日中韓外相会談と会談後の外務省ブリーフ
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21日の日中韓外相会談では、相変わらず中韓が歴史認識問題に固執したようだ。
戦後70年談話を「歴史カード」として利用する態度は予想通りだし、日中・日韓の個別外相会談でも両国は歴史問題を持ち出した。
3カ国の首脳会談の早期開催への努力では一致したが、溝の深さに変わりはない。それについて中韓との関係を早期に修復したいと願う日本国民は多くないだろうし情報に触れるのも不快だが、中韓の言い分は勝手にエスカレートしていくからチェックはしておかないと…。
最後に引用した「外務省が会談後に行った主な説明」で触れられているが、「歴史を直視し」という文言が共同発表文書に入ったことについて、中国の王毅外相が「大事な言葉だ」と宣伝に利用した。それに対し外務省は「過去に2度使った言葉なんですけどー?」と説明している。
日中韓外相会議
3月21日(土曜日)午後5時10分から午後6時30分まで,韓国・ソウルにおいて日中韓外相会議が開催されたところ,概要次のとおり(出席者:岸田外務大臣,尹炳世(ユン・ビョンセ)韓国外交部長官(議長),王毅(おう・き)中国外交部長他)。なお,会議終了後,共同報道発表が発出された。
1.日中韓協力
3外相は,各分野で3か国協力が着実に進展していることを認識した上で,日中韓協力事務局(TCS)による3か国協力促進のための努力を評価しつつ,次の分野における具体的な協力案件の現状や将来の方向性について議論を行った。
(1)3外相は,防災,環境,青少年交流等について一層の協力を進めていく方向で認識を共有した。岸田大臣からは,防災分野について,先般,仙台で開催された第3回国連防災世界会議について紹介しつつ,中国及び韓国からの参加を評価したほか,日中韓防災関係閣僚会合の開催について述べた。また,岸田大臣は,日中韓FTA,RCEP交渉を進めるべきとの点を指摘した。
(2)3外相は,新たに中東政策協議を立ち上げること,テロ対策協議やアフリカ政策協議を近々再開すること等で一致した。また,岸田大臣は,原子力安全に関する分野について3か国協力が継続的に実施されている中,中国及び韓国との対話を継続しつつ,両国との一層の協力の深化に努めたい旨述べた。
2.地域・国際情勢
(1)北東アジア情勢
3か国は,北朝鮮による核開発を容認することはできない旨再確認したほか,朝鮮半島の非核化の実質的な進展のため,意義のある対話再開に向けて共に努力することで一致した。岸田大臣からは,安倍政権の最重要課題である拉致問題について中国及び韓国に協力を求めた。(2)東アジア協力
岸田大臣は,本年設立10周年となるEASの強化の重要性やASEAN共同体構築に向けた支援の重要性を指摘した。さらに,3か国は,昨年の北京APECにおける成果と中国の尽力を評価した上で,本年のフィリピンAPECでも,APECが更なる具体的成果を出していけるよう,協力することで一致した。(3)テロ対策・中東(ISIL)
岸田大臣は,ISILが国際社会にとって重大な脅威となっている中で,各国の強みを生かした貢献で連携した多面的及び長期的取組の重要性を指摘した。また,岸田大臣から,日本として人道支援の拡充,テロ対処能力向上の支援や過激主義を生み出さない社会の構築支援に包括的に取り組んでいく方針である等説明した。(4)核軍縮
岸田大臣は,本年が被爆70年に当たることを踏まえ,本年の核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議を成功させ,「核兵器のない世界」に向けた道筋を示すことの重要性を指摘した。3.日中韓サミット
3か国は最も早期の都合のよい時期に日中韓サミットを開催すべく引き続き努力していくことで一致した。岸田大臣から,これまで日中韓サミットの早期開催を重視してきた日本の立場を述べた上で,日中韓外相会議の開催で日中韓協力のモメンタムが高まっているうちに,中国及び韓国と協力して,早期のサミット開催に向けた努力を一層進めていきたい旨発言した。
4.その他
会議の中で歴史問題についても発言があり,当方から,歴史認識については二国間会談を含む様々な機会に述べてきているとおりである等述べた。
出典:外務省
日中外相会談
日中韓外相会議への出席のために韓国・ソウルを訪問中の岸田外務大臣は、3月21日(土曜日)15時15分頃から約1時間、王毅(おう・き)中国外交部長との間で日中外相会談を行ったところ、概要は以下のとおり(日本側同席者:杉山外務審議官、伊原アジア大洋州局長他、中国側:邱国洪駐韓大使、孔鉉佑アジア司長他)
1 日中関係総論
