自民党勉強会「文化芸術懇話会」百田尚樹発言批判にみるマスコミの「偏向報道の自由」
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自民党若手議員の勉強会「文化芸術懇話会」における、百田尚樹氏の発言が騒ぎになっている。
自民党は27日、代表を務める木原稔青年局長(45・熊本1区選出)を更迭・1年の役職停止処分とした。発言したのは別の人(発言と共に後述)なのに、木原氏はとんだとばっちりだなと同情してしまうが、人選ミスもあったし、これでマスコミ・野党の猛追を振り切ろうという党の判断だろうから、政治の世界では仕方がないことなのかもしれない。
このニュースを知り、始めに抱いた感想は、
1「船田元の憲法審査会に続き、また自民党の人選ミスか」
2「なぜ百田氏を呼んだのだろう」
3「どこからマスコミに漏れたのか」
という程度のものだった。
1上記1つめの「人選ミス」についてだが、憲法審査会の時は、船田氏が開催後「ちょっと予想を超えた」「あまり調べていなかった」と発言していたから勉強不足が原因だったようだが、今回はセンスのなさという気がする。参加議員の発言を読んでも、勉強会の席で議員が発言する内容としては、あまりに稚拙過ぎる。この感性なら、百田氏を選んでも不思議はないなという感じ。
参考船田氏の発言についてはこちら 船田元、質疑後の弁
2百田氏については、彼がテレビに出始めた頃、「愛国者の前にテレビマン」というイメージを抱いた。志を持った愛国者というより「どうしたらウケるか、そしてその結果儲かるか」が、主軸の人に見える。人の価値観を否定する気はないし、そういうタイプも必要だろうが、個人的に好感を持ったことはない。今もそれは同じ。だから、擁護する気はない。
3最後のマスコミに漏れた経緯だが、なんと単にマイクを使ったから声が外に漏れただけに過ぎなかった。
この勉強会の冒頭部分はメディアに公開したそうだから、「近くでマスコミが聞いているだろう」ということは素人のわたしでも危惧するレベルの話で、「発言に気をつけねばならない」というのは誰でも考えられることだと思う。
気が緩んでいるのか、素質がないのか、もう何がなんだか分からない。
要するに、自民党の人選ミスと油断、百田氏の下品な発言は否定しない。
しかし「なんだ百田か。それならバッシングを受けても仕方がないね」で終わるわけにはいかない気がする。
ここで責められるべきはマスコミも同じではないかと思うのだ。
まず、発言の要旨を読んでみて欲しい。
自民党若手議員の勉強会「文化芸術懇話会」百田氏、議員らの発言
マスコミ懲らしめるには広告収入なくせばいい 自民勉強会 議員らの発言要旨
改憲を目指す自民党若手議員の勉強会「文化芸術懇話会」が二十五日に党本部で開いた初会合での報道機関に関する発言の要旨は以下の通り。主宰する木原稔衆院議員、講師の作家百田尚樹氏の冒頭発言はメディアに公開された。その後、百田氏の講演、出席議員による質疑が非公開で行われたが、発言者がマイクを使ったため、発言の多くは室外まで聞こえていた。
百田氏
マスコミの皆さんに言いたい。公正な報道は当たり前だが、日本の国をいかに良くするかという気持ちを持ってほしい。反日とか売国とか、日本を陥れるとしか思えない記事が多い。日本が立派な国になるかということを考えて記事を書いてほしい。(ここから講演)
政治家は国民に対するアピールが下手だ。難しい法解釈は通じない。気持ちにいかに訴えるかが大事だ。集団的自衛権は一般国民には分からない。自国の兵力では立ち向かえないから、集団的自衛権は必要だ。侵略戦争はしないということで改憲すべきだ。攻められた場合は絶対に守るということを書けばいい。
議員A(大西英男氏・東京16区)
マスコミを懲らしめるには、広告料収入をなくせばいい。われわれ政治家、まして安倍首相は言えないことだ。文化人、あるいは民間の方々がマスコミに広告料を払うなんてとんでもないと経団連に働きかけてほしい。議員B(井上貴博氏・福岡1区)
広告料収入とテレビの提供スポンサーにならないということがマスコミには一番こたえるだろう。百田氏
本当に難しい。広告を止めると一般企業も困るところがある。僕は新聞の影響は本当はすごくないと思っている。それよりもテレビ。広告料ではなく、地上波の既得権をなくしてもらいたい。自由競争なしに五十年も六十年も続いている。自由競争にすれば、テレビ局の状況はかなり変わる。ここを総務省にしっかりやってほしい。議員C(長尾敬氏・比例近畿ブロック)
