【北朝鮮制裁】日本独自措置、救う会「要求が全面的に受容された」
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政府は10日、核実験と事実上の長距離弾道ミサイル発射を強行した北朝鮮に対する日本独自の制裁措置を決定しました。
制裁内容は家族会・救う会の要求を反映させたもので、厳しい内容となっています。
人的往来の規制措置の拡大 | |
支払手段などの携帯輸出届出の下限金額引き下げ 北朝鮮向けの送金を原則禁止 |
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人道目的の船舶を含む全ての北朝鮮籍船舶の入港禁止 北朝鮮に寄港した第三国籍船舶の入港禁止 |
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資産凍結の対象拡大 |
我が国独自の対北朝鮮措置について
平成28年2月10日
我が国は、北朝鮮に対し、累次にわたり、関連の国連安保理決議の完全な遵守を求め、核実験や弾道ミサイルの発射等の挑発行動を行わないよう繰り返し強く求めてきた。また、拉致問題についても、安倍政権の最重要課題として、一日も早い全ての拉致被害者の帰国を求めてきたが、いまだ解決に至っていない。
このような中、今回、北朝鮮が国際社会の制止を無視して4回目の核実験を行い、その後さらに弾道ミサイルの発射を強行したことは、我が国の安全に対する直接的かつ重大な脅威であり、北東アジア及び国際社会の平和と安全を著しく損なうものとして断じて容認できない。
我が国は、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決するために何が最も有効な手段かという観点から真剣に検討してきた結果、以下の独自措置を実施することを決定した。
第一に、人的往来の規制措置を実施する。具体的には、以下の措置を実施する。
- 北朝鮮籍者の入国の原則禁止
- 在日北朝鮮当局職員及び当該職員が行う当局職員としての活動を補佐する立場にある者の北朝鮮を渡航先とした再入国の原則禁止(対象者を従来より拡大)
- 我が国から北朝鮮への渡航自粛要請
- 我が国国家公務員の北朝鮮渡航の原則見合わせ
- 北朝鮮籍船舶の乗員等の上陸の原則禁止
- 「対北朝鮮の貿易・金融措置に違反し刑の確定した外国人船員の上陸」及び「そのような刑の確定した在日外国人の北朝鮮を渡航先とした再入国」の原則禁止
- 在日外国人の核・ミサイル技術者の北朝鮮を渡航先とした再入国の禁止
第二に、北朝鮮を仕向地とする支払手段等の携帯輸出届出の下限金額を100万円超から10万円超に引き下げるとともに、人道目的かつ10万円以下の場合を除き、北朝鮮向けの支払を原則禁止する。
第三に、人道目的の船舶を含む全ての北朝鮮籍船舶の入港を禁止するとともに、北朝鮮に寄港した第三国籍船舶の入港を禁止する。
第四に、資産凍結の対象となる関連団体・個人を拡大する。
我が国としては、「対話と圧力」、「行動対行動」という一貫した方針の下、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的解決に向けた北朝鮮の前向きな動きを強く求める。我が国としては、最重要課題である拉致問題の解決に向けた対話を継続し、ストックホルム合意に基づき、一日も早い全ての拉致被害者の帰国を実現すべく、全力を尽くしていく所存である。
菅義偉官房長官 記者会見
平成28年2月10日(水)午後
我が国独自の対北朝鮮措置について
先ほど、関係大臣の同席を得て、国家安全保障会議を開催をいたしました。
我が国は、北朝鮮に対し、累次にわたり、関連の国連安保理決議の完全な遵守を求め、核実験や弾道ミサイルの発射などの挑発行動を行わないよう繰り返し強く求めてまいりました。また、拉致問題については、安倍政権の最重要課題として、一日も早い全ての拉致被害者の帰国を求めてまいりましたが、いまだに解決はいたしておりません。
こうした中、今回、北朝鮮が国際社会の制止を無視して4回目の核実験を行い、その後さらに弾道ミサイルの発射を強行したことは、我が国の安全に対する直接的で重大な脅威であり、北東アジア及び国際社会の平和と安全を著しく損なうものとして、断じて容認することはできません。
我が国は、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決するために何が最も有効かという観点から真剣に検討してきた結果、以下の独自措置を実施することを決定をいたしました。
第一に、在日外国人の核・ミサイル技術者の北朝鮮を渡航先とした再入国の禁止を含め、従来より対象者を拡大して人的往来の規制措置を実施します。
第二に、支払手段などの携帯輸出届出の下限金額を引き下げるとともに、北朝鮮向けの送金を原則として禁止をします。