冒頭、岸田大臣から、昨年11月の北京APEC以降、日中関係が改善の方向に向かっていることを評価しており、今回の会談を契機に、様々な分野・レベルで前向きな動きをさらに積み重ね、関係改善の流れを定着させていきたい、日中双方が未来志向の協力関係を発展させることが重要である旨述べた。
これに対し、王毅部長は、岸田大臣が述べたとおり、昨年11月に日中両国が改善の第一歩を踏み出したことに続き、両国間の往来が徐々に回復していることに留意している、これから真の意味で関係を全面的に正常に発展できるかは、双方が昨年11月の四項目を順守できるかにかかっている旨述べた。
2 当面の日中関係の進め方
岸田大臣から、最近訪日した李立国・中国民政部長とのやり取りや19日に開催した日中安保対話等の具体的な例を挙げながら、北京APEC以降の日中関係改善の流れが着実なものになりつつある、しかし、一方で東シナ海では緊張が継続しており、日中関係に慎重な舵取りが必要な状況は変わらないと述べた上で、こうした状況だからこそ、双方の外交当局の役割が重要であり、自分も関係改善に積極的に貢献するので、王毅部長にも同じ役割を期待したい、外相間で緊密に意思疎通すべき旨述べた。
さらに、岸田大臣から、今回の外相会談を経て、(1)政府間のみならず、政治レベル、地方交流、文化交流、経済面での交流等を積極的に追求していきたい、(2)本年秋に日中間の文化交流を集中的に実施したい、(3)事務レベルの協議を継続、強化していきたい旨述べた。これに対し、王毅部長からは、日中は隣国であり、また、世界第2、第3の経済規模を有しているので、両国が緊密な関係を保ちながら付き合っていくのは当然であり、日中間の交流・協力を増やさなければならない旨、また、日中間の4つの基本文書、そして、昨年11月の四項目をしっかり守ることが大切である旨述べた。
その上で、王毅部長より、今年は戦後70年ということで、日中双方にとって重要かつ敏感な年であり、今年をどのように過ごすかについて外相同士で相談していきたい、戦後70年の機会に世界の人々が歴史について注目することは必然であり、日本がどのような態度で歴史に向き合うかに注目が集まっている旨指摘した。これに対し、岸田大臣より、安倍内閣は歴代内閣の歴史認識を全体として引き継いでおり、これからもそうしていく、そのことはこれまでにも何度も表明しているといった我が国の立場について述べた。
3 海洋を巡る課題
岸田大臣から、日中双方が関係改善の機運を高めようとしている中で、東シナ海ではそれに反する動きが依然として見られるとして、中国側の一連の動きに対する懸念を表明した。同時に、海空連絡メカニズムの運用開始や日中SAR協定の署名を早期に実現したい旨述べた。
これに対し、王部長からは、中国側の立場が表明された。
4 その他
このほか、本会談後に行われる日中韓外相会議についても意見交換が行われた。
出典:外務省
日韓外相会談
21日(午前11時35分から約90分間),岸田外務大臣は,尹炳世(ユン・ビョンセ)韓国外交部長官との間で日韓外相会談を行ったところ,概要以下のとおり(同席者:日本側から,別所駐韓大使,杉山外務審議官ほか,韓国側から,李京秀(イ・ギョンス)外交部次官補ほか)。冒頭,岸田大臣の出身地である広島のしゃもじに日本語及び韓国語で日韓国交正常化50周年のロゴマークを描いたものと50周年を記念し発行予定の記念切手を岸田大臣から贈呈した。
1 今回の外相会談は,岸田大臣の就任後,韓国で開催された初めての会談。日韓関係の前進に向け,前向きな意見交換が行われた。具体的には,両外相は,協力関係強化のため,引き続き様々なレベルで意思疎通を積み重ねていくことを確認し,両外相間の意思疎通の緊密化で一致した。岸田大臣は,尹炳世長官の訪日を改めて招請し,今後適切な時期に調整していくこととした。
2 (1)冒頭,ユン長官から,岸田大臣の訪韓を歓迎するとした上で,チュニジアでの銃撃テロ事件で日本人の犠牲者が出たことに関し哀悼の意が示された。また,同長官から,本年の韓日国交正常化50周年を新しい両国関係の元年としたいとの発言があった。
2 (2)岸田大臣から,チュニジアでの銃撃テロ事件をめぐり,ユン長官からお見舞いの意が示されるとともに,その旨のメッセージの伝達があったことに対し感謝の意を表明した上で,日韓中外相会議をめぐるユン長官のリーダーシップに敬意を示した。また,日韓両国間には困難な問題は存在するが,日韓関係の強化は,両国の利益でありアジア太平洋地域の平和と安定に不可欠である旨述べた。
3 両外相は,本年の日韓国交正常化50周年が意義深いものとなるよう協力していくことで一致した。その一環として,両国政府が,50周年を祝う行事,日韓の学会が行う共同研究シンポジウム,日韓交流おまつりへの支援を通じて,積極的に協力していくこととした。
