうがいいと。
とにかく、イスラム国に対する見方っていうのを変えてますね、サウジアラビアが。
それだから、サウジアラビアを巻き込んだ対イスラム国統一戦線とか、テロとの戦いっていうのは、もう出来なくなっている。幻想になっている。
だから、色んなテロが可能になってくる。潤沢なオイルマネーによって。
そうすると、サウジとの関係って物凄い難しいですね。
サウジアラビアの情勢とIS
サウジアラビアっていうのは、豊臣秀吉によってとりあえず天下統一が成されている位な感じなんですよね。しかし、またガタガタする可能性というのは充分にある。江戸幕府のような盤石な体制になっていないんです。ですから、いつ何が起きてもおかしくない。
そこで禁じ手のイスラム国を使うということを始めちゃったんで、物凄い大変なことになると思います。
ロシアはそのサウジアラビアに原発を供与しようとしている。そうすると、サウジアラビアが核兵器を持とうとする流れに、ロシアが手を貸しているという、おかしな構図になっている。
パートナーを変えるアメリカ
それから、アメリカとイランは国交はない。
ところが、イスラーム国と闘うためには、イランを味方にしないといけない。
それだから7月14日のウィーンでの合意で、1,900個ある遠心分離機のうち、6,000個は残してもいいですよ、あるいは地下でウランを濃縮していた秘密工場(いまイランは20%まで濃縮できるが90%になると広島型の原弾になる)、これを研究所として残していいよという合意をした。
「イランは持ちたいと思ったら核兵器作れるよ、しかししばらく静かにしていてくれる?」っていうような合意をしちゃうと。それでイランと友達になりたいと。
だから、パートナーをいま、アメリカは変えつつあるんですよ。
サウジアラビアからイランに。
ゴチャゴチャになる。
ゴチャゴチャになる一瞬の隙間の中で、イランにお金が入ってきたら困るよーっていうサウジアラビアの思惑から、一時的に安くなっているっていうこういう現象なんです。
原油安で得している国
過去10年、原油が比較的安い。
エチオピアは、10%を超える経済成長率。それで過去10年でGDPが2倍になっている。
エチオピアは今や、アフリカのあの辺で中心国になりつつある。
それと同時に過去10年のなかで、すごい大変な状況になったアフリカの国があるんです。スーダンです。
スーダンは今回、イランと国交断絶しましたよね。一昨年、ガザ、パレスチナのガザ地区でイスラエルとの紛争が起きたときには、ガザ地区のハマスを応援したのはスーダンなんですよ。
イランからお金をもらって、イランから兵器を調達して、それを運んでいたのはスーダン船なんです。
パートナーチェンジ。どうしてか。
スーダンっていうのは、あの辺で唯一のアフリカでのイスラム国なんですね。スーダンの南のほうでは石油がとれた。そこに中国が進出してきた。
アメリカが「これはまずい。中国が力をつける」しかも、中国はお金の管理ができない。アルカイダやイスラム国に流れるかもしれない。
それで南スーダンという国を独立させちゃったんですよ。
乱暴な言い方すると、満州国みたいな感じなんです。
そうしたら、北のスーダン、お金なくなっちゃったでしょ?それだから傭兵でいま食べてるわけ。
だからイランがお金出してくれるんだったらイランの仲間。去年のイエメンとの戦争でサウジがお金出してくれるっていうことだから、今度はサウジの仲間。
今回サウジは相当お金出したと思う。スーダンにイランと国交断絶をさせるために。
こういうふうにわけの分からない国が出てきている。だから情勢は滅茶苦茶で、それが日本にいるとほとんど見えないんです。
「悪い結果」になるか、「うんと悪い結果」になるか
中東からアフリカにかけて、大変な変動が起きてる。
結末は見えないが、「悪い結果」になるか、「うんと悪い結果」になるかどっちかだと思います。
だからどういうふうにして「悪い結果」、すなわち核兵器が爆発しない結果にするかということで、世界中の情報・外交の専門家は智恵を絞っている。
だから、(先述の友人のように)日本まで伝えてくれるし、ロシアの友人達も訪ねてきて中東情勢の話をお前としたいというのが非常に最近多いです。
安倍首相の重要な役割
安倍さんがロシアに行ってね、ロシアとの関係を深めて、エネルギー協力をして、安定がロシアにとってプラスだということになると、中東でもロシアが安定に向ける方向で動いてくると思う。
だから安倍さんは結構重要な役割を果たすんですよ。4月位だと思う、タイミングは。
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