第三に、人道目的の船舶を含む全ての北朝鮮籍船舶の入港を禁止するとともに、北朝鮮に寄港した第三国籍船舶の入港を禁止します。第四に、資産凍結の対象となる関連団体・個人を拡大をいたします。
我が国としては、「対話と圧力」、「行動対行動」という一貫した方針の下に、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的解決に向けた北朝鮮の前向きな動きを強く求めてまいります。また、最重要課題である拉致問題の解決に向けた対話を継続し、ストックホルム合意に基づき、一日も早い全ての拉致被害者の帰国を実現すべく、全力を尽くしてまいる所存であります。
これらの措置の実施に当たっては、関係法令に基づいて、必要に応じ、閣議決定、国会の事後承認などの手続きを経ることになります。
なお、今後とも、北朝鮮の対応や国際社会の動きを踏まえ、必要に応じる更なる措置を検討してまいりたいというふうに思います。
質疑応答
このタイミングの理由は
「北朝鮮が4回目の核実験、弾道ミサイル発射を強行したことは、わが国にとって直接的な重大な脅威だ。こうした状況を踏まえ、北朝鮮から前向きな具体的な行動を引き出す上で何が最も効果があるか、そうした観点から今回の措置をとった。わが国の毅然たる、断固たる対応が安保理決議の速やかな採択につながっていくことを期待する」
制裁強化を口実に拉致問題の再調査が停滞する可能性がある。あえて制裁強化に踏み切った理由は
「拉致は安倍政権にとって最重要課題であり、ストックホルム合意を破棄する考えはない。そういう中で今回の行動を考えたときに、何が最も有効なのかということを考えに考えた末にこのような対応をした」
新たに強化した部分についての狙いは
「まず、ミサイル技術者、対象を個々にまで再入国禁止を広げたこと。同時に北朝鮮に寄港した船舶、その北朝鮮籍にかかわらず禁止をした。さらに送金の全面禁止を打ち出した」
独自制裁の一部解除を1年半で強化せざるを得なくなった受け止めは
「わが国は常に北朝鮮に対しては『対話と圧力』『行動対行動』という一貫した方針の下に、拉致、核、ミサイルを包括的に解決。こうした中で北朝鮮の前向きな動きを強く求めていたわけだから、そうした観点から今回このような措置を講じた」
拉致問題に影響を与えず、日朝協議を進められるか
「いずれにしろ、ストックホルム合意を破棄する考えはない。ただ、そういう中で拉致問題を解決するための対話は継続していきたい。またストックホルム合意に基づく、一日も早い全ての被害者の帰国を実現すべく、全力を尽くしていく考えは変わりない。安倍政権にとって拉致問題の解決は最重要課題。そういう中で『行動対行動』『対話と圧力』を政府の姿勢として示したということだ」
北朝鮮に寄港した第三国の船舶の入港禁止について、現時点で入港した事例はあるか
「具体的なことは、この段階では承知していないが、そこは全て掌握している。いずれにしろ、抜け道がないような形の厳しい対応策をとっていく」
韓国政府も同時に開城(ケソン)工業団地の南北経済協力事業中断を打ち出した。米国も独自制裁を準備中だ。日米韓の連携による包括的制裁か
「米国、韓国とは首脳会談を行うなど北朝鮮の核実験、弾道ミサイル発射について厳しい対応をすべきだということで、3カ国が緊密に連携しながら対応してきた。そういう中で、韓国政府が今回、開城工業団地を全面的に閉鎖することは、日本政府として評価している」
歩調を合わせた相乗効果を狙った面もあるか
「緊密に連携しながら行っていることは事実だ」
制裁に関しては中国の動向がカギになるが、独自制裁を打ち出した日本政府として中国にどのような働きかけを行うか
「中国に対しては、わが国にも今日まで外交ルートを通じて、さまざまな要請をしているが、わが国の独自制裁が、安保理決議の厳しい対応、そして迅速に行うことに影響することができればと思っている」
ストックホルム合意で独自制裁の一部を緩和したが、当時緩和したことの判断を現在どう評価するか
「それまで何年もの間、閉ざされていた固い扉をこじ開けたばかりだから、そういう面で今日までの交渉の中で、北朝鮮にわが国の考え方は伝わっている。そういう中で、わが国はあくまでも『行動対行動』『対話と圧力』をずっと言い続けてきたので、今回はそういう中でこういう措置をしたということだ」
閣議決定のスケジュールは
「できるだけ早く行いたいと思っているので、決定をしたばかりだが、整い次第、速やかに対応していきたい」
このメニューで実行性はあるか
「わが国の意思は十分に伝わると思うし、その有効性は間違いなくあると思う」
必要に応じてさらなる措置を検討したいというが、さらなる制裁も検討するということか
「先程来、申し上げているように『対話と圧力』『行動対行動』というのがわが国の基本方針だから、そうしたものは一貫して行っていきたいと思うし、何が北朝鮮に対し最も有効かという観点から、さまざまなことを考えていきたい」
新たに追加した第三国の船舶の入港禁止と核、ミサイル技術者の再入国の禁止は、どういった効果を狙ったのか