4 両外相は,若手外交官の相互派遣を近く行うことや,安保,経済,人的交流の分野で一層協力していくこととした。安全保障の分野では,日韓安保対話(外務・防衛の局長級「2+2」)の早期開催に向け,調整していくこととした。
5 両外相は,「旧民間人徴用工」をめぐる裁判,産経新聞前ソウル支局長の起訴をめぐる問題,日本産水産物の輸入規制強化,慰安婦問題等の日韓間の懸案についても議論した。また,日中韓協力,NPT運用検討会議といった地域や国際社会の課題についても議論した。
6 北朝鮮問題をめぐり,両外相は,北朝鮮の「核保有国」化は断じて認められず,日韓,日韓米で緊密に連携していくことを確認した。また,拉致,離散家族等の人道上の問題についても協力することを確認し,ユン長官から,拉致問題に関する日本の努力に理解と支持が表明された。
出典:外務省
外務省が会談後に行った主な説明
「日中韓の首脳会談は、共同発表文書にもあるように3カ国がもっとも早期の都合のよい時期に開くことを引き続き努力することで一致した。岸田文雄外相からはこれまで日中韓首脳会談の早期開催を重視してきた日本の立場を述べた上で、日中韓外相会談の開催で日中韓協力のモメンタムが高まっているうちに中国と韓国と協力して早期の首脳会談開催に向けた努力を一層進めたいむね発言をした」
--岸田氏は早期開催で一致したことを歓迎すると言った。共同発表文書では「都合のよい」早期となっている。違いはあるか。
「都合の良い時期と言っても、もっとも早期の都合の良い時期という意味なので早期開催ということとそれほどかわるものではない」
--日本側はそういう解釈をしているということなのか。文言上は引き続き努力していくということになっている。開催については確定していない文言だ。どういうことか。
「ここは、早期開催に努力することで一致したということだ。もっとも早期で都合の良い時期にということだが、3カ国とも早期に開催することの重要性について一致したというふうに理解している」
--会談の中で、歴史問題について中国からどのような言及があったか。歴史に関して韓国側からも発言はあったのか。
「外相会談においては各国のさまざまな関心事項について議論して、その中で歴史についても言及がされた。ただ、個別のやりとりについてはコメントすることは差し控えたい」
--韓国からも言及はあったのか。
「どの国からどういう言及があったかということは差し控えたい」
--日中韓首脳会談の開催をめぐり、戦後70年談話についてのやりとりはあったか。
「会談の中で、もちろん歴史認識に関する議論はあったが、それ以上の詳細については答えることは差し控えたい」
--3カ国から都合の良い時期についての具体的な提案はあったか。
「首脳会談の開催時期については現在具体的な時期や場所の詳細については決まっておらず、これから調整を進めていくというのが現状だ。ただ、日本としては今まで日中韓首脳会談の早期開催を重視していた中、今回の外相会談で、もっとも早期の都合の良い時期に開催することで一致したということを歓迎しているということだ」
--3カ国の外相会談は協力案件について協議する場だ。日本側から歴史認識をこの場で話すことは不適切だとか反論はしなかったか。議長国の韓国がそういうことは言わなかったか。
「おっしゃるとおり、日中韓の枠組みというのはもともと日中韓協力を推進することを主たる課題として始められたものであるということで今にいたってもその性格は変わっていない。他方、日中韓においては地域情勢、あるいは国際情勢と言った各国の関心事項について議論をするという場でもある。これ以上の個別のことについてはこの場でお答えするのは差し控えたいと思うが、われわれとしてはそう考えている」
--中国からアジアインフラ投資銀行(AIIB)への言及はあったか。
「AIIBについては会談で言及があり、岸田氏から日本側の考え方を伝えた。これ以上は差し控えたい」
--韓国も言及したか。
「これも、どの国がどういう発言をしたかは差し控えたい」
--「歴史を直視し」という文言が共同発表文書に入っていて、中国の王毅外相が「大事な言葉だ」と強調していた。日本政府はどう受け止めているか。
「この共同報道発表について、どの国がどのような提案をしたかは差し控えたい。他方、『歴史を直視し未来に向かう』という言葉についてはこれまでも日本が中国との間であるいは日中韓の間で使ってきた言葉で、そこだけは指摘しておきたい」
--共同発表文書を出すのはいつ以来か。歴史を直視という言葉を使ったのは日中韓外相会談では、はじめてか。
「外相会談で共同発表文書が出されたのは最後は5年前。平成22年の時に出されている。『歴史を直視し、未来に向かう』という表現は日中韓の首脳会談においての文書で2回ほど使われている。平成22年、平成21年の時だ」
出典:産経ニュース