沖縄の特殊なメディア構造をつくってしまったのは、戦後保守の堕落だった。沖縄タイムス、琉球新報の牙城の中で、沖縄世論を正しい方向に持っていくために、どのようなことをするか。左翼勢力に乗っ取られている現状において、何とか知恵をいただきたい。百田氏
沖縄の二つの新聞はつぶさないといけない。沖縄県人がどう目を覚ますか。あってはいけないことだが、沖縄のどこかの島が中国に取られれば、目を覚ますはずだが、どうしようもない。(沖縄の基地負担問題は)根が深い。苦労も理解できる。出典:東京新聞 2015年6月27日 朝刊
※議員ABC横の( )はブログ主が追記
マスコミは百田氏の「沖縄の新聞をつぶせ」という発言ばかりを取り上げていたが、よく読めば百田氏が最も批判しているのは、新聞ではなくテレビではないか。新聞やテレビはそこに全く触れず、彼が「新聞をつぶせ」と言ったことばかりをクローズアップしていたが、フェアじゃない。
百田氏は、
新聞の影響はすごくない。それよりテレビ。地上波の既得権を自由競争にして欲しい。
と語っている。
冒頭でも書いた通り、わたしは自民党の人選ミス、油断、百田氏の下品な発言は否定しない。そして、発言要旨を読んでみると自民党議員の発言にも明らかな問題がある。特に、大西英男氏の発言は全く擁護できない。この人は政治家としての基本的な素養がないと思う。自民党議員には本当に気を引き締めて欲しい。
しかし最も嫌なのは、都合のいい所だけをつまむマスコミの「偏向報道の自由」だ。
わたしには、マスコミや野党が一部を切り取って大きな顔をしているのが納得できない。
マスコミはなぜ百田氏が最も批判した「電波利権」に触れなかったのか
大手マスコミが報じなかった「百田発言」 地上波テレビ局の「電波利権」批判
マスコミからバッシングを受けた百田尚樹氏の発言の中で、大手マスコミが事実上「無視」した部分がある。それは総務省から免許を受けて放送事業を行っている、地上波テレビの「既得権」への批判だ。
評論家らは「これこそ組織的な言論統制だ」と指摘している。(中略)
NHKや民放各局はもちろん報じず、新聞各紙も無視するか、大きくは取り上げなかった。「新聞よりもテレビ」と百田氏の批判の矛先が明確であるにもかかわらずだ。
こうした点を経済評論家の池田信夫氏は6月28日のブログで「これこそ組織的な言論統制」と批判した。
そもそもテレビ局の放送事業は、総務省から周波数を割り当てられ、免許を受けて行われている。これを「UHF帯だけで30チャンネル以上とれる周波数で実質的に7局の寡占体制が続いている」と指摘。百田氏の発言を黙殺したテレビ局について、
「しょせんテレビ局なんて、役所の守ってくれる利権にぶら下がって商売している規制産業だ。こういうときだけ『言論の自由』を振り回して、正義の味方を気取るのはやめてほしい」
と切って捨てた。
出典:J-CASTニュース 7月1日(水)18時19分
テレビ局が支払う電波利用料は事業収入の1%以下
主なテレビ局の電波利用料
電波利用料 | 電波の「仕入れ値」 | |
NHK | 18億7800万円(事業収入は6517億円) | 0.28% |
フジテレビ | 3億9920万円(同3468億円) | 0.11% |
日本テレビ | 4億3260万円(同2277億円) | 0.18% |
出典:総務省(13年度)
情報経済研究所 鬼木甫所長(元大阪大名誉教授)
電波利用料の負担額について「市場価値の何十分の一で、不当に安過ぎる」と指摘。事業者が電波の利用権を競り落とす「電波オークション」を導入すべきだと提案している。
「電波オークションを総務省が実施すれば、今の何倍もの利用料が収められるはず。先進国で導入されていないのは日本ぐらいだ。新規参入ができず、テレビ局は大きな利権に囲まれている、と言える」
百田氏が指摘した「既得権」について、テレビはもちろん新聞でも大きく報じられないのは、両者間に資本関係がある「クロスオーナーシップ」があるためだ、とも指摘。
「朝日新聞とテレビ朝日、読売新聞と日本テレビなど、各紙と各局の間には資本関係がある。お互いの不都合なことを報じない『同じ穴のムジナ』だ」
クロスオーナーシップも多くの国で禁止されているが、問題視されていないのは日本ぐらいだ。
参考文献:J-CASTニュース 7月1日(水)18時19分