「核、ミサイル技術者、こうしたことがわが国においてさまざまな技術があることは事実だから、そうしたことが北朝鮮の核、ミサイルの開発につながらないように厳しく対応していく。そうしたことは極めて大事だと思っている。船舶の入港禁止を北朝鮮籍以外にもということは、まさにわが国の強い意志と理解いただければと思う」
新たな独自制裁はいつから発動するのか
「できる限り速やかに準備をして、発動したい」
制裁は、拉致問題での進展がなされず、何ら対応を取っていないことも含めての新たな措置なのか
「もちろんそうだ。わが国としては累次にわたって国連安保理決議の完全な順守を求めてきた。核実験、弾道ミサイルの発射、挑発行為を絶対行わないようにと強い抗議をしてきているわけだから。それと同時に、わが国国民を拉致をした問題について、安倍政権としては拉致被害者全員が帰国をすることを求めてきているわけであり、そうしたことも現在までに解決に至っていない。そういう中で『行動対行動』『対話と圧力』というわが国の方針に照らして、今回このような措置を取った」
日本政府は1年半前に一部制裁を解除したが、全く進展がない。追加して制裁を科すことは、安倍政権として北朝鮮政策を転換したのか
「全くそうじゃない。拉致問題についても、被害者の家族会の皆さんと加藤勝信拉致問題担当相が会談をさせていただき、皆さんのさまざまな思いの中で今回このような措置を講じたということだ」
どの部分を閣議決定するのか
「船舶は当然そうなってくる。送金もそうだと思うが、いま決めたばかりだ。国会承認も必要なので、そうしたものをこれから行っていく」
資産凍結の関係は関連団体とあるが、具体的にどの程度か
「関係省庁と連携し、これから必要な手続きを取って発表していきたい」
第三国の船舶で念頭に置いている国とは
「北朝鮮に寄港した国すべてだ」
中国を念頭に置いた対応なのか
「どこの国というのではなく、まさに北朝鮮に寄港した船舶だと考えている」
再入国の原則禁止の拡大とは
「具体的なことについては控えたい」
拉致問題の解決は振り出し戻った
「拉致問題解決に向けた安倍政権の思いは、まさに『対話と圧力』『行動対行動』の原則の中で必ず解決に向けて努力していきたい。このことについてはまったく変わりはない」
日本の対応が後手後手で北朝鮮に振り回されているようだ。北朝鮮政策の見直しは
「全く考えていない。安倍政権になって、まさにこの固く閉ざされたドアをこじ開けることができたわけだから、そういう中で、度重なるわが国の強い抗議にもかかわらず、核実験やわが国にとって直接的ともいわれる弾道ミサイルが発射されたわけだから、ここはわが国の姿勢として明確に示す必要があるという考え方だ」
今後も非公式協議は日本から呼びかけるのか
「今までの対応をやめることはない」
今回の制裁メニューを見ると、自民党の提言を入れたものと入れていないものがある。取り入れた政府の判断基準は
「何が最も有効かという観点から行った」
家族会・救う会が声明「私たちの要求が全面的に受容された」
出典:★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2016.02.10)
拉致を理由に明記した追加制裁決定を歓迎する-家族会・救う会声明
本日、政府が北朝鮮に対する追加制裁の実施を決めた(下記参考資料)。その理由として「全ての拉致被害者の帰国」が実現していないことが明記された。これは私たちの要求が全面的に受容されたものだ。
また、制裁の内容も「拉致問題を解決しないと北朝鮮は未来がない」という安倍晋三首相の言葉を裏打ちするために自民党拉致対策本部がまとめた厳しい項目が多く採用されている。
中には北朝鮮寄港の第三国籍船舶入港禁止など自民党案より厳しいものもあった。金正恩政権は、従来から我が国が世界で一番厳しい制裁を実施しており、追加制裁によりそれがより一層強化されたことの意味を正しく理解すべきだ。2002年5人の被害者が帰国して以来、いまだに拉致被害者が誰も帰ってきていないことに対する日本国民の激しい怒りが背景にあるのだ。今後の課題は、国連安保理制裁や有志国制裁などで、体制維持が困難になるほどの圧力を加えることだ。国際制裁においても拉致問題が理由に明記されるように全力で働きかけて欲しい。
本日の追加制裁決定は、私たちがこの間求めてきたことが大幅には反映されたものとして歓迎したい。しかし、制裁は手段である。解決のためには交渉は欠かせない。ただし率直に言って、ストックホルム合意による交渉は、被害者を取り戻すための実質的な内容に踏み込めていないように見えていた。今回の強い制裁実施を背景にして、新しく実質的な交渉を持ち、一日でも早い全被害者の救出を実現してほしい。
平成28年2月10日
北朝鮮による拉致被害者家族連絡会代表 飯塚繁雄
北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会会長 西岡 力
出典:首相官邸、産経、